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知取気亭主人の四方山話
 

『心に沁みる言葉』

 

2022年6月29日

人には、誰しも心に残る言葉がある。親や家族から掛けられた言葉だったり、思いがけずもらった手紙だったり、或いは先生や友達からの励ましや助言だったり、記憶に残る言葉が必ずある。心地良い言葉ばかりではない。中には、叱咤激励として掛けられる、きつい一言の場合もあるだろう。失敗して落ち込んでいた時に、次に繋がるきっかけになった、鋭い指摘の言葉もあるかもしれない。本や雑誌、或いはネットの中に、人生の羅針盤となる言葉を見つける場合もあるだろう。いずれにせよ、心に残る言葉は、その人の人生に大きな影響を与えることになる。

僕にも、影響を受けた言葉がある。しかもたくさん。何故多いかと言えば、以前から気になる言葉に触れると手帳に書き留め、事あるごとに何度も読み返してきたからだ。どの言葉も含蓄があり、時として羅針盤にもなってくれた。その中で、自分への戒めも含め、常に頭の隅に置いている言葉がある。3千年も前に人間の本質を看破していた古代ギリシャの哲学者ターレスの言葉、

『この世で一番難しいことは、自分自身を知ること

      一番易しいことは、他人に忠告すること

      一番楽しいことは、目的を遂げること』

である。その通りだと思う。この言葉に習い、どんな事をするにも目的を持ち、目標を設定する様にしてきた。お蔭で、仕事は勿論、家事など仕事以外のどんな事も楽しんでやってこられた。僕の座右の銘の一つである。

また、座右の銘とはなっていないが、心に沁みた言葉や、それらを紡いだ本として、忘れられないものもある。本で言えば、この四方山話の第24話『魂を揺さ振られてみませんか?』で取り上げた星野富弘著『愛、深き淵より』(立風書房、1981)や、第396話『先生、この本読んで!』で紹介した、葉室麟(はむろりん)著『柚子の花咲く』(朝日新聞出版、2010)などである。どうして心に沁みているのかは夫々の拙文を読んでいただくとして、本の詳しい内容については、実際に本を手に取って読んでみるのが一番だ。まだの方は、是非一読をお勧めする。恐らく、心に沁みると思う。

40年以上も前に出会ったのに、今も忘れられない言葉もある。1979年、私たち夫婦が新婚旅行先として訪れた沖縄で出会った言葉だ。石垣島や西表島などの観光地を巡り、最後に沖縄本島の旧海軍司令部壕を見学した。沖縄戦の「海軍司令部基地」として構築されたこの壕は、米軍との激しい戦闘の末、日本海軍が組織的戦闘の終焉を迎えた場所だ。自決した際の手榴弾の跡が豪の壁に残っている様や、狭い壕の中に4,000人もの兵隊がいたという過酷な状況説明は (http://kaigungou.ocvb.or.jp/navy-headquarters/tunnel-complex/)、今思い出しても胸が傷む。その壕の中に、壕の司令官だった大田實・海軍少将が1945年6月6日に海軍次官に宛てた電文が、資料として展示されていた。それを読んだ時、当時の沖縄戦線の悲惨な状況が脳裏に浮かび、二人とも涙を抑えることができなかった。「沖縄県民斯ク戦ヘリ」として知られた電文である。

「沖縄県民ノ実情ニ関シテハ県知事ヨリ報告セラルベキモ…」の書き出しで始まり、「…一木一草焦土ト化セン 糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」で終わる電文(旧海軍司令部壕資料館より:http://kaigungou.ocvb.or.jp/navy-headquarters/exhibition/)は、本当に心に沁みた。一緒に展示されていた悲惨な写真の影響もあったとは思う。しかし、死を決意した者(6月13日、拳銃にて自決)がここまで県民の事を思う懐の深さ、そして何より、何をさて置いても沖縄県民がどれ程の辛酸を舐め悲惨な状況に置かれているかを国に伝えなければ、という決死の覚悟が伝わる文面に心が揺さぶられたのだと思う。77年が経った今の沖縄は、大田司令官が願った沖縄になっているのだろうか。沖縄県民にとってこの電文が残されていることがせめてもの救い、と言えるのかもしれない。

そして、43年後の今年、同じ沖縄県を発信地として、もう一つ心に沁みる言葉が新たに加わった。6月23日の「沖縄慰霊の日」の沖縄全戦没者追悼式で読まれた「平和の詩」、徳元穂菜(ほのな)さん(小2)の『こわいをしって、へいわがわかった』である。当日は、追悼式典の様子を車のラジオで聴いていた。小2とは思えない程落ち着いたしっかりした口調で読まれた詩は、愚かな歴史を繰り返す世界の為政者に訴える、重い内容であった。

詩の原文は「沖縄県平和記念資料館」のホームページで読むことができるが、特に沁みたのは(http://www.peace-museum.okinawa.jp/annai/osirase/messe2022sokuhou.html)、最後の一節である。少し表現を変えれば「平和を掴みたい、掴んだら絶対に放さない」と語りかける小2の少女の言葉に、世界各国の為政者はどう応えてくれるのだろう。今ウクライナの戦況ニュースに映し出される子供たちの恐怖に怯える映像を観ると、徳元さんの詩が余計心に沁みる。子供たちに、こんな思いをさせては、絶対いけないのだ。

最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間6月28日17時の時点で、世界全体の感染者数は5億4450万人に迫り、亡くなった人は633万人を超えた(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。

(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/


【文責:知取気亭主人】


移植された栗の木(右近も左近も栗)
八重のドクダミ(ラッキードクダミ?)

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