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知取気亭主人の四方山話
 

『全幅の信頼』

 

2021年9月8日

先月の24日(火)から始まった東京2020パラリンピック(第十六回大会)が、9月5日の日曜日をもって、13日間にわたる熱い戦いの幕を閉じた。開催そのものに懐疑的意見を持ていたが、いざ始まって見れば、連日たくさんの競技をテレビ観戦し、楽しませてもらった。これだけ長時間パラリンピックをテレビ観戦したのは初めてだ。地元開催ならでは、である。これまでのパラリンピックのテレビ放送といえば、精々がハイライトでとして放映される程度だったのだが、今回は放送時間がたっぷりとあり、各競技の面白さを余すところなく伝えてくれた。お蔭で、2週間足らずの期間はあっという間に過ぎた。そして、手に汗握る熱戦となった男子車椅子バスケットのアメリカとの決勝戦を最後に、見納めとなった。

それにしても、どの選手も素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。いつもなら食事中はテレビを観ない我が家だが、息子夫婦が揃って理学療法士として働いていて運動機能やリハビリの観点から学ぶことが多いだろうということや、孫たちへの障害者との共生教育に生かせればとの思いもあって、今回は観戦しながらの食卓となった。するとどうだろう、想像を遥かに超えるパフォーマンスに、孫も含め家中が興奮しっ放しだった。勿論、応援する日本のチームや選手も大活躍だった。

予定されていた女子100m(車いすT52)が、参加人数が既定の条件に達せず除外されたため、今大会の競技数は、最終的に22競技539種目で争われた。同じ競技でも障害の程度によって細かくクラス分けされているため凄い競技数となったが、そんな中、日本代表選手団は、金13個、銀15個、銅23個の合計51個ものメダルを獲得した。メダル争いを金メダルに絞れば、1位は中国の96個で、2位に倍以上の差をつける圧倒的な強さを見せた。続く2位はさすがの英国で41個、3位は米国の37個と続き、日本は11位であった。先立って行われたオリンピックに比べれば数も順位も劣るが、前回のリオデジャネイロ大会では金メダル0に終わっていることを考えれば、大健闘だ。

当然のことながら、この大健闘は、パラアスリートたちの想像を超える努力・精進の賜物である。ただ、そうした努力・精進の横には、必ず彼らを支えるコーチや仲間がいる。それは、パラアスリートばかりでなくオリンピックのアスリートたちにも言える。しかし、「コーチや仲間が競技そのものに参加することがある」という点で、オリンピックとは決定的に違う。障害の内容や程度によって補助をしないと競技参加が難しい障害者がいるからだが、逆に言えば、「競技に参加するのは困難と見られていた障害者が参加できるようになるためには、競技のやり方やルールをどう工夫したら良いか?」と考えた結果だと言える。したがって、本当によく考えられている。

まず、我が家の大人全員がやってみたいと言った「ボッチャ」、そのボッチャで障害の程度が最も重い「運動機能障害・脳性麻痺BC3」では、ボールを滑らせる勾配具「ランプ」の方向や、「ランプ」に置くボールの高さを、選手の指示に従いセットする手伝いとしてアシスタントが参加していてた。良く考えられていて、「成る程!」といたく感心させられた。また、視覚障害の水泳では、タッピング棒と呼ばれる棒を使い、選手にターンやゴールのタイミングを教える、タッパーと呼ばれるコーチが参加していたが、上手い方法を考えたものである。また、同じ水泳だが、「そんな方法があったか!」、と驚いたスタートがあった。背泳ぎで、両腕欠損の選手が、コーチが差し出す布を口に加えスタートしていたのだ。また、プールへの入退水の際、スタッフに補助してもらう選手もいた。日常生活の一端を垣間見た気がしたが、それでも競技できる素晴らしさ、パラリンピックならではだ。

陸上の視覚障害の競技では、目の代わりとなってくれる伴走者(ガイドランナー)のサポートを受ける。「絆」と呼ばれるロープを互いに握り、歩調を合わせて疾走する。パラマラソンでは良く見掛ける光景で、それは知っていた。しかし、同じ陸上でも、走り幅跳びはその方法では難しい。したがって、走り幅跳びに視覚障害のクラスはない、と思っていた。ところが、あった。ありました。闇の中を全力で走りジャンプするなど、恐怖心は無いのかと心配してしまうが、「コーラー」と呼ばれるガイドが踏みきり地点から声をかけたり、手をたたいたりして、走る方向を知らせ、我々が知るのと同じ走り幅跳び競技を成立させていた。「コーラー」はコーチなどが務めるらしいが、この連携も、凄い!

上記の競技に限らず、他のどの競技でも、パラアスリートとコーチや日々支えてくれる仲間との絆は、とても強いと思う。パラアスリートたちが、彼らに全幅の信頼をおいているからこそだ。そうでなければ、競技に打ち込めない。そして彼らは、その信頼に答えようと真剣にサポートする。ともすれば世知辛い今の時代にあって、今大会に参加した選手やスッタフ、そして多くの仲間たちとのゆるぎない信頼感、彼らに明るい爽やかな風を感じたのは、私だけではなかっただろう。共生って、こういう事なんだろな!

最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間9月7日17時の時点で、世界全体の感染者数は2億2110万人を、亡くなった人は457万を超えた(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。
      (※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/

【文責:知取気亭主人】


ヤブラン・オリヅルラン
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