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知取気亭主人の四方山話
 

『春の開花を予測する』

 

2022年3月16日

13日の金沢は、最高気温が22度を超え、4月下旬並みの暖かさとなった。町会の雪捨て場となっていた我家の前の駐車場、そこにうず高く積まれていた雪も、最近の暖かさですっかり消えた。それに合わせるかのように、駐車場の片隅で毎年真っ先に春を告げてくれている水仙の鮮やかな黄色い花が、チラホラとではあるが咲き始めている。庭の蕗の薹も採れたというし、郊外の山にまだ雪は残るが、我が家の周りもやっと春めいて来た。

それはテレビの週間天気予報にも表れていて、雪だるまと雲のマークばかりだったここ金沢の週間天気予報にも、太平洋側と同じ様にお日様マークがしばしば顔を出すようになって来た。先々週の週末に見た週間天気予報(3月6日〜12日)では、半分雲に隠れている日もあったが、何カ月ぶりかで、本当に久しぶりに、7日間毎日お日様マークが並んでいた。お蔭で、玄関の階段に敷きっ放しにしていた滑り止めマットを、数日間かけて乾かし仕舞い込むことができた。お日様は有り難い!こうした明るい、暖かい天気になってくれると、コロナ感染から解放されたこともあり、外で体を動かしたくなってくる。

どうせ体を動かすなら、と週末に季節外れの剪定作業を行った。「金木犀の強い剪定は2月、3月が良い」との情報をネットで知ってからは、毎年この時期に行っている。ついでに、屋根からの落雪で枝が折れすっかり惨めな姿になってしまったツツジも、根元から奇麗に切り取ってしまうことにした。ツツジの切り取りを終え、金木犀に取り掛かったのだが、思った以上に手間が掛かる。ただ、その分だけ、周りの変化がよく目に入る。早春に花を付ける木々が、すっかり開花の準備をしていたのだ。

脚立に乗り、剪定する枝をあれやこれやと物色していて、隣のツバキに数個の小さな春を見つけた。蕾だ。まだ固そうだが、ほんの少しだけ顔をのぞかせている鮮やかな朱色が際立ち、冬の装いの濃い緑の中で春をアピールしている。まるで、『ここで咲くから期待してろよ!』と言わんばかりだ。少し離れたコブシも、灰色の産毛に覆われたたくさんの蕾が、競うように膨らみ始めている。また、お隣の道路に面した石積みの上では、沈丁花が色付いた蕾をいっぱいつけている。もう直ぐ、香しい匂いを漂わせてくれる。

雪がたくさん降り、厳しい寒さが続いた今冬だったが、季節は正直なもので、今年の春もそこまでやって来ている。剪定の合間に見た木々の蕾たちも、童謡『春よ来い』で詠われている“桃の木の蕾”と同じで、「はよ咲きたいと 待っている」の心境だろう。早く愛でたいものである。ただ、童謡の歌詞と違って、我々人間は、「はよ咲いて!」と願ってはいるものの、蕾の様に待っているのは辛い。気になることが他にもたくさんあって、一番良い時期を見過ごしたり、咲いたのに気づかなかったりする。そんな経験を度々すると、開花時期を知りたくなってくる。そこで、日本人が上手い事を思い付いた。開花予想である。

古より、日本人は四季の草花を愛でてきた。中でも梅や桃、そして桜は、「はよ咲いて!」と願う花の代表と言って良い。特に現代の日本人が大好きな桜については、開花を待っている人が圧倒的に多い。沖縄から北海道まで、日本の各地で花見を楽しめるからだ。そうしたこともあって、日本気象協会が全国の開花予想日を発表している。その桜の開花予想に用いる手法の中に、「桜の開花600℃の法則」というのがあるのを知った。2月1日から毎日の最高気温を累積して累積温度が600℃になったら開花する、という法則だ。当然誤差はあるものの、ほぼ当たるという。そこでご当地金沢のデータで確かめることにした。

下のグラフは、東日本大震災のあった2011年と今年(2022年) の累積温度を描いたものだ。発災後の気温が暫く低かったと記憶している2011年は、累積温度が583.4℃の4月7日に開花宣言が出されている。600℃には僅か足りないが、3%ほどの違いしかない。2011年に限ってなのかもしれないが、凄い的中率だ。では、今年はどうだろう。3月15日までの累積温度を比較すると、2011年が376.4℃、今年は389.8℃と13.4℃しか違わない。となると、これから4月上旬まで2011年とほぼ同じ最高気温で推移すると仮定すれば、11年前とほぼ同じころ開花すると予測できる。他方、2011年から2020年まで10年間の平年値は、4月3日だという(https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/sakura003_06.html)。そこで、こうした平年値も考慮に入れ、今年の金沢の桜の開花は4月5日と大胆に予想してみたが、どうだろう?当たってくれるかな?

ところで、こうした自然界の開花は、長年積み重ねてきた観測データで、ある程度の精度で予想できる。しかし、11年前の東日本大震災の様に、自然災害により突然心に傷を負った人々に訪れる春は、どれだけの時間が掛かるのか計り知れないし、予測も出来ない。また、侵略戦争に翻弄され悲しみに暮れる人々に訪れる春も、然りである。相手が意思を持つ同じ人間だけに、尚更予測は難しい。11年経った東日本大震災の被災者も戦火が続くウクライナの国民も、予測できない中で、一日も早い春の訪れ、春の開花を待っている。

そうした人たちに我々は何が出来るのだろう。春の開花を早めるために我々のできることは限られている。でも、できることは、必ずある。何ができるか、一人一人ができることを考え、それを実行する。それが春の開花を早めることに繋がる、そう信じている。

最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間3月15日17時の時点で、世界全体の感染者数は4億5980万人を超え、亡くなった人は605万人に迫っている(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。

(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/


【文責:知取気亭主人】


椿の蕾
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