2022年7月13日
7月8日の金曜日、安倍晋三・元首相が、奈良市内で行われていた参院選の応援演説中に銃で撃たれ、亡くなった。銃規制の厳しいこの日本で、白昼堂々と公衆の面前で、しかもその公衆の耳目を一身に集めていた人物が銃撃されるなど、平和ボケと言われるかもしれないがとても信じられない。安倍氏は、今もって国政に大きな影響力を持っていたし、国際的にも日本人として誰よりも知名度が高い政治家だったと思う。日本中に衝撃が走ったのは言うまでもない。また、国内ばかりでなく、国外からも彼の死を惜しむ弔辞が多数寄せられている。そして、海外メディアも、あまりに突然の訃報に驚きを持って伝えている。
犯行は衝撃的だったが、警察官の警備もあった中での凶行だっただけに、犯人はその場で取り押さえられ、逮捕された。凶器を持ったまま逃走、ということにならずホッとしている。報道によれば、逃走する様子も無かったという。となると気になるのは犯行動機であるが、その日のうちに「特定の宗教団体に恨みがあった」との情報が流れ、その後、「特定の宗教団体」とは「統一教会(改名して今は、世界平和統一家庭連合)」(https://ffwpu.jp/)である、と報じられた。特定宗教に絡んだ怨恨だったとは、ビックリだ。
ただ、心の拠り所である筈の宗教も、オウム真理教に見られるように、時として大きな間違いを起こすことがある。また、「それって極端じゃない」と思える教えもあるから、宗教絡みの怨恨があったとしても不思議ではない。今回の事件も、(正当化は一切しないが)犯人の動機に繋がる出来事が漏れ聞こえてくる。詳しい動機や背景、そして安倍氏と協会との関係については、今後の捜査やメディアの報道によって明らかになっていくだろう。そこはお任せするとして、今回の四方山話は、「宗教の功罪」と題して、心の拠り所である筈の宗教が、実は結構過激な教義の下に活動している場合があることについて触れてみたい。
宗教は、政治との結びつきが昔から強い。中学生の頃学んだインドを取り巻く独立紛争では、正に宗教の対立によるものだった、と教えられた。当時は、インドを挟んで東パキスタン(今のバングラディシュ)と西パキスタン(今のパキスタン)に分かれていた。両パキスタンにはイスラム教徒が、インドにはヒンドゥー教徒が多く、イギリスからの独立の際、これら異教徒間が激しく対立し、元々はインドの一部であった両パキスタンを分離して独立したのだという。また、今深刻な経済危機に陥り、「国家破産」の宣言が出されたスリランカ(昔のセイロン)も、イギリスから独立する際、仏教徒が圧倒的に多かった為、ヒンドゥー教徒のインドと袂を分かった、と教えられた記憶がある。恐らく、どちらも異教徒を受け入れない、或いは排斥する教義があったのだろう。
また、中東における国家間や民族間の紛争は、インド周辺と同じ様に異教徒間(イスラム教、キリスト教、ユダヤ教)の争いが根深い。しかも、同じ宗教なのに宗派の違いによる争いもあって、それが日本の仏教徒には信じられない程激しい。良く報道されるように、スンニ派とシーア派の対立は戦争の火種にもなっていて、「同じイスラム教なのに何故それ程までに?」と思わせるほど憎悪に満ちている。更に、中東やアフリカでは、それぞれの派の対立が激しく、反政府運動も頻発している。
また、反政府運動でよく耳にするのが、アルカイダやタリバーンに代表されるイスラム過激派だ。9.11米国同時多発テロ(2001年)を惹き起こしたのも、アフガニスタンで2019年12月に医師の中村哲さんが銃撃され死亡したのも、犯行はこうしたイスラム過激派組織だった。日本の仏教も多くの宗派に分かれているから、イスラム教の分派そのものは理解できるが、派閥間の対立の激しさは到底理解できるものではない。
そうした派閥間の対立の激しさは、キリスト教にもある。良く知られているのは、アイルランドにおけるプロテスタントとカトリック教徒の対立である。1970〜80年代には「北アイルランド紛争」と呼ばれる程、その対立は深刻化した。また、同じキリスト教には、「エホバの証人」の様に、「輸血を受けることができない」と信じる、過激な宗派もある。トランプ前大統領が表舞台に立っている時に良く名前を耳にしたのは、キリスト教原理主義(福音派)だった。世界を創造したのはキリストで進化論は間違いだなど、かなり過激な教えもあると聞く。イスラム教徒への憎悪もかなり激しいらしい。
こうして見ると、宗教の教義には、対立を煽るものや科学的に何ら根拠のない間違ったものも多々あることが分かる。心の拠り所を求め、またもっと切実で藁をもすがる思いで宗教にのめり込んだ筈なのに、その宗教によって周りが不幸になったり新たな悩みが増えたりすることが、たとえ深く信心していてもある。そうだとすれば、それは信ずるに値しない宗教である、と断じるべきだ。脱退や改宗をすべきである。ところが、深く信ずれば信ずるほどそれがなかなかできない。それこそが、宗教が生き続ける理由でもあり、功罪であるのかもしれない。
最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載しておく。日本時間7月12日17時の時点で、世界全体の感染者数は5億5652万人に迫り、亡くなった人は635万人を超えた(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:※1)。
(※1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)
ペチュニア
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【文責:知取気亭主人】
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