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知取気亭主人の四方山話
 

『日本語は難しい』

 

2021年2月24日

暫く前から病み付きになりつつある、北陸中日新聞の日曜版に掲載されている「漢字クイズ」、今週(21日)もまたチャレンジした。今年に入ってからやり始めたのだが、今では週に一度の楽しみになっていて、毎度のことながら錆びついた脳が大いに活性化させられている。ただ、今回は(今回も?)、活性化したものとは思っているのだが、浅学菲才を改めて実感させられる羽目にもなってしまった。

今回の数も、いつものように10問。そのうち、まるっきり読めなかったのが1問、解答を見て「あっ、そうそう」と膝を叩いたのが1問、「読むとすればこう読めるのだけれど、どういう意味?」と単語そのものを知らなかったのが1問と、都合3問も、読めなかったり自信が持てなかったりしたのがあった。ただ、3問程度で済んだから「正解率としてはこんなものかな」と思っているのだが、聞いたこともない単語があったことに、少々ショックを受けている。その単語とは、「放埒」である。

今回の「漢字クイズ」の問題は読み方を答えるものだったのだが、その第三問に、「放埒」が出されていた。「不埒」とか「埒が明かない」に使われる「埒」だから、「らち」と読むとして「ほうらち」と読むのかな、と当てずっぽで想像したみた。しかし、「放埒」の意味を知らない。先にチャレンジしていた奥さんは読めたという。でも、私には初めてお目にかかる単語なのだ。既に解答を見ていた奥さんが、「ほうらつ」と読むよ、と教えてくれた。「ほうらち」ではなく「ほうらつ」だとしても、意味が分からない。そこで、困った時の広辞苑ということで、重たい辞書を引っ張り出し、調べてみた。

我が家にある「新村出編 広辞苑(第四版)」(岩波書店、1991)では、次のように説明されている。

『放埒』(馬が埒(らち)を離れる意)
 @きままにふるまうこと
 A酒色にふけり、素行がおさまらないこと

更に、説明に出てくる「埒」を調べると、@馬場の周囲の柵、A物事のくぎり、と説明されている。どうやら、野に放たれた馬の様子を指しているらしい。しかし、この意味だとすれば、「放蕩息子」の様に使われる「放蕩(ほうとう)」と、どこが違うのだろう。「放蕩」も説明にある様な使い方をしている筈である。そこで再び、広辞苑で調べてみた。「放蕩」を引くと、次のように書かれている。

『放蕩』ほしいままにふるまうこと。特に酒色にふけって品行が修まらないこと。

思った通り、説明に使われている言葉はほんの少しだけ異なるが、言っていることは殆ど同じだ。となれば、覚えやすい。「放埒」≒「放蕩」とさえ覚えておけば良い訳で、「放埒」の使い方や意味は恐らく忘れることはないだろう(と信じたい)。だとしても、殆ど同じ意味のことを違う言い方で、しかも似たような言い回しで表現出来てしまうとは日本語は本当に奥深いものだと思いつつも、「どちらか一方だけで良いのに」と愚痴のひとつも言いたくなってしまう。ただ、奥深いという感心も本当で、小学校から数えれば10年以上も国語として日本語を学び、オギャーッと生まれてからこの方、もう70年以上も日本語を使って来たのに、未だに知らない単語がある。勉強不足を棚に上げて言わせてもらえば、日本語は本当に難しい。

そう言えば、最近似たような問題に遭遇して、戸惑っている熟語がある。新型コロナウイルス用のワクチン接種に関する用語だ。それこそ、ワクチン接種が現実味を帯び始めた先週あたりから、聞き慣れない専門用語が、頻繁に聞こえる様になってきた。恐らく、皆さんも私と同じような感想を持たれていると思う。「副反応」である。ワクチンを接種した時に出ることのある、発熱や痛み、或いはアナフィラキシーなど、体に現れる異常な反応を指している様なのだが、我々庶民が良く耳にする「副作用」とは、何がどう違うのだろう。

調べてみたが、困った時の「広辞苑(第四版)」に、「副反応」は載っていない。一般的ではないのだ。こうなれば、ネットに頼るしかない。ということで、辿り着いたのが、『〜日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」〜』のNo.04「予防接種の副反応と有害事象」(https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_04hukuhannou.yuugaijisyou.pdf)である。そこには、私なりの解釈ではあるが、「大まかには副作用と同じだけれど、ワクチン接種の場合には主作用を免疫"反応"と呼んでいるから、それに合わせて"副反応"を使っている」、と説明されている。なお、薬の主な作用を"主作用"、それとは異なる作用を"副作用"と呼んでいるとも書かれている。

いずれにしても、「副反応」はワクチン特有の専門用語らしい。「副作用」でも良さそうなのに、ダメなのだろうか。「副作用」に"拒否反応"を持つ人が多いから、との穿った見方も聞こえてくる。同じことを言うのであれば、分かり易い表現の方が良いと思うのだが…。

最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による新型コロナウイルスの感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間2月23日午後3時の時点で、世界全体の感染者数は1億1172万人を、亡くなった人は247万人を超えた(NHK NEWS WEB)。いよいよ日本でもワクチン接種が始まった。「副反応」が功を奏したのか、医療従事者で接種希望する人は、想定より10万人多いという。秋口までには全国民に行き渡るのだろうか。心配だ。

【文責:知取気亭主人】


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