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知取気亭主人の四方山話
 

『昔の人は立派!』

 

2023年6月7日

6月2日金曜日から4日の日曜日にかけて、「第72回金沢百万石まつり」が行われた。新型コロナウイルスの影響で2020年、2021年と2年続けて中止となっていたが、再開した昨年に続いて今年も何とか無事行われ、5月5日にWHOがパンデミック宣言の終焉を宣言したのと相まって、やっといつもの日常が戻って来たのだな、との思いが強い。梅雨前のこの時期の金沢には、欠かせない一大イベントだからだ。その一大イベントの最大の見所は、何と言っても、中日の土曜日に行われる百万石行列だ。これを目当てに、市民や観光客などの見物客が、どっと繰り出すことになる。

百万石行列は、加賀藩の礎を築いた前田利家の金沢城(当時は尾山城と言われていた)入城(天正11年:1583年)を偲んで開催されている。したがって、基本的には軍事パレードの意味合いが濃いものだが、色々な小さな行列が幾つも集まって、大きな百万石行列となっている。先頭の方には、マーチングバンドやバトントワリングなどの行列もある。また、“加賀とび”や“獅子舞”など滅多に見られない伝統的な行列も続く。詳しくは、金沢百万石まつりの公式サイトの「金沢百万石まつりとは」(http://100mangoku.net/about.html)をご覧になっていただければと思う。

しかし幾多の行列が組み込まれている中でも、見物客最大のお目当ては、2002年のNHKテレビの大河ドラマ「利家とまつ 〜加賀百万石物語〜」のタイトルにもなっている様に、やはり前田利家と奥方のお松の方の二人、ということになるだろう。しかも、近年は当代で人気のある芸能人が夫々の役をやることになっていて、注目度は高い。今年は、前田利家公役が歌舞伎俳優の市川右團次さん、そしてお松の方役は、女優の紺野まひるさんだった。当方は、祭と名の付くものは大好きではあるものの、「百万石まつり」は自分が参加できる祭りではないこともあって、二人のキャストにそんなにも興味はなかった。しかし、たまたま見たテレビに映し出された、出立式での市川右團次さんの『皆の者、出立じゃ〜、エイエイオ〜!』の掛け声には、チョット痺れてしまった。

行列の一部始終は、いつの頃からか、地元のテレビ局で中継される様になった。右團次さんの掛け声は、そのテレビを観ていて聞いたのだが、ほんの少し見栄を切って発するその姿は、440年前の利家公もこんな風に凛々しかったのだろうな、と思わせるほどであった。先の公式サイトによれば、利家は天文7年(1538年)の生まれだったというから、45歳の時に入城したことになる。演じた右團次さんは1963年生まれとあるから、凡そ15歳の差はあるが劇的に伸びた平均寿命の事を考えれば、背格好は別にしても、醸し出す雰囲気は大体こんな感じだったのだろうな、と勝手に思っている。

その利家、テレビ局中継で解説していた歴史学者の先生によれば、まつとの間に2男9女をもうけたというから凄い。なお、先の公式サイトでは“2男8女”とあって、どちらが正しいかは知る由もないが、いずれにしても子だくさんであったことは間違いないらしい。一国一城の主として、「国の安泰の為には子供はたくさんいた方が良い」というのは、封建時代の当然の考え方だとは理解できるが、そうだとしても凄い。利家もさることながら、衛生観念も医術も未発達の時代に、これだけ多くの子どもを儲けることができたまつは、肉体的にも精神的にも余程丈夫だったのだろうと思う。また、利家と手を携えて騒乱の時代を乗り越えていった、とも言える。利家の死後、前田家を守るために江戸幕府に自ら人質となった事をもってしても、気丈なしっかり者であったことが窺える。

それにしても、この10人を超える子供の数、2日に厚生労働省が発表した、女性一人が生涯に産む子供の推定人数「合計特殊出生率」が1.26(2005年と並び過去最低)の低さだった事を考えると、何とも凄まじく、また羨ましくも思えてくる。「合計特殊出生率」に照らし合わせると、まつのそれは10を超え、夢の様な数値になるのだ。勿論、乳母など子育てを手助けしてくれる家来衆がいたからこそできた子だくさんであったことは想像に難くはないが、少子化に悩む行政関係者が聞いたら、『知恵を授けて欲しい!』と願い出るかもしれない。それ程、羨ましい子供の数だ。

ところで、利家が活躍した当時の日本の人口は、ウィキペディアの「近代以前の日本の人口統計」によると、研究者によってさまざまな数値が推定されているが、1,200〜2,200万人だったとされている。その中間を取ったのか、「Honkawa Data Tribune」というサイトの「社会実情データ図録」(https://honkawa2.sakura.ne.jp/1150.html)では、利家が没した直後の1600年の推定人口を1,700万人としている。この数値を用いれば、今の約1/7しかいないことになる。1/7しかいないのに、まつの出生数は逆に1.26の約8倍にもなる。当時はまつばかりでなく子だくさんの家庭が多かったのだろう、上記の図録ではその後の急激な人口増の急カーブを描いている。こうしたことを見て「昔の人は立派!」と思うだけでは、今の日本の少子化問題は解決できない。恐らく、今の時代とは違う、家というものに対する考え方や、小さな子供がいる家族を支える人のつながりや仕組みがあったのだろう。そうした当時の状況や背景を紐解き、今に応用することで、8倍は無理にしても2倍近くの出生数にならないものだろうか。

百万石行列のテレビを観ながら、ふとそう思った次第である。


【文責:知取気亭主人】


バラ(ロサ・ルビギノーサ)(撮影者:Y)
バラ(ロサ・ルビギノーサ)(撮影者:Y)

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