2022年1月12日
早いもので、年が明けてもう10日が過ぎた。この僅かな期間に、初詣、墓参り、左義長(どんど焼き)など、年始特有の催事が目白押しだ。それ以外にも、世間では成人式も執り行われていたり、我が家では10日が孫息子の誕生日であるためその前夜にお誕生会を開いたりと、何かとせわしない日が続いて来た。それも目出度い事ばかりで、必然的に酒の量も増え、知らず知らずのうちに暴飲暴食の罠に陥ってしまう。それはどうやら今も昔も変わらぬようで、そんな疲れた胃腸を休めましょう、と昔から春の七草粥が推奨されている。1月7日の日に食べる、「せり・なずな ごぎょう・はこべら ほとけのざ すずな・すずしろ 春の七草」と歌のように詠み覚えた、春の七草が入った粥である。
病院食として回復期初期の食事に出されることからも分かる様に、粥料理そのものも胃腸に優しいのだが、春の七草は、冬に不足しがちなビタミンも補ってくれるのだという。胃腸が弱る年末年始のこの時期には、ぴったりな料理と言えそうである。『さて、それに習って我が家でも…』と言いたいところなのだが、我が家にはその習わしはない。それどころか、あろうことか、つい先日そんな先人の教えと真逆のことをして、家内に心配を掛けてしまった。夕食に孫息子の誕生日会を予定していた、9日(日曜日)の昼食のことである。
きっかけは、昨年の仕事納めの日の事である。帰り際、会社の同僚が満面の笑みを浮かべながら、興味深い食材を教えてくれた。インスタントの“焼きそば”である。笑みを浮かべながら言うだけあって、ただの焼きそばではないらしい。本人曰く、『衝撃的な辛さ』だと言う。その同僚は、会社の中では1、2を争う辛党で、(こんな言葉は聞いたことないが)耐辛力も極めて強い。僕も辛い物は大好きだが、恐らく僕より数倍強い。そんな彼が言うのだから相当辛いのに違いない、と怖いもの見たさで、俄然興味が湧いて来た。そこで、商品名を聞き出し、調べて見ることにした。商品名は「ペヤング 極激辛やきそば」だという。
早速、家に帰って調べてみた。ありました。製造元の「まるか食品株式会社」にペヤングの商品コーナー(http://www.peyoung.co.jp/products/1502/)があって、そこには見るからに辛そうなパッケージの商品が載っている。ご丁寧に、商品の横には、
※辛さが非常に強いため、激辛が苦手な方の喫食や早食い、大食いなどの挑戦は
ご遠慮ください。(原文のまま)
との注意書きがある。敢えてこんな注意を書き添えているところを見ると、相当辛いのだろう。スマホでも調べてみたが、商品開発者と芸人らしき2人の3人が試食している動画があって、一口食べただけでギブアップしている様子も映っている。そんなあれこれを見ているうちに、これは手を出さない方が良いかな、と少々弱気になって来た。ただ、そんな“気後れ”も“やきそば”のことも、慌ただしい日々が始まったこともあり、すっかり忘れていた。
ところが、年が明け仕事始めとなった5日の日、僕の顔を見るなり、『持ってくるの忘れた!』と残念がる彼。僕ともう一人の仲間の為に、わざわざ取り寄せてくれていたらしい。遠慮がちにお礼を言ったのだが、律義な彼、後日忘れず持ってきてくれた。その忘れた危険食材に、9日の昼食時、長男と果敢にチャレンジしたという訳である。「担々やきそば」と「麻婆やきそば」の2種類を貰い、それぞれ半分ずつ賞味しようとしたのだ。
パッケージに書かれているくだんの注意書きとスマホ動画の惨劇を見て、最後に加えるソースの量を凡そ6割ほどに抑えて、チャレンジすることにした。この時点では、二人とも“それなりに味を楽しめる”という自信があったのだが、一口食べただけでそれは見事に打ち砕かれた。兎に角、半端ない、衝撃的な辛さなのだ。元々汗かきの長男は、半袖の下着になっても顔中汗だくだ。味見用にとほんの僅かばかり取り分けた女性陣3人は、麺1、2本食べただけで、『もう結構!』と言う。“注意書き”に嘘偽りはなかったのだ。
6割ほどのソースしか入れていないのに、想像を絶する辛さだ。ただ、くだんの仲間に報告するには完食あるのみ、との変な意地があって、家人の『もう止めたら!』の忠告を尻目に、あの手この手でチャレンジし続けた。先ず、口の辛みを抑え胃腸を保護するために、と並々と注いだコップの牛乳を飲み干した。これで何とか、口の中の痛みに似た辛さは収まったのだが、新たに食べると、やはり辛い。そこで、他のみんなが食べていた“きのこスパゲッティ”のきのこや、買い置いていたカニカマを加え、食べてみた。すると、やってみるもので、少しは辛みが抑えられる。
それからはもうやけくそだ。ありったけのカニカマを加え、何とか完食することができたのだが、麻婆味の方は、半分以上残してしまった。しかも、僕も含め誰も食べるとは言わず、心苦しかったが、結局捨ててしまった。SDGsなどで取り上げられることの多い食品ロス問題について、解決ではなく真逆に動いてしまった事には、忸怩たる思いがある。しかし、生きるために食べるという生理現象からすると、いくら嗜好品とは言え、これほど激辛の商品を開発・販売する理由は何だろう。ハッキリ言って負け惜しみの何物でもないのだが、聞いてみたい!一般人にとっては“かなり危険な食べ物”の開発動機を。
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間1月11日17時の時点で、世界全体の感染者数は、とうとう3億人を超え、3億1044万人に迫っている。一方亡くなった人は、550万に迫る勢いだ(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。
(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)
【文責:知取気亭主人】
サネカズラの実(薬用として使われるらしい)
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