2021年7月21日
北陸地方に梅雨明け宣言(14日)が出された最初の土日(17,18日)、冬物の中で最後まで残っていた大物の片付けをやった。布団、毛布、そしてホットカーペットである。こうした大物は乾燥している時季に片づけたい、ということで毎年この頃にやっている。そして、粗大ごみ化しつつある我々男性陣の、数少ない活躍の場でもある。この日は私と長男が、くだんの大物に加え、まだ慣れぬ暑さとも格闘して、大汗を掻いていた。
そんな時、クリーニング屋から帰ってきた私に、掃除機を使っていた長男が、思わぬことを言ってきた。『掃除機がダメだ!』と言うのだ。良く聞くと、スイッチは入るのだが、直ぐに止まってしまうと言う。どれどれと、目の前で動かしてもらったのだが、確かに5分もしないうちに切れる。思い返してみると買ってから10年ほどたつ代物だから、故障しても不思議はない。もう直らないものと観念し、買い替えを決めた。
早速、新聞に入っていた家電量販店の折り込みチラシで、手ごろな掃除機がないか探したのだが、生憎お目当ての商品は載っていない。そこで、翌日に店に行き、適当な商品を買ってくることにした。そのチラシには“下取りもあり”と書かれていて、故障していても下取りしてくれるのではないか、との淡い期待も膨らむ。これなら、今が買い時かもしれない。
翌日の日曜日、家内が、『下取りしてもらうにはゴミぐらいは奇麗にしておいた方が良いでしょう?』と店に行く寸前の私を呼び止め、掃除機の掃除をし始めた。するとどうだ、セットされている筈の紙パックが外れていて、吸引したゴミが掃除機の中に散乱しているではないか。『これが原因じゃない?』と家内。『恐らくそうだな!』と相槌を打ちながら、とにかく一旦奇麗にすることにした。そして、直ぐに根本原因らしいものを見つけた。排気孔にセットされていたフィルターが、完全に目詰まりを起こしていたのだ。
大きなゴミや綿埃は使い古しの歯ブラシとピンセットで丁寧に取り除き、細かな埃は手で何度もフィルターをはたき奇麗にした。奇麗になったところで、新しい紙パックをセットして、いざ試運転である。思った通り、以前の吸引力が蘇り、途中でスイッチが切れることも無くなった。無事現役復帰である。
しかし危ないところだった。我が家の他の家電も大体10年程経つと故障し始め、殆ど買い替えている。そんな先入観があって、「買い替えなければダメだろう」と思い込んでいたのだ。しかし、原因は、分かってしまえば至って単純だった。もっと真剣に吟味していれば、恐らくイの一番に考え付いた原因だっただろう。そういう意味では、『買う』と決め込む前に、もう一度、原因を十分吟味しておく必要があったのだ。反省しきりである。
ところで、今回の一件は、我が家だけの出来事で、しかも、仮に買い替えたとしても影響を受ける家族さえ、ほぼ皆無である。ところが、コロナ禍で噴出している諸問題は、そうはいかない。日本は勿論、世界までをも巻き込む事態に成りかねず、影響は甚大だ。したがって、十分な吟味を尽くすことが求められる。しかし、巷に聞こえてくる諸問題の判断や決定は、『ちょっと待て、もう一度吟味してみないか』と言いたくなる事案ばかりである。
例えば、東京五輪の無観客開催についてだ。訪日しているIOCのバッハ会長が、菅義偉首相に対し「新型コロナウイルスの感染状況が改善すれば、有観客も検討してほしい」と要請したと報じられていて、今更何を言っているのかと耳を疑ってしまった。首都圏の会場の無観客は、日本政府、東京都、大会組織委員会、IOC、IPCの5者協議で決定した筈である。バッハ会長の要請が事実だとするならば、吟味が中途半端であったことの証左に他ならない。首相側は明確な回答はしなかった、と報じられているのだが…。
同じく東京五輪関連で言えば、開会式直前のこの時期に、開会式で楽曲制作を担当するミュージシャン小山田圭吾氏が過去のいじめについて告白していたことが明るみに出て、辞任させる、させないと、ワイドショーで格好の話題となっている。「辞任させる考えはない」とする組織委員会の判断に対し、批判の声は大きい。結果的に19日の夕方になって、辞任を申し出たとの報道が流れたところからすると、両者とも一件落着を図る方向に動いたものとみられる。しかし、選任を含め、吟味が不十分だったことは否めない。
もうひとつ、『ちょっと待て、もう一度吟味してみないか』と強く言いたくなる事案が、世間を騒がした。夏の高校野球鳥取大会で、米子松蔭高校が、学校関係者1人の新型コロナ感染が確認されたことから出場を辞退した問題だ。野球部員や顧問ら46人は抗原検査を行い陰性だったというのだが、規則ということで参加への門は閉じられていたらしい。これが報じられると各方面から批判の声が上がり、鳥取県高野連は19日、一転して出場を認める決定をした。どういう状況の時にはどうすべきか、そんな基本の吟味を尽くした上での規則だったのだろうか?甚だ疑問である。
結局どの事案も、決定に責任を持つ肝の据わった人がいなかった、ということに尽きるのかもしれない。
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間7月20日17時の時点で、世界全体の感染者数は1億9092万人に、亡くなった人は410万に迫っている(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。沈静化するかに見えた世界の状況も、デルタ株が猛威を振るい出していて、予断を許さない。また、来日したオリンピック関係者から陽性者が次々と見つかっている。そんな中、21日のソフトボールを皮切りに、いよいよ競技が始まる。最早、無事閉幕を迎えられるよう、祈るばかりである。
(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)
【文責:知取気亭主人】
百日紅(夏だ!)
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