2022年5月4日
我が家のガレージ脇に、ビックリグミの木がある。漆を扱う問屋から買った、漆を海外から輸入する際に使っていた木の樽を、植木鉢代わりに育ててきた木である。苗木を植えてからかれこれ20年程経つから、既に樽の底は抜け、今はもう直接地面から生えている。幹の太さも8センチ程までに成長し、年によって多い少ないの差はあるものの、毎年確実に実を付けている。木を大きくしないよう毎年刈り込んでいるため、量は僅かではあるが、収穫の楽しみを味わっている。最近は孫たちの格好のおやつになっていて、特に果物が大好きな末の孫娘は、嬉々として摘まんでくれる。
そのビックリグミ(以下、グミ)が、先月の中頃、一挙に花を付けた。しかも、これまで見たことがないほど大量に。“何でこんなに”とよく考えたのだが、毎年11月に行う剪定で、昨年刈り込み過ぎたのが原因なのかもしれない。余りにも短くされたグミの木が危険を察知し、「たくさん花を咲かせ多くの果実を付けて子孫を残さないと枯れてしまう」と感じたのではないか、そんなグミの木の並々ならぬ意思を想像してしまうほど、見た事も無い大量の花だ。ざっくり刈り込んだ枝にも、びっしりと付けている。
これまではそんなことを考えた事も無かったのだが、余りに大量だったので、多くの果物がそうであるように、我が家のグミも実を大きく育てるためには摘花して花の数を制限しないといけないのではないか、ふとそう思い付いた。そこで、余分な花を振るい落とそうと、幹を強く揺すってみた。ところが、散り落ちるのは僅かばかりで、ほとんどが付いたままだ。今考えれば、花が咲いたばかりだったから、グミの木も落とすまいとして必死だったのかも知れない。揺すっても落ちない花を見ながら、これだけしっかり残っているのなら今年は小さいのがたわわに実るのかな、と思っていた。しかし、それから約1週間後、その期待は見事に裏切られてしまった。
学童保育に行っている末の孫娘を迎えに行こうと家を出たところで、ガレージの前に薄い黄色の小さな花がたくさん落ちているのに気が付いた。よく見ると、グミの花だ。見上げると、黄色い花に彩られていたグミの木が、随分と寂し気になってしまっている。下から見上げているからなのか、それとも花自体が小さいからなのか、あれだけ多かった花が確認できない。葉の陰に隠れてしまっているのかもしれないのだが、全部散ってしまったのではないか、と心配になってしまった。
そこで、家に帰りついて直ぐに、どれくらい散らずに残っているのか、ガレージの上に出て確認してみた。するとどうだろう、ガレージの上には、散り落ちた花がどっさりと溜まっている(写真-1)。一方、グミの木に付いたままの黄色い花は、ポツンぽつんと申し訳程度にしか見つけられない(写真-2)。ぱっと見、99%近くが散ってしまったのではないかと思われる程、見事に散っている。あれほど、これ見よがしに咲き誇っていたのに、嘘のようだ。しかも、期待した果実の赤ちゃんも確認できない。開花してから散る迄があまりに短く、結実するまでに至らなかったのだと思う。殆どが「徒花(あだばな)」だったのか、とガックリしてしまった。
ただ、それから10日余り経った今月2日の月曜日、この四方山話用の写真を撮るため木に近づくと、僅かに残った小さな花と共に、ほんの少し膨らんだ可愛らしい果実の赤ちゃんを見つけた(写真-3)。数は多くないが、今年も実を付けてくれたのだ。すべてが徒花だったわけではなかったと分かり、一安心だ。これで、孫たちの喜ぶ顔がまた見られる。
と喜んだのもつかの間、「もっとないかな?」と目を凝らして果実の赤ちゃんを探すのだが、中々見つけられない。それ程少ない。言い換えれば、全てではないにしろ、散った多くは徒花だったということである。しかし、徒花ってこんなに多いものなのだろうか。不思議に思って調べて見た。すると、どうやら受粉不良ではないか、ということが分かって来た。
インターネットで調べたところ、ビックリグミなどのグミ類は、不完全な花粉が多く、自家結実性(1本で結実する能力)が低いのだという。このため、今年の我が家のグミの様に、花はたくさん咲いたのに、実が極端に少なかったりすることがあるという。これまで毎年そこそこ実を付けてくれていたから気にすることも無かったのだが、どうやらほったらかし過ぎていたらしい。ただ、同じグミ類の他品種を近くに植えれば、簡単に収穫出来るという。収穫量を増やすためにも、植えてみる価値はありそうだ。うまくすれば、ジャムが作れるほど採れるかもしれない。その上、徒花も減らせる。実は、徒花を見ていると、何となく人のはかなさに思いを巡らしてしまい、あまり好きではない。その徒花を減らせるということであれば、願ったり叶ったりである。早速植えてみよう!
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間5月3日14時の時点で、世界全体の感染者数は5億1427万人を超え、亡くなった人は624万人に迫っている(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。
(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)
【文責:知取気亭主人】
|