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知取気亭主人の四方山話
 

『原発事故の恐ろしさ、処理の手強さ』

 

2022年3月9日

ヒトは、怒ると感情のコントロールが難しい。自分自身も経験しているから良く分かる。しかし多くのヒトは、すんでのところで理性を働かせ、大事に至らないようにしている。大概は、一歩手前で思い止まっているのだ。しかし、今世界を震撼させている彼の国の大統領は、魂を悪魔に売り渡してしまったのではないかと思えるような蛮行を行っていて、“理性はどこへやら”の状態だ。人道的見地もあったものではない。

ロシア軍が4日、ウクライナ南部のザポロジエ原発を砲撃した、と報じられたのだ。我が耳を疑った。一歩間違えれば大惨事になるこの暴挙に、当然の如く、世界各国から激しい非難の声が上がった。原発事故の恐ろしさを知っているからだ。しかもプーチン大統領は、ウクライナ北部にあるチェルノブイリ原発が旧ソ連時代の1986年に史上最悪の事故を起こし、被害の悲惨さと、事故処理に困難を極めたことを承知している筈なのに、である。

折しも、今週の金曜日3月11日は、11年前に東日本大震災の津波によって福島第一原発事故が発生した日である。汚染水の海洋放出について周辺国から懸念の声が上がっているのを含め、発災から11年経ってもその後の事故処理に苦悩する日本の姿は、世界の人々に、そして世界の為政者にも原発事故の恐ろしさを十分伝えている筈だ。その中での原発への攻撃である。とても正気の沙汰とは思えない。兎に角、チェルノブイリや福島などで思い知らされたように、一旦原発事故が起これば、被害の悲惨さも処理の手強さも計り知れない。そのことを、福島第一原発で残されている事故処理作業のロードマップから、見てみたい。

日本には「十年一昔」なる諺があるが、3月6日付の北陸中日新聞のサンデー版(以下、新聞)によれば、福島第一原発事故の処理の過程で発生した汚染水の海洋投棄が2023年から始まったとして30年ほど掛かるとの見通しだというから、「十年一昔」などと切って捨てるような真似はできない。炉内に崩れ落ちた燃料デブリに至っては、その取り出し方法すらまだ決まっていないのだ。加えて、それを取り出しどうやってどこに処分するのか、その道筋もまだ示されていない。下に示したのは、新聞に掲載されていた大図解『福島第一原発の姿』を基に、筆者が作成した「今後の大まかな事故処理ロードマップ」であるが、これを見ると、廃炉作業終了までの道筋は極めて険しい事が分かる。

事故を起こした4機の原発のうち、核燃料を取り出せたのは、11年経っても半分の2機しかない。残りの2機は、まだ直接の取り出し作業には取り掛かれていない。作業が始まっている1号機のカバー設置や、2号機の核燃料除去のための構台建設などの事前工事さえも、工程通りに進むのか不透明だ。となると、1号機の2029年、2号機の2026年核燃料取り出し完了予定も、甚だ心許ない。更にその先には、経験した事のない、もっと手強い作業が待ち受けている。溶け落ちた燃料デブリの処理である。

デブリの取り出しには、作業員の被ばくや周辺への放射性物質拡散などのリスクが指摘されている。更には、取り出したとしても保管や処分をどうするのか、難問も残る。簡単にロボットで取り出せばよい、という話ではないのだ。尤も、そのロボット自体、未完成だ。状況把握すら満足に出来ていない。政府や東電は、当初「40年後には廃炉作業を終了させる」とのロードマップを示していたが、雲行きは極めて怪しい。これまでの11年間に発生した数々のトラブル(ネズミによる停電や地下水の流入など)を考えると、今後もすんなりと事が進むとは思えないのだ。

如何せん、原発の爆発事故も初めてなら、事故原発の廃炉も初めてだ。経験がない。デブリの取り出しは、世界でも知見が無く、技術的にも極めて難しい。人間が作った物でありながら、一旦暴走してしまうと、人間は無力に等しい。福島第一原発の北に位置する浪江町では、11年経った今でも一部の地区を除き除染すら行われていない、と報道されている。それだけ、原発事故は周辺地域に悲惨な状況をもたらす。だからこそ、原発事故は起こしてはいけないのだ。ましてや、それを攻撃するなんて…。

ところで、今回の話を書くにあたって、福島の原発事故を扱った、YAHOO!が開設しているサイト、『グラフィックで考える3.11 廃炉と復興、その先 福島のこと、どれだけ知っていますか?』を見つけた。是非アクセスしてみてほしい。何かを感じる筈だ。

https://news.yahoo.co.jp/special/fukushima2022/?cpt_c=news_info&cpt_n=fukushima2022&cpt_m=txt&cpt_s=yj

最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間3月8日17時の時点で、世界全体の感染者数は4億4788万人を、亡くなった人はとうとう600万人を超えた(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。

(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/


【文責:知取気亭主人】


自然界には春が訪れているのに!
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