2022年6月8日
末の孫娘の小学校入学と同時に始めたお迎え、はや2ヶ月が経ち、放課後児童クラブ(以下、学童保育)の先生やお迎えのお母さん、そしてちびっ子の顔見知りも出来て、大分慣れてきた。と同時に、色々な発見をしたり、考えさせられることがあったりと、結構楽しませてもらっている。凡そ30分の孫との楽しい散歩、とでも言ったところだ。前にも書いたが、実はそんなに長い距離を歩くわけではない。普通に歩けば、子供の足でも15分ほどだ。ところが、何故か爺と帰る時は、その倍は掛かってしまう。下手をすると3倍ほど掛かってしまうことさえある。言わずと知れた道草をするからである。
道草は、昭和生まれの人であれば、誰もが経験したことがあると思う。勿論、僕も一杯やってきた。「真っすぐ家に帰ったことなんか無かった」と言っても過言ではない。田舎だったから周りは自然だらけで、魚取りを楽しめる小川や、野イチゴやグミなど野生の果物が採れる秘密の場所が、あちこちにあった。今考えれば、子供にとっては天国とも言える環境の中で小・中学校に通い、遊ぶ所に困ったことなど無かった。
そうした経験が基となっていたから、道草は子供にとって自然と親しむことができる極上の、そして大切な時間、と大人になっても思っていた。しかし、車社会になってしまった昨今では、余程のことがない限り、道草を楽しむ余裕など無い様に見える。孫娘が通っている学童保育では、お迎えに来る人の殆どが車なのだ。そして、圧倒的にお母さんが多い。「17時ごろにお迎えに来て、帰ってすぐに夕食の支度」と考えれば、車でのお迎えは仕方が無いことだと思う。
しかも、「同じ学校の生徒が、下校時に不審者を見た」との情報が時々スマホに入って来ていて、例え高学年であっても、下校時間をとうに過ぎた時間に一人で帰らせるのは心配だ。その上、最近ではクマの目撃情報が校下で相次いでおり、そっちも気が気ではない。そんな“あれやこれや”を考えると、なかなか道草を楽しむという風にはいかない。時間的にも精神的にもそんな余裕は無い、というのが現実なのだろうと思う。
そこにいくと僕は少々偏屈なのかもしれない。道草を経験させたいのと、孫娘の体力増強と年寄りの健康の為、そして“クマさんは出たとこ勝負”で行こうと決めていて、殆ど車は使わず歩いているからだ。僕が経験してきた道草とは比べるべくもないのだが、それでも孫娘は、車で帰る子供たちに比べ、遥かに移り行く季節を楽しんでくれていると思う。また次々と質問を投げかける中で、“自然の不思議”を一杯学んでいる筈だ。一方“僕は”と言うと、自分自身では失ってしまった瑞々しい感性に接することができ、心地良い刺激を貰っている。それは、(精神的な)若さを保つ貴重なエネルギー源となっていて、年寄りにとって極めて効果の高いサプリメントでもある。
幼い頃には人間誰しもそうだとは思うが、孫娘はチョットした事にも驚くほど興味を示す。感性が極めて豊かなのだ。それが遊びの天才でもある所以だが、年寄りの固くなった頭は、そんな姿を見ているだけでも微笑ましくなる。そして、孫に遠い昔の自分を重ね、過ぎ去った日々を懐かしむこともある。今思い返すと、オモチャを買ってもらった記憶は全くないが、自然相手に思う存分遊べたのは、本当にラッキーだったと思う。だから余計に、道草を経験させたくなるのだ。
話を戻すと、基本同じルートしか通らないから、迎えに行く時など、年寄りにはいつもの変わらぬ風景としか映らない。時間に遅れまいとするあまり、ちょっとした変化など見過ごしてしまうのだ。しかし、孫娘にとっては、今のところ「見慣れた風景」とはなっていない様だ。毎日同じ道なのに、『もう飽きたから遊ばずにまっすぐ帰る』、なんて言ったことは、雨の日でも唯の一度も無い。目線が低い分、小さな植物にも、蟻のような小さな生き物にも目が届く。孫娘の目に入る自然は、毎日が新鮮なのだろうと思う。
チューリップの花びらを摘まみとって遊んだり、スギナのつなぎ目を当てさせたり、タンポポの綿毛を吹き飛ばしたり、綿毛を持って帰り水に浸けても濡れない撥水力の凄さに驚いたり、ツツジの花の蜜を吸ったり、カラスノエンドウのさやから小さな種を取り出し「おまめさん」と称してもてあそんだり、蟻を追いかけたり、蜘蛛の巣に引っかかっている昆虫の死骸をこわごわ眺めたり、側溝の蓋の隙間に詰まった泥を指で掻き出したり、途中で出会う犬と遊んだり等々、道草のアイテムを数え上げたら切りがない。しかも、どの遊びも夢中になってやっている。
余り一箇所に長居すると『帰るよ!』と声を掛けたりもするのだが、本人は一向に気にせず、納得のいくまでやっている。「この子の為」と自分に言い聞かせ、なるべく付き合う様にしているのだが、突然“自然に呼ばれること”もある。そんな時は、当然失敗しない様にと早足になる。ところが、目ざとく遊びアイテムを見つけると、一瞬忘れるのか足が止まってしまう。興味が勝るらしい。今のところセーフではある…。
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間6月7日17時の時点で、世界全体の感染者数は5億3235万人を、亡くなった人は630万人を超えた(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。
(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)
【文責:知取気亭主人】
ヤマアジサイ(七段花)
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