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知取気亭主人の四方山話
 

『嫌な予感』

 

2023年3月15日

今年もあの忌まわしい3月11日がやって来た。2011年3月11日、東北地方太平洋沿岸地域に未曽有の被害をもたらした東日本大震災(以下、3.11大震災)から、今年で早12年が経った。この12年の間に新型コロナウイルスによるパンデミックやロシアによる突然のウクライナ侵攻が勃発し、世間の耳目がこの3.11大震災から遠ざかった感は否めない。しかし、仏教の習わしで言えば、今年は区切りの法要が営まれる年回りとなり、13回忌に当たることになる。ただ、仏教の世界では一区切りであっても、震災で被災し家族を亡くした人にとっては、「これで一区切り」という訳にはいかない。残された人々にとっては、家族を亡くした深い心の傷と共に、12年経っても解決されない幾多の苦難が、まだ続いているからだ。

3月11日当日の新聞も含め、ここ数日の新聞は、3.11大震災関連の記事で溢れている。その中には、津波被害から逃れるためにやっと高台に移転したばかりなのに、2020年4月政府が公表した、東北から北海道南東沖の日本海溝・千島海溝周辺を震源とするM9級の巨大地震による津波の浸水想定によって、移転先も津波被害を受けることが分かった人たちがいる、と報じる記事もある。住む地域によっては他人事の人たちもいるだろうが、壊滅的な被害を受けた上に、12年経ってもいまだに翻弄され続ける人々の驚きと苦悩、そしてやり切れなさは、いかばかりかと思う。

安全だと思って移転したのに、その安全を担保するべき役場や消防署など、災害の際拠点となる施設も含まれている。「これでもう安心だ!」と胸を撫で下ろしていたのに、である。3月6日の読売新聞朝刊によれば、浸水リスクのあるそういった拠点施設は、3県で4割に上るというから深刻だ。更に、21年12月には前述した巨大地震による死者が最大19万9千人にも上るという最悪のシナリオも公表され、頭を抱えた人も数多くいたに違いない。被災した沿岸地域の人々の苦闘は、12年経っても終わりが見えないでいる。

終わりが見えないのは、地元で再建を目指す人ばかりでなく、今も避難生活を送る人たちもそうかもしれない。3月11日の北陸中日新聞朝刊によると、東京電力福島第一原発事故(以下、福島原発事故)などにより、3.11大震災関連で未だに避難生活を送る人たちは、全国で約3万1千人にも上るという。また、災害公営住宅での孤独死も後を絶たない、と同新聞で報じている。被災地の多くは元々高齢者が多かっただけに、12年という月日が重くのしかかってくる。3.11大震災以降地元を離れる人が多いのも悩みの種だ、とも報じられている。被災地の人々が受けた心の傷は、未だに癒えていない。

もう一つ、終わりが見えない、しかも誰も経験したことがない難題がある。福島原発事故の事故処理だ。今年の春から夏にかけて開始されるという汚染水の海洋放出、これによって溜まり続けていた汚染水は確かに減る。しかし、3月12日の北陸中日新聞によれば、この汚染水を浄化処理する過程で出る高濃度放射能汚染汚泥を入れる容器(HIC)の置き場も、今年の5月ごろに満杯になる可能性があるという。東電は新たな置き場を増設中だというが、綱渡りの状況であることは否めない。また、海洋放出によって受けるであろう近隣漁業関係者の風評被害も、計り知れない。百歩譲って、汚染水に係わる難題が解決出来たとしても、実は、最難関のデブリを取り出さない限り、廃炉の道筋も見えて来ないのだ。

『新潟 知っておきたい原子力 福島第一原発廃炉の現状と課題』と題する、NHK新潟放送局の「にいがたWEBリポート」( https://www.nhk.or.jp/niigata/lreport/article/002/55/)では、推定880トンに及ぶデブリの取り出しに着手できないままでいる、と報じられている。また、廃炉に伴って発生する、建屋や格納容器などを始めとする敷地内の大量の放射性廃棄物の処理も難題で、その方法によっては、廃炉を終えたとしても、敷地を再利用できるようになるまでに100年から300年の期間が必要になる、という試算もあるとしている。いずれにしても、12年経った今でも、廃炉への端緒さえ示されていない。そうしたあれやこれやを考えると、残念ながら、被災地の苦難には終わりが見えないと言わざるを得ない。

ところが、この様に未だに苦難が続き、終わりが見えない中だと言うのに、早くも次の巨大地震の切迫性が高まって来ているのではないか、と思わせる出来事が相次いでいて、嫌な予感がしている。先に述べた日本海溝・千島海溝周辺を震源とするM9級の巨大地震の新たな発表もそうだし、2月6日に発生したトルコ南部からシリアにかけて発生し5万1千人を超す死者を出した地震も、日本から遥かに離れているものの、その被害の様子を見るにつけ“明日は我が身”と不安になって来る。また、能登半島の先端で数年前から続いている群発地震も、原因が特定されていないだけに不気味だ。NHK総合テレビで放映されたドラマ「南海トラフ巨大地震」で訴えていた、南海トラフの東西の領域で別々に巨大地震が発生する"半割れ"と呼ばれる連鎖地震の脅威もある。しかし、半割れであってもなくても、南海トラフのその時は確実に刻一刻と近づいている。嫌な予感は、いずれ現実になる…。

最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による感染状況の集計結果を記載するが、同大学は3月10日にデータ更新を終了した。同日14時の最終統計では、世界全体の感染者数は6億7657万人を、亡くなった人は688万人を超えた(NHK 特設サイト 新型コロナウイルス:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/


【文責:知取気亭主人】


沈丁花
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