2021年10月13日
8日にサウジアラビアで行われたサッカーのワールドカップアジア最終予選、日本代表は手痛い2敗目を喫した上に、一部相手サポーターとのひと悶着もあり、極めて後味の悪い試合となった。ひと悶着に関しては、後日サウジアラビアサッカー協会から正式な謝罪があったと報じられているが、インタビューを受けようとしていた吉田麻也選手が激怒したそのシーンを見る限り、相手サポーターが大人げない言動をしているのは明らかだ。あざ笑うかのようなその様子は、まるで子供の喧嘩を見ている様だ。何と怒鳴っていたのか知る由もないが、恐らく、『やーい、負けやがって、ざまーみろ!』とでも言っていたのではないだろうか。そんなことを連想させる、何とも挑発的な仕草をしていた。
喧嘩をしていたのならいざ知らず、スポーツであれは許されない。スポーツであっても国威発揚に使われることは承知しているが、対戦相手へのリスペクトを忘れてしまってはいけない。選手は勿論、サポーター、いわゆる応援する観客も当然同じだ。オラが国の代表を応援し、勝てば歓喜し負ければ叱咤激励するのは当然のこととして、相手チームや選手を侮辱するのはいただけない。同胞や仲間を応援する気持ちは分かるが、仲間意識もそこまでいくと、やりすぎ、歪んだ愛国心とでも皮肉ってしまいたくなる。たまたま溜まっていた“日頃のうっぷん”があったのかもしれないが、仲間意識が強すぎてそれが言動にまで表れると、対戦相手の選手やサポーターに限らず、傍から見ている第三者にもあまり良い印象を与えない。それどころか、不愉快な思いをさせ敵対心を煽ることになる。
ついひと月ほど前に閉幕した東京2020オリンピック・パラリンピック、どちらの競技大会も、嬉しい事に諸外国からはネガティブな感想や意見は聞えてこない。それは、多くの競技が無観客で行われたという特殊事情に加え、市民や運営スタッフなどが外国のチームや選手に対ししっかりとリスペクトをし、ホームである日本チームや選手への偏った過度な応援や声援をしなかったからだと思う。日本国民という括りの仲間意識ばかりでなく、スポーツを愛する仲間という括りであったり、東京2020オリンピック・パラリンピックに参加している仲間という括りであったり、日本という地で同時にスポーツ大会を楽しんでいる仲間など、柔軟な発想が出来ていたからだと思う。
そうした柔軟な括り方が芽生えるためには、仲間として認める相手へのリスペクトが必要だ。仲間として仲良くなるからには当然である。例え同じ競技で競争したり戦ったりする相手だとしても、すべからく同じである。それには心の余裕みたいなものも必要だ。逆に仲間と認められる立場からすれば、リスペクトされなければならない、と言うことになる。好かれる人であれ、ということだ。
それは、米大リーグ・エンジェルスの大谷翔平選手を見ていると分かる。彼は、“全ての”とは言わないまでも、敵味方なく、多くの大リーガーたちやその関係者から好かれている。それは、報じられる色々なニュース映像から伝わってくる。そして、多くの野球ファンの心も掴んでいる。グランドに落ちているゴミを拾ったり、折れたバットを相手選手に手渡したり、他の大リーガーたちが余りやらない事をごく自然にやっている。また、野球をやっている子どもだったら誰でもやりたがる、投げて打っての二刀流として、まるで野球小僧の様に純粋に野球を楽しんでいる。それが全ての野球人やファンにも伝わるのだろう。人々の心を掴みリスペクトされ、現役大リーガーたちから仲間として認められている。塁上で対戦チームの選手から“ちょっかい”を出されからかわれるなんて、仲間意識の際たるものだ。それだけ、愛されている。衆人から注目される立場ではないが、我々も、人としてそうありたいものである。
仲間意識と言えば、日本の政治家の仲間意識というのが、実に奇妙奇天烈で面白い。先日行われた、自由民主党の総裁選挙、それに続く党の人事、首班指名と組閣、という一連の出来事を見ていると、複雑に入り組んだ括り方が見え隠れして、まるで迷路の様だ。派閥という徒弟制度を彷彿とさせる内部組織の括りであったり、総裁選挙後の果実を見据えた括りであったり、強敵に勝つための括りであったり、果ては以前の怨念であったりと、報道を聞いていると何が何だか分からなくなってしまう。括り方によって行ったり来たりしている先生もいたらしい。ただ、そうした括り方から見えてくるのは、「人格や政治理念で尊敬・同調できるから」という括り方が欠けていることだ。したがって、どの括り方にしても、仲間意識としては希薄なのだろうと思う。かと言って、野党も似たようなものだ。
先生方の括り方を全て否定するつもりはないが、「純粋に国家国民のために…」という括りで先頭に立ってくれる政治家、例えて言うなら政治家版大谷翔平選手のようなスーパーヒーローや、或いはヒロインが出てこないものだろうか。随分前から待ち望んでいるのだが、一向に現れない。トップが変わる度に「これは!」と期待するのだが…。
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間10月12日17時の時点で、世界全体の感染者数は2億3827万人を超え、亡くなった人は486万に迫っている(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。
(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)
【文責:知取気亭主人】
ハギ(秋の彼岸に供える“おはぎ”はこの花にちなんでいるという)
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