2022年4月13日
今、ウクライナに関する衝撃的なニュースが、各種メディアを通じて、ひっきりなしに流れてくる。ロシア軍が撤退した後の被害状況が明らかになるにつれ、女子供など民間人への非人道的な行為の数々が映像と共に世界を駆け巡っていて、世界中から非難の声が上がっている。首都・キーウ近郊にあるブチャで、非戦闘員である市民の惨殺遺体が数多く見つかったのだ。また、激しい攻撃に晒されているマリウポリを始めとした、ニュース映像に写る破壊尽くされた各都市の惨状は、目を覆うばかりだ。瓦礫の山と化した街で途方に暮れ、泣き崩れる住民の姿を見ると、胸が締め付けられる。一緒に見ている家内と交わす言葉は、決まって『酷いことをする!』、『誰かプーチンを止めてくれ!』である。世界の国々からは「ロシア軍による戦争犯罪」と厳しく非難されているのだが、当のロシアに、こたえている様子は微塵も感じられない。反省の弁も聞かれない。
それどころか、ロシアは、「ウクライナによるでっち上げだ」と強く反発している。しかし、ブチャで発見された無残な遺体の状況や目撃者の話からすれば、国際社会が一斉に非難している様に、ロシア軍による蛮行だと断定してほぼ間違いないだろう。海外を含めた報道各社のニュースによれば、宝飾品などの略奪も頻発しているという。上官への反逆があるとも報じられていて、ロシア軍内部の規律の乱れが深刻な状態に陥っていることが窺える。
ロシア兵士がウクライナから略奪したとみられる家電製品などを、隣国ベラルーシから母国ロシアに送ろうとしている防犯カメラの映像がベラルーシのメディアによって公開され、ネットニュースに流れていたが(https://www.youtube.com/watch?v=Uoj-GJAsYr8)、軍紀の乱れもさることながら、ロシアにおける生活レベルの一端を垣間見てしまった様な気がする。給与も思ったほど高くないらしい。なのに命の危険に曝されている。これでは、士気が上がらなかったり、軍紀が乱れたりするのも分かるような気がする。また、兵站の準備不足なのだろう、前線では食糧不足も見られ、食料の略奪も行われているという。何やら、太平洋戦争末期の日本軍になぞらえてしまいそうな話である。
そうした軍紀の乱れは古今東西あって、前線で戦う兵士の“生きたい”の本能からくるものなのではないだろうか。中でも、飢えからくる食料の略奪や、それに端を発した住民への残虐行為は、決して容認されるものではないが、敵と戦い、恐怖と戦い、尚且つ“飢え”とも戦わなければならない前線兵士の哀れ、だとも言える。そして、生き抜こうとする本能の赴くままに犯罪を重ね、やがて罪の意識は無くなってしまうのだろう。罪の意識が薄らいでいけば、どんどん大胆に、過激になっていく。今回も、拷問をされた痕跡のある民間人の遺体が数多く見つかっている、とも伝えられている。しかし、今ウクライナで起こっている惨劇に限らず、先の世界大戦後に各地で起こった紛争や戦争でも、こうした「戦争犯罪」と呼ばれる残虐行為は、数限りなく行われてきたのだと思う。
その戦争犯罪について、YAHOOニュースJAPANに、国際政治学者六辻彰二氏の記事、「ウクライナ「戦争犯罪」に法の裁きは可能か――知っておきたい基礎知識5選」が掲載されていて(https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20220410-00290574)、どんな行為が犯罪として規定されているのか、詳しく述べられている。その一部を紹介しよう。僕自身は、戦争そのものが非人道的行為なのに、戦場での非人道的行為を規制する国際的なルールがあるということ自体矛盾している、と思っているのだが、ジュネーブ条約(1949)と追加議定書(1979)では、主に以下のような戦争犯罪が禁止されたという。
〇民間人への無差別攻撃
〇住民生活に欠かせない施設(発電所など)への攻撃
〇捕虜の虐待・拷問
〇傷病者、医療従事者への攻撃 など
こうした禁止項目に、報じられている現地の状況を照らし合わせると、そのどれもが破られている様に思える。ウクライナやNATO諸国が、「ロシア軍の戦争犯罪」を声高に叫んでいるのも、納得できる。でも、六辻氏の記事のタイトルにもあるように、本当に今回の蛮行を、戦争犯罪として法的に裁くことができるのだろうか?
戦争犯罪を裁くのは、国際刑事裁判所(ICC)だ。裁判所と聞けば、直ぐに日本の司法制度を思い浮かべ、「日本で起きた犯罪は全て対象となる」と思いがちだが、実はそうではない。日米の地位協定で規定されている様に、米軍基地内は日本の司法権は及ばない。ICCも似たような状態にあるらしい。六辻氏によれば、現在のICC締約国は、国連加盟193カ国のうち123カ国(約63%)にとどまっているという。記事には世界地図があって、ICCに参加していない国が黄色く色分けされているのだが、アメリカ、ロシア、中国、インドなど、大国が目立つ。国土面積的には、地球上の半分以上が黄色に塗られている様にも見える。そして、何と侵略されているウクライナ自体も黄色だ。果たして、こんな状況で、本当にロシアの戦争犯罪は裁けるのだろうか?
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間4月12日17時の時点で、世界全体の感染者数は4億9984万人と、いよいよ5億人が目前となった。しかし、亡くなった人は618万人と1週間で約1万人しか増えていない(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。やっと光が見えてきた、かな?
(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)
【文責:知取気亭主人】
八重咲のコブシ
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