2021年3月10日
2011年3月11日(金) 14時46分頃発生した、あの東北地方太平洋沖地震から、やがて10年が経とうとしている。この地震による直接的な災害、およびこれに伴う福島第一原子力発電所事故による災害を総称して、「東日本大震災」と呼ばれている。それほどの巨大地震だった。発生当時私は能登半島の先端に位置する輪島市のビルの中にいて、危険を感じるほどではなかったが、異常に長い横揺れを感じたのを覚えている。その場に居合わせた人が、『これ、尋常ではないよ!』と叫んだのをはっきりと記憶している。
叫んだ人の予想通り、想定を遥かに超える規模の地震が発生し、想像を絶する被害をもたらしていた。帰宅して見たニュース映像に、自然の圧倒的な破壊力と人間の非力さを嫌と言うほど思い知らされ、しばしの間言葉を失ったのを昨日のことのように覚えている。思考停止状態にも陥っていた。多くの日本人がそうだったのだと思う。また、建物や船など、あらゆる構築物を飲み込んでいく津波の映像を見て、世界の人々もやはり言葉を失ったのではないだろうか。それほど壊滅的な被害だった。
あれから10年、発災の日の3.11が近づくにつれ、テレビや新聞では特集番組が増え始めている。しかし増え始めたとは言え、あれほどの未曽有の大災害だったのに、世界経済を翻弄し続けている新型コロナウイルス・パンデミック(以下、コロナ禍)の陰に隠れがちの様にも見える。被災地や被災者を思う気持ちが失せた訳ではないだろう。しかし、姿を見せない敵との終わりの見えない戦いは、精神的にも疲れ、より恐怖心を煽るのかもしれない。また、10年という長い歳月が、当事者でない人々の記憶を風化させてもいるのだろう。この風化に曝されている東日本大震災の被害を、無理やりの感は多少あることはお許しいただいて、比較できそうな項目に絞り、今直面しているロナ禍の被災状況と比較してみた。
令和2年3月1日現在、総務省消防庁による東日本大震災関連の情報と、厚生労働省のホームページに掲載されているコロナ禍の情報から、下に示す表を作成してみた。例えば、被災者数。大震災は、住家被害棟数(全壊〜一部損壊〜床下浸水)から割り出すしか方法が見当たらなかったが、平均して3人家族と仮定すれば凡そ350万人が、4人家族とすれば約470万人が被災した勘定になる。一方、新型コロナへの感染者数は、約44万人である。極めて荒っぽいやり方だから、福島第二原子力発電所の事故によって避難を余儀なくされた人々もカウントされているとして、1年余り続くコロナ禍の感染者数の凡そ10倍もの人が、一瞬にして被災したことになる。物凄い数である。
死者・行方不明者も災害としては未曽有の人数で、コロナ禍による死者の約3倍もいる。表には載せていないが、※1の資料によれば、負傷者も令和2年3月1日現在で6,233人もいる。これだけ圧倒的な被害が出たのに、時間による風化作用は容赦がないらしい。単純比較に無理があることは重々承知しているが、「十年一昔」の格言は今も生きているらしい。
さらに言えば、今なお行方不明者が2,559人(令和2年3月10日現在)もいる現実がある。また、先にも少し触れたが、原発事故によって避難している人の数は、10日朝のNHKテレビニュースによれば、未だに3,500人を超えるという。風化は否応なく進んでしまうが、被災地の復興はまだ途上の感が強い。それを裏付けるかのように、10日朝のNHKラジオ「三宅民雄のマイ朝」の番組で、元河北新報社論説委員のジャーナリスト寺島英弥氏が番組の中で言っていた、(不正確かもしれないが)『10年は経ったが、被災地の内と外では違う時間が過ぎたのかもしれない。外の人にとっては10年前かもしれないが、内の人にとっては昨日起きた事だ』の言葉が胸に刺さる。
寺島氏は、『寄り添う』という言葉の意味にも言及していた。ネットで調べると、正にそのテーマで氏が書かれた本が出版されていた。『被災地のジャーナリズム ―東日本大震災10年「寄り添う」の意味を求めて』(寺島英弥著、明石書店、2021)である。氏の言う外の人間にとっては耳の痛い内容かもしれないが、読んでみようと思う。現地ジャーナリストの声、皆さんも読んでみませんか。
ところで、3月11日は、WHOが「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」との認識を示した日でもある。3.11,日本人にとって決して忘れてはいけない日である。
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による新型コロナウイルスの感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間3月9日午前3時の時点で、世界全体の感染者数は1億1700万人に、亡くなった人は260万人に迫っている(NHK NEWS WEB)。パンデミック宣言から約1年、これほどまでに世界が翻弄されるとは、10年前に良く耳にした一言で言い表せば、想定外だ!
【文責:知取気亭主人】
春は必ずやってくる!
|
|