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知取気亭主人の四方山話
 

『初めてのタクシー』

 

2023年4月12日

今年も大リーグ野球が始まった。日本のプロ野球もほぼ同時に開幕したが、世界の一流どころが集まり競い合っている大リーグには、レベルの高さや話題性という点でどうしても負ける。そんな大リーグの中でチームの主力として頑張っている日本人選手も結構いて、これからの報道に一喜一憂することになる。また、今年から大リーガーとなった選手も何人かいて、彼らの実力がどこまで通じるか、期待も膨らんでいる。中でも千賀選手は、既に2勝を挙げ、持ち球の「お化けフォーク」が話題になるなど、大活躍を予感させている。

加えて、まだ始まったばかりではあるが、大谷選手も過去2シーズン同様大活躍してくれそうで、ワクワクしている。4月10日現在、投打ともに好調で、投げては2度先発して1勝0敗(防御率は0.75)、打っては3本のホームランを記録している。このまま好調を維持し、三年連続でMVP争いを演じてくれるのではないか、と期待は膨らむばかりだ。ただ、心配事が無い訳ではない。今シーズンから導入された新たなルールに暫く翻弄されるのではないか、と心配しているのだ。

投球間の時間制限「ピッチクロック」だ。今シーズン2戦目の登板となった5日のマリナーズ戦で、早速洗礼を受けた。投手としては、1回の1死2塁の場面で、バッターが準備を整える前に投球動作に入る違反を犯したとして1ボールを取られ、また打者としては、6回の打席で、残り8秒までに準備を整えなかったとして1ストライクを取られてしまった。どうやら、投打両方で違反を犯した最初の選手になったらしい。

大谷選手ほどのトップアスリートでも“初めての経験”には戸惑うことがある、と分かり何だかホッとしているが、後で審判との間でルールの確認をしていたところを見ると、裁定する側の審判も同様らしい。彼らに見られる通り、初めての経験というのは、どんなに経験を積んだ人でも、戸惑いドギマギするものらしい。ところがつい先日、そんな初めての経験を、中学生になったばかりの孫娘(以下、孫娘)にさせてしまった。

4月8日の土曜日、学童に通っている孫息子を迎えに行った。お迎えの門限(17時)に間に合うには、15分ほど前までに家を出発しなければいけないのだが、買い物に出かけた奥さんがなかなか戻ってこない。しびれを切らして玄関を出ると、丁度そこに帰って来た。買い物袋を家に入れるのを手伝い、会話もそこそこに車に飛び乗り、出発させた。時計を気にしながら走らせること約15分、何とかギリギリセーフで間に合った。ヤレヤレだ。駐車場に入り、いつもの通り車を止めると直ぐにエンジンを切った。

学童の玄関で、今日やったことや孫息子の様子を説明してもらい、忘れ物の傘を受け取って、車に乗り込んだ。シートベルトを確認して、『さぁ。出発するぞ!』と声を掛け、エンジンキーを回した。ところが、最後まで回りきらず、途中で止まってしまう。ハンドルの回し具合が悪いと同じ様な症状になることを経験したことがあって、ハンドルを強制的に動かしてキーを回してみる。しかし、やっぱりだめだ。「何でだろう?」と考え始めて、とんでもない失敗に気が付いた。車のキーを持たずに走らせて来てしまったのだ。これではエンジンが掛かる筈がない。

奥さんが帰って来た時、僕が外に出て待っていたこともあって、エンジンを掛けたまま停車させた。二人とも慌てていたため、まるで自分が運転して来たかのように、そのまま何も考えずに乗ってしまったのだ。1台の車を二人で使っているのだが、いつも僕が使うキーと奥さんが使うキーは違う。だから、言い訳めいたことを言えば、キーを引き継ぐことが滅多にないことも災いして、キーの受け渡しなど意識の外だったのだ。しかも、キーがなくてもエンジンが掛かっていればそのまま走行できる車だったことも、失態の元凶だ。

そんな原因のあれやこれやを考える暇があったらこの窮地を何とか脱しなければいけない、ということに気付き、錆びついた頭を何とか回し、奥さんに電話を入れた。孫娘にキーを持ってきてもらうことにしたのだ。困り果てている状況を説明すると、スマホの向こうで笑い声が聞こえる。こちらも合わせ笑いをしながら、『タクシーを呼んで、○○ちゃんにキーを持ってこさせて』と、もう懇願だ。二人とも学童の場所を運転手に説明できないということで、学童近くにある店を目指してくるように教えて、電話を切った。

帰れる目途が付いたところで、学童の先生に事の次第を説明して、しばし車を留め置くことの許しを得た。車に戻ると、ポツリポツリと雨が降り出した。嫌な流れだ。待っている間に、孫息子にキーを忘れて車を動かせないことを説明すると、『大変だ!』と面白がっている。二人でそんなやり取りをすること約15分、孫娘が乗ったタクシーがやっと着いた。運賃を払おうとすると、運転手が『大変ですね!』と笑っている。自分でもそう思っていて、つられて笑えてしまう。

一方、タクシーから降りた孫娘は、少し緊張している様に見える。やはり、一人で乗る“初めてのタクシー”ということで、ドキドキしていたのだろう。そんな緊張から解き放たれたらしく、車に乗り込んだ途端に、姉弟二人で僕をからかい大はしゃぎしている。その大はしゃぎの様子を聴いていて、こちらも愉快になって来た。もう笑い飛ばすしかない!


【文責:知取気亭主人】


帰り道で孫娘が見つけた見事な虹
帰り道で孫娘が見つけた見事な虹

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