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知取気亭主人の四方山話
 

『ん?』

 

2021年3月31日

凡そ一年前、一番上の孫娘が4年生なったころから、時々せがまれて、風呂の中で諺のクイズを出し合っている。百人一首宜しく、上の句と下の句とに分ける様に、例えば『石の上にも…』と問題を出すと『三年』と答える、といった具合に楽しんでいる。難しい事をしている訳ではないが、多少は脳トレになっていると思う。ただ、比較的良く知られた諺も直ぐには思い浮かばず、自信を無くすことがしょっちゅうだ。それでも、さすがに私の方から問題を出すことが多い。その際、孫娘が初めて聞く諺についてはその意味を説明してやらなければいけないのだが、これが中々難題なのだ。

実は、説明しようとして、しっかりと意味を理解した上で使っている諺が思った以上に少ないことに気づいてしまったのだ。言い方を変えれば、諺の多くは“分かったつもり”になっていただけのことであった。したがって、当然のことながら、説明はしてみるものの、合っているのかどうか不安が残ることが多い。そんな時には、自信が無いことなどおくびにも出さず、寝る前にこっそりと手元にある辞典で調べている。小学生相手で難しい諺を出題していないこともあり(実際は知らないから出せないのだが)、これまでのところ、何とか訂正や言い訳をしなくて済んでいる。

しかし、“この人”の場合には、私の様にこっそりと調べたかどうかは定かでないが、今頃ドッと冷や汗をかいているに違いない。孫娘相手の私と違い立場が立場だけに、言い訳するにも、訂正するにも勇気がいるし、日本国民に向けての全国ニュースになってしまっていたからだ。恐らくだが、「吐いた唾は飲めぬ」を実感しているに違いない。もうお分かりのこととは思うが、“この人”とは自由民主党の二階俊博幹事長である。

先週来、この二階氏の発言がメディアを賑わしている。その凡の内容は皆さんご存知のことだとは思うが、少しだけおさらいをしておく。二階氏は、23日、公職選挙法違反の罪に問われた河井克行被告が一部容疑を認め衆院議員辞職表明をしたことを受け、「党としても、“他山の石”として、しっかり対応していかなければいけない」と発言し、この“他山の石”発言が物議を醸しているのだ。私も発言した時の模様をテレビニュースで見ていたのだが、“他山の石”と聞いて違和感を覚え、「ん?」と首をひねった者の一人だ。何といっても、河井被告の事件は、二階氏と同じ自由民主党に在籍していた時のものだ。自分の山の石のことなのに、ひとごとのように「他山の…」と表現するとは、党を代表する立場なのにまるで他人ごとだな、と呆れてしまった。

その後、野党からも「日本語を理解していないのか、意味不明の発言だ」などの非難の声が上がっている、と報じられている。尤もだ、と思う。と言うのも、何を言いたくて使ったのか、良く分からないからだ。身内の不祥事に対し、「この不祥事を深く反省し、決して繰り返さない」と反省するのであれば、私だったら、「『人のふり見て我がふり直せ』とあるように、この事件を他人事とせず、我が党の国会議員全員が襟を正すよう指導します」とか、少々無理やりの感はあるが、「河井氏を『反面教師』として、同じ過ちは繰り返さない、と肝に銘じます」などと言う。それも、諺や四文字熟語を無理やり使うとすれば、である。

『三省堂 故事ことわざ・慣用句辞典』(三省堂編集所、2000)で「他山の石」を引くと、『他の事がらを参考にして自分に役立てること。自分より劣っている人の言行でも、自分の才能や人格を磨く反省の材料にすることができる、という意。』と説明されている(一部省略)。素直に読めば、身内が矢面に立っているあの状況で使うべき言葉ではないことは、明白だ。恐らく言い間違えたのだろう。だとすると、あの場合に使える適当な戒めの言葉は何だったのだろう。

「他山の石」と言い方が少し似ている「対岸の火事」はどうだろう。この諺では、衆議院の解散総選挙が取り沙汰されている最中なのに、河井氏の不祥事は自由民主党には関係ないこととして危機感を抱かない表現となってしまう。それではさすがにまずい。それと、「対岸の火事」自体が良く知られた諺だから、意味は百も承知の筈だ。そう考えると、「対岸の…」との言い間違いの可能性は低い。それでは、「反面教師」に近い「人を以って鏡となす」はどうだろう。二階氏の発言、「党としても、“○○○○”として、しっかり対応していかなければいけない」の“○○○○”に当てはめて、脈略は通じるだろうか。声に出して言ってみると、通じるような気もするが、シックリは来ない。無理がある。

こうしてあれやこれやを考えると、言い間違いではなく、本当に他山の事だと思っていたのではないかと思えてしまう。河井克行被告が奥さんともども離党していたことが記憶にあり、既に我が党(自由民主党)の国会議員ではない、と考えていたのではないだろうか。そう考えた上での「他山の石」発言なら腑に落ちる。でも、落ちるには落ちるけど…。

最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による新型コロナウイルスの感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間3月31日午前3時の時点で、世界全体の感染者数は1億2788万人を超え、亡くなった人は280万人に迫っている(NHK NEWS WEB)。首都圏の緊急事態宣言が22日に解除されたばかりなのに、もう第四波襲来を懸念する声が聞こえ始めている。花見の季節と我慢の限界に達したのが相まったのか、どこもかしこも人出が増えているらしい。今しばらくの辛抱なのだが…。

【文責:知取気亭主人】


ツバキ
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