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知取気亭主人の四方山話
 

『誕生日プレゼント』

 

2023年5月24日

太平洋戦争終戦直後の混乱期に生まれ育った我々世代の幼少期にはトンと縁が無かった、誕生日を祝う習慣、あれから半世紀以上たった今では、驚くほど様変わりし、何らかの形で祝っている家庭が多いと思う。貧しく発展途上だった当時に比べると、世の中全体が豊かになったということに加え、テレビの普及によって欧米流の生活様式が浸透していったのも大きかったのだろう。随分前から、テレビドラマなどでは、誕生日を祝うシーンが普通に見られる様になっている。また、幼稚園や保育園などで「お誕生会」が恒例になってきたことも、家庭に浸透していった大きな要因の一つだと思う。

我が家も例に漏れずで、子供が誕生してからというもの、毎年6人分の誕生会を楽しんで来た。子供が成人して家を離れてから暫くは夫婦2人だけでやっていたのだが、長男家族と一緒に暮らすようになってからは、家族が増えた分だけ誕生会も増え、数えてみると、何と今では2カ月に1回開いている勘定になる。それでも、3人まとめてやっている月もあるから、まだ実人数よりは少ない回数だ。ただ、誕生会と言っても、ドラマの様に友達を呼んで盛大にやる、という様な派手な事はしない。時に外孫たちが加わることもあるが、いつもは、家族だけのささやかな誕生会だ。

ただ、ささやかだとは言っても、孫たちにとっては、楽しみな一大イベントだ。雰囲気を盛り上げようと、部屋の飾りつけも、自分たちで考え毎回せっせと作っている。そして、ローソクを立てるケーキも、多少は大人の手を借りている様だが、少し前から上の孫娘が作ってくれている。手作り感満載の誕生会だ。そして、感心するのは、誕生日を迎えた家族に忘れずプレゼントをしていることだ。何せ大学生になって初めて誕生日プレゼントなる物をもらった身としては、どんな物であれ、相手の思いが伝わってきてとっても幸せな気分になる。お金を自由に使えない幼児や小児からの、手作りプレゼントとなれば、尚更だ。

4月は僕の誕生会を開いてくれるのだが、毎年孫たちから贈られるのは、その手作りのプレゼントだ。彼らの成長に合わせて贈られる物も変わるのだが、折り紙だったり、メッセージ入りの似顔絵だったり、厚紙や段ボールで作った宝箱などの工作だったり、どれもこれも唯一無二のプレゼントになっている。もらう度に、「よくこんなことを考えたな!」と、ほとほと感心する。作ること自体も楽しんでいるのだろうが、「大好きな家族にありがとう!」を伝えたい、という熱い思いが伝わってくるプレゼントばかりだ。良い子に育ってくれたものである。また、口に出して言ってはいないが、上手く育ててくれたものだ、と息子夫婦には感心している。その息子を育てた我々夫婦も、…だよな!

と、そんな冗談はさて置いて、先日、今年3回目となる末の孫娘(小学2年、以後Y)の誕生会をやった。皆からのプレゼントに続き、ひと月ほど前から準備していた、僕からのプレゼントも手渡した。これまでと違う、思ってもみなかった姿のプレゼントに、本人ばかりでなく、周りも驚いていた。やったー、である。これまでは、老夫婦一緒に、絵本や折り紙などを買い求めてプレゼントとしていたのだが、今回は初めて一人で手作りに挑戦してみた。手作りしたのは、「Yのずかん」と手書きしたA4サイズの紙製ファイルである。

少し前から僕は、寝付く前に、この四方山話に何を書こうか考える様にしている。そうすると、意外とアイデアが浮かんでくるのだ。今回もその口だ。「Yの誕生日も大きな出来事だな」が思い浮かんだ時、図鑑作りが閃いた。Yは、学童からの帰り道で道端に生えている花を見つける度に、僕のスマホを借りて写真を撮って来た。そして、『これ何の花?』と訊く。その後に、必ず『食べられる?』と続ける。どうやら食用になる植物に興味があるらしい。そう聞かれる度にスマホの機能を使って花の名前を調べていたのだが、今の季節は次々と色々な種類の花が咲くこともあって、写真が徐々に増え続けている。それをどうしたものかと思案していたのだが、或る書式に統一してまとめれば立派な図鑑になる、と閃いたのだ。

思い立ったが吉日とばかり、早速図鑑作りに取り組んだ。ひと月ほど前の事だ。まず、図鑑の書式に頭を悩ました。使用するソフトはWord、写真は必ず載せることにし、記載する項目は、思い悩んだ末に、次の様に決めた。

@植物の名前、 A写真を撮った日、 B写した人(僕の場合もあるから)、 C場所

D観察(見た目や色、大きさ、ニオイなど)、 E分かった事(原産国、食べられるか、毒はあるか、毎年咲くか など)などだ。

また、どの漢字迄習っているのか知らないこともあるが、どうせだったら漢字の勉強も合わせてできればいいかなとも考え、調べたそのままの漢字を使い、後ろに読み仮名を付けることにした。こうして図鑑としての体裁を整えていくと、大人にとっても新たな発見があって、実に面白い。歳は取っても知らない事ばかりだな、を痛感させられる。

例えば下の写真の「オオベニウツギ」、この仲間のウツギ(空木)の花が、唱歌『夏は来ぬ』(作詞/佐佐木信綱、作曲/小山作之助)の中で「♪卯の花の匂う垣根に…」と詠われた「卯の花」だったとは、全く知らなかった。そして、旧暦4月を「卯月」と呼ぶのは、その卯の花が咲く月というところから、というのだ。へ―そうなんだ、と納得した次第である。三浦しをん氏の辞書作りを扱った小説『船を編む』ではないが、図鑑作りというのもなかなか面白いものである。「Yのずかん」は、いくらでも中身を増やせる様に、そして何年も作り続けることができる様にしてある。Yも長く楽しんでくれるといいのだが…。


【文責:知取気亭主人】


オオベニウツギ(撮影者:Y)
オオベニウツギ(撮影者:Y)

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