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知取気亭主人の四方山話
 

『必要なのは“ど根性”?』

 

2021年5月19日

4月から会社のグリーンキーパー(以下、キーパー)を任じている。とは言うものの、自慢できるほど植物に詳しい訳でもなく、ましてや庭師の技能検定資格を持っている訳でもない。ただ、雑草が伸び放題になっていたり、庭木が勝手気ままに枝を伸ばし気に入らない樹形になっていたりすると、何とかしなければいけないと思えてしまう。病害虫の発生も気になる。一言で言えば、私の性とでもいうものだろう。手入れをし、想定通り奇麗になったり、気に入った体裁になったりすると、すこぶる気分が良い。

ところが、始めて僅か1ヶ月余りしか経っていないのに、植物相手の仕事というものは中々シンドイものだということに気付いてしまった。片手間に俄か庭師を気取っていた以前には気付かなかったのだが、キーパーとして目標を定め、いざそれをクリアしようとすると、厳しい自然の中で生き抜いて来た植物の手強さに改めて気付かされる。植物も、子孫を何とか残そうと必死なのだ。しかし、それを駆除しようとする素人キーパーにとっては、その手強さは生半可なものではない。そして実際、色々な植物に、ほとほと手を焼いている。

植物と言えば、「こんな所でよくもまあ成長したものだ!」と驚くような、コンクリートやアスファルトなどのほんの僅かな隙間から芽を出し、やがて花などを咲かせ、「ド根性○○」として全国的に報じられることが良くある。そんな報道に接すると、「へー!」と関心はするのだが、さほど驚きはしない。と言うのも、花として愛でる対象ではなく、或いは野菜として食するのでもない、(植物学的にはそんな分類は無いが)雑草と呼ばれる植物にとっては、極ありふれた光景だからだ。

厄介者扱いされるこの雑草、花の美しさや美味しさに関しては少々見劣りするかもしれないのだが、「ド根性」だけは負けてはいない。可成りしたたかだ。会社でも、駐車場のアスファルトと水路や境界コンクリートとのほんの僅かな隙間に、見事に生き延びている。風で運ばれたり、タイヤに泥と共にくっ付いて来たり、鳥の糞で運ばれたりと、運ばれ方は千差万別なのだろうが、結構多くの種類の雑草が生えている。放っておけば、直ぐに伸び放題だ。そこで、今のうちに抜いてしまおうと、素人キーパーのお出ましとなった訳だが、どの雑草も、根の張り方が半端なく強い。また、したたかな戦略も持っている。

会社専属のキーパーとして取り敢えずやり始めたのは、社屋と駐車場の周りである。そこでは、柔らかくつる性で地を這う様な草が生えていたり、場所柄生えているのがL字型の所であったりして、鎌が思うように使えない。加えて、鎌で切るよりも引き抜いた方が根絶やしに出来るとの思いから、地道に手で引き抜いている。ところが、これが結構厄介なのだ。彼らのしたたかさに、一苦労させられている。

地を這う様な草は、手で抜き取るには総じて扱い易い。ただ、根は完全に抜けるのではなく、地上付近でたやすく切れてしまう。また、軍手で扱うと直ぐにくっ付いてくる種類もある。これらは、恐らく動物の体にもくっ付き易くなっていて、簡単にちぎれるのも、動物に運んでもらうための戦略の一つなのだろう。お蔭で、肝心要の“根っこ”はしっかりと残ることになる。そしてこの残った“根っこ”が、おいそれと引き抜けないのだ。短くて指で掴むことはできないし、私愛用の「草取りかぎ」(以下、かぎ)を使っても、生えている隙間が狭いと“かぎ”が入らず、断念せざるを得ない。悔しいが、まるで私のやり方を見越しているかの様だ。

他方、背丈が伸びる雑草は、風雨に負けないようにとの戦略なのだろう、太い根を地中深くに延ばすものや、さほど深くはないがびっしりと根を張るものやら、「簡単には抜けないぞ!」と主張しているものが多い。その主張通り、両手で掴み渾身の力で引っ張っても、ちょっとやそっとでは抜けてこない。たやすく切れることもない。“かぎ”を使って根元部分を切り裂いて少しずつ抜こうとしても、先ほどと同じ理由で使用できない所が多く、結局は、半分以上根っこを残したまま放置することになってしまった。

要するに、いくら根絶やしにしようとしても、根っこが残ったままになってしまう雑草が多いのだ。そうすると、梅雨明け頃には再び見苦しい姿になってしまう訳で、もっと言えば、毎年同じ戦いをせざるを得ない状況が続くことになる。かと言って、除草剤は使いたくない。だとすると、「人間と雑草との戦い」と言えば大げさに聞こえるが、雑草のしたたかな戦略には、泥臭い方法で対応するしかなさそうである。言い換えれば、彼らの“ど根性”にはやり続けるという“ど根性”で対抗せざるを得ない、ということである。

加えて、ひざ痛と腰痛にも耐える“ど根性”も、合わせて必要だ。ここまでくると何やら修行僧の様になってきたが、今のコロナ禍にも通じる様にも思える。すべからく、成功を手にするのに必要なのはやり抜く“ど根性”、と言えるのかもしれない。

最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間5月18日20時の時点で、世界全体の感染者数は1億6361万人に、亡くなった人は339万人に迫っている(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス)。欧米を中心に、ワクチン接種が進む国々では感染拡大にブレーキが掛かって来た、と報じれれている。その一方で、日本での接種状況は、皆さん知っての通りお寒い限りである。こればっかりは、“ど根性論”でどうにかなるものではないのかもしれない。ただ、今は非常時だ。行政には、臨機応変に対応する“ど根性”が何より求められているのだが…。

【文責:知取気亭主人】


公園は手入れがされているから気持ち良い
公園は手入れがされているから気持ち良い

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