2022年5月18日
小さな子供は、『お手伝いする!』と称して、親や爺婆などがやっていることを良く真似したがる。物珍しく興味をそそられる事だと、間違いなく参加してくる。すると大人は、やる気を削がない様に、作業の足手まといにならない様に、そして大怪我をしない様にと気を配り、手伝ってもらうことになる。どんなお手伝いであれ、また少々危なっかしいと感じるお手伝いでも、子供が成長していく上で至極重要な体験だと考えていて、僕も、孫たちの「お手伝いしたい願望」は余程のことがない限り聞き入れる様にしている。体験や経験に勝る教師はない、と思っているからだ。
ただ、彼らのお手伝いの感覚の中には「お手伝い≒面白い遊び」があって、面白さを見つけられないとすぐに飽きる。逆に言えば、大人が「単調な作業だから直ぐに飽きるだろう」と思っていても、意外と面白がって長時間手伝ってくれることもある。特に、仲の良い兄妹や友達などと一緒だと、作業の中に思いもよらぬ遊び方を見つけて、嬉々としてやってくれる。「子供は遊びの天才だ」と良く言われるが、本当にその通りだと思う。
15日の日曜日、暫く前から茶毒蛾の発生が気になっていた椿の剪定をした。枝が伸び放題に伸び、葉もびっしりと茂っている。これまでの経験だと、もう限界状態だ。低めの脚立に乗り、庭師気取りで剪定を始めた。1時間近く作業をしていると、「爺ちゃんが外で面白そうな事をやっている」と思ったのだろう、小4の孫息子が庭に出てきた。僕が乗っている脚立に上って来て、剪定鋏を貸してくれとせがむ。
『脚立に二人は乗れないからダメ』と言い聞かせ、切り落とした枝を指さして、『お婆ちゃんの所に行ってゴミ袋をもらって来て、落ちているその枝を袋に入れて』と、違うお手伝いを頼んでみた。すると、ゴミ袋をもらって来てはくれたのだが、葉っぱが付いたままの枝を入れる様子はない。見ていると、何か言いながら、枝から葉っぱをむしり取り始めた。どうやら、『枝を入れて』と言ったつもりだったのだが、『葉っぱを入れて』と言い間違えたらしい。10分ほどやって溜まった葉っぱをゴミ袋に入れているところを見ると、どうもそう言ってしまったらしい。言われるままに黙々とやっている。それを見て、出かかった『ゴメン、枝ごと入れて!』を飲み込んだ。
単調な作業だから直ぐに飽きるだろうな、と思っていた。ところが、意外と根気が良い。脚立の上から見ていると、むしり取りながら一人芝居をしているのか、何か言いながら楽し気にやっている。暫くすると、それを家の中から見ていた小1の妹が、『私も手伝う』と言いながら、外に出てきた。「兄ちゃんがやっている事面白そうだ」と思ったのだろう。『〇〇ちゃん一緒にやろう!』と声を掛け、仲良く並んでやり始めた。脚立から降り、彼らの脇で切り落とした枝や葉をゴミ袋に片付けながら、聞くとはなしに聞こえる兄弟の会話は、実に楽しげだ。笑い声も聞こえる。“小枝から葉っぱをむしり取る”という単純作業さえも、見事に遊びにしてしまっている。やはり遊びの天才だ。
会話の様子から察するに、どうやら“ままごと遊び”の様なことをしているらしい。口達者な妹の方が、『葉っぱの多い方を頂戴』とか、『○○ちゃんの方が大きい』とか、やっている。そのうち、『私のも取って』とねだっている。どうやら、自分は動かず、兄ちゃんに動いてもらおうとしているらしい。それとなく顔を上げ確認して見ると、むしり取った葉っぱを置く場所を決めていて、二人はそれを挟むようにしている。そして、妹がまだ葉っぱが付いている枝を取りに行こうとすると、兄ちゃんのところを通らなければいけない位置関係になっている。「成る程!」と納得し、目を伏せた。
そして、片づけながら耳をそばだてていると、二人のやり取りが実に面白い。むしり取る作業はせっせと続けながら、何が面白いのか、お手伝いで遊んでいる。言いたいことを言うお茶目な妹と、おっとりと何でも言う事を聞いてくれる兄ちゃん、そんな“ほんわかとした関係”が手に取るように分かる。実に仲が良い。近くで夕食用の韮を採っていた家内と、思わず顔を上げ見合わせた。勿論、呆れながらも、二人とも破顔一笑だ。
それでも、1時間ほどするととうとう飽きたらしく、古びた軟式野球のボールを見つけ、園芸用の支柱をスティック代わりに、どこで覚えたのかホッケーらしき真似事をし始めた。もうお手伝いの事はすっかり忘れている様子だ。この切り替えの早さ、大人ではこうはいかない。さすが、遊びの天才である。ただ、『ありがとう、二人が頑張ってくれたから爺ちゃん助かった!』の誉め言葉はたっぷりと伝えているから、「爺ちゃんのお手伝いをしたら喜んでくれた、そして褒めてくれた」という嬉しい記憶は、しっかりと残っている筈である。となれば、次なる時も嬉々としてお手伝いしてくれる筈である。そう期待している。実はこれ、孫たちも楽しんでいるのだが、孫育てしながらの僕の楽しみでもある。
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間5月17日14時の時点で、世界全体の感染者数は5億2207万人を超え、亡くなった人は627万人に迫っている(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。
(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)
【文責:知取気亭主人】
こうしたイチゴを採るのもお手伝い
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