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知取気亭主人の四方山話
 

『実り』

 

2021年4月21日

先日、知り合いから思いもよらぬ豪華な花束をもらい、家の中が一気に明るくなった。今は花瓶に移し替え、テーブルの上に飾ってあるのだが、とてもゴージャスで、色とりどりの花々が辺り一面をぱあっと華やかにしてくれている。また、ほんのりと良い香りも漂わせていて、今でも、家族全員が何となく幸せな気分に浸っている。ただ不思議なことに、大輪の白いユリが今を盛りに花開いているのに、ユリのあの独特な芳醇な匂いに比べると、漂ってくるのは至って鼻に優しい。家内とそんな話をしながら良く見ると、雄しべの先端にある筈の見慣れた茶色い花粉が無い事に気が付いた。ネットで調べると、花粉と匂いとは関係は無いらしいのだが、何故花粉が無いのか、今度はそちらの方が気になり出した。つぼみ状態で貰い、飾っている間に花開いたから、花束を作ってくれた時に摘み取ったのではないのは確かだ。恐らく品種改良された花だと思われる。

そこで早速ネット検索してみた。すると、ありました有りました。調べて見ると、無花粉のユリがたくさん売られている。ユリを飾ると花粉が服に付いたりして往生することが良く知られていて、そう言ったことをなくすために、無花粉の品種改良品種が出回るようになったという。お蔭で、以前は家内も良くやっていた“花粉を摘み取る作業”をしなくて済むようになった、という訳である。ただ、人間にとっては都合が良くなった訳だが、折角生を受けたユリにとっては、“実り”を知らずに散っていくことになる。ユリの気持ちを代弁すれば、「寂しい限り」ということになろうか。勿論、球根は残る訳ではあるが…。

さて、無花粉のユリは実りを知らずに散ることになる訳だが、今の日本政府の新型コロナ対策も、一向に“実り”が見えないでいる。このまま効果的な対策を講じなければ、目立った実りが無いままずるずると長引いてしまうのではないか、と心配で仕方がない。政府も苦心しながら、いろいろな手は打っているのだとは思う。しかし、残念ながら、最初の緊急事態宣言からもう一年が経ったというのに、勝利宣言とは程遠い状況だ。

これまでのところ、緊急事態宣言を出して自粛すると感染者数はそれなりに減り、気を緩め宣言を解除すると再び増え始める、その繰り返しになっていて、出口の見えない無限ループに陥っている様に見える。その結果、感染の鎮静化は程遠い状況で、4月中旬の今、大阪府を始めとする多くの府県で過去最多の感染者数が報告される始末だ。感染症の専門家は、人出が予想される大型連休を前に、『第四波が襲来中だ』と指摘し警鐘を鳴らしている。

“実り”が見えないのは、避けるように要請されているにも拘らず三密を守らないで感染してしまう人が後を絶たないなど、市民にも責任の一端はあるのかもしれない。しかし、総じて打つ手が中途半端だ。強硬手段が取りにくいという法整備の遅れもあるのだろう。また、『経済も同時に回さなければならない』という強迫観念にも似た思いがあって、『上手くすれば二兎とも捕まえられる』との判断が働いたのだろう。しかし、結局『二兎を追うものは一兎も得ず』の諺通り、どちらも目立った成果を上げられずにいる。『急がば回れ』の諺を信じ、経済を回すのはコロナ禍が沈静化してから、とすべきだったのだと思う。確実な“実り”を得るには確実な手順を踏むべきで、これはある意味物事の鉄則だ。

とは言うものの、新型コロナ関連で“実り”が全く期待できない訳ではない。他の先進国に比べると接種率はまだ圧倒的に低いものの、その効果が期待されるワクチン接種が、いよいよ本格的に始まったからだ。19日朝のNHKラジオによれば、ワクチン接種で先行するイギリスでは、接種の効果が既に現れていて、最近一日の感染者数は2千人台と日本を下回る状況だという。NHKの特設サイト「新型コロナウイルス」に掲載されているイギリスに関するデータによれば(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)、一日の感染者数が最も多く報告された先の年末年始には4万人を超えていたのに、である。そんなニュースを聞けば、時期的には今年の秋口位になってしまうかもしれないが、沈静化したという“確かな実り”をどうしても期待してしまう。

ただ、イギリス以外で接種が進む国の中には、ワクチン接種後に感染した、という情報も報じられていて、予断は許さない。しかも、いつも最後に記載しているジョンズ・ホプキンス大学による新型コロナウイルスの感染状況の集計結果からは、出口の明かりはぼんやりとしか見えないようにも見える。日本時間4月20日午後5時の時点で、世界全体の感染者数は1億4210万人に、亡くなった人は303万人に迫っている(NHK NEWS WEB)のだが、亡くなる人の増加傾向が、衰えるどころか逆に顕著になっているのだ。

四方山話で新型コロナ感染を始めて取り上げたのは、2020年1月29日の862話である。約8ヶ月後の9月30日には、世界で亡くなった人が100万人を超えたと書いている(897話)。その後亡くなる人は急激に増え、4ヶ月も経たない2021年1月20日時点で、もう205万人に迫っていると記している(913話)。期待のワクチン接種が始まったのが、丁度200万人に迫っていた昨年の暮れからだが、世界の全ての人にワクチンが行き渡ってない為なのか、300万人の人が犠牲になるまでにはさらに短くなって、僅か3ヶ月で達してしまった事になる。しかも、ワクチン接種しても感染のリスクはゼロではない。だとすると、球根ならぬ“禍根”を残さないためにはどうすべきか、専門家の意見に素直に耳を傾け、経済を回す前に人の命を守るという手順を取る必要があるのではないだろうか。

【文責:知取気亭主人】


無花粉のユリ
無花粉のユリ

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