2022年3月23日
春分の日の21日、保育園に通う末の孫娘の卒園式があった。これで、同居する孫たちは全員が小学生となってしまう。「なってしまう」などと諦めに似た書き方をしたのには訳があって、パパとママが忙しい時に楽しませてもらった代役の“お迎え”が、それこそ後僅かで出来なくなってしまうからだ。後10日弱、卒園式が終わっても今月末までは保育園に通うと聞いてはいるが、『代役お願い!』の声は掛かるかな…。
保育園へのお迎えが何故楽しみかと言えば、保育室前の廊下で先生に迎えに来た事を告げた後、腰を落とし両手を広げて待っていると、胸に飛び込み抱きついてくれるからだ。卒園したら、このギューッと抱きしめる至福の時間を味わえなくなってしまう。まだまだ子供だが、卒園・入学の話が出始めたあたりから“お姉ちゃんになった”の意識が芽生え始めていて、恐らくもう人前では恥ずかしがってダメだと思う。出番の少なくなる爺としては、嬉しさ半分寂しさ半分、といった複雑な心境でいる。人間の心理は本当複雑だ。
その人間の複雑な心理を真正面で受け止められるようにと、抱きとめる時には、必ず“しゃがむ”か“膝立ち”し、目線を合わせる様にしてきた。保育園で1日頑張っていた孫の顔の表情が全て見え、楽しかったのか、或いは悲しかったのか、凡その見当がつくからだ。こうしてやると、孫からも僕の表情が全て見え、僕が笑っていれば安心する。人間の心理は複雑ではあるが、お互いの心のあり様を理解するには、この様に目線を合わせることが重要だ。例えば、僕が立ったまま孫を迎えたとすれば、上から目線となり、孫の細かな表情は読み取れない。また、見上げる孫もしかりだ。この“目線を合わせる”こと、実は、顔を合わせている時以外でも極めて重要だ。
例えば、何か人の為にしようとする時もそうだ。相手と同じ目線で考え、事を成せば、相手の満足を得ることができる。しかし、この世の中には、その目線がずれていることが実に多い。特に、行政サービスに目立つ。今世界の喫緊の課題であるウクライナ難民の受け入れについても、「日本の対応は目線が合っていない」との報道が、やけに目に付く。受付時間が短く不親切で、ウクライナ語にも対応していないなど、出入国に関する対応がお粗末というのだ。そこで、実際どうなっているのか、難民申請を受け付ける「出入国在留管理庁」のホームページ(https://www.moj.go.jp/isa/)を閲覧してみた。
まず、受付時間についてだが、確かに問題が多い。問合せを受け付ける「外国人在留総合インフォメーションセンター」は、北から@札幌(A)、A仙台(B)、B東京(C)、C横浜(C)、D名古屋(D)、E大阪(C)、F神戸(C)、G広島(E)、H高松(A)、I福岡(E)、J那覇(A)と、計11カ所あるのだが、この11カ所の受付時間が5種類もあるのには驚かされる。都市名の後ろの(A)など、括弧書きのアルファベットに対応するのが下記の受付時間だが、これで難民の目線に立っていると言えるのだろうか。
A:平日 午前9:00〜午後4:00(午後12:00〜午後1:00を除く)
B:平日 午前8:45〜午後4:30、 C:平日 午前8:30〜午後5:15
D:平日 午前8:30〜午後4:00、 E:平日 午前9:00〜午後4:00
一方、対応している言語は、最も多い東京でさえ、日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、フィリピノ語の8言語しかない。また、電話での問合せについては、前述の8言語にネパール語、インドネシア語など10言語を加え対応している様だが,ウクライナ語は記載されていない。更に、メールでの問合せについてはもっと酷い。「対応言語は日本語と英語」とだけ記載されていて、『上記以外の外国語では、メールを頂いても回答できませんのでご了承ください』(原文のまま)と、冷たい文章が追い打ちをかけている。外国語としてはW英語だけ“だという。これでは、全く実情にそぐわない。そこで提案だが、便利な携帯翻訳機を職員に配布するとか、難民をそのまま職員に採用するとかできないものだろうか。対応できる言語はぐっと増えると思うのだが…。
ただ、ことウクライナ語に関して言えば、確かに専攻課程として設置している大学は日本にはないらしい。したがって、ウクライナ語に堪能な人員を配置するのは、容易ではないと思う。しかし、留学生、商社マン、ウクライナ語を授業で学んでいる学生など、ウクライナ語を話せる人は必ずいる筈だ。そうした人材を大々的に公募した上で、そうした努力を必死にやっているから安心して日本に来てください、そんなメッセージを届けるのも目線を合わせることの一つだと思う。勿論、受付時間の柔軟な対応も然りである。
ところで、今回の話を書くに当たり、ネットを調べていて、興味ある記事を知った。東洋経済ONLINEに掲載されていた、『フランス・ジャポン・エコー』編集長で仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏による『日本「ウクライナ難民受け入れ」偽善に聞こえる訳 アフガン難民が置かれた状況を見ればわかる』(https://toyokeizai.net/articles/-/539064)である。日本人として耳が痛い内容だ。でも、それが実情なんだろうな!
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間3月22日14時の時点で、世界全体の感染者数は4億7212万人に迫り、亡くなった人は609万人を超えた(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。
(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)
【文責:知取気亭主人】
フクジュソウ
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