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知取気亭主人の四方山話
 

『縁を大切に』

 

2023年6月28日

先週の週末に報じられた、とあるニュースに、ビックリしてしまった。昨年(2022年)一年間に全国の警察に届け出のあった行方不明者が、実に8万4910人もいたというのだ。前年(2021年)より5692人増えているという。年代別に見ると、20代が最も多くて1万6848人、次が10代の1万4959人、そして80代以上の1万3749人と続いている。3番目に多い80代以上の多くは、認知症を発症していたりその疑いがあったりしているらしい。
(「TBS NEWS DIG Powered by JNN」:https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/556528?display=1

届け出の中で、認知症関連の行方不明者は1万8709人もいて、10年前の9607人からほぼ倍増しているという。年代別の内訳では、60代が938人、70代が6938人、80代以上が1万670人となっていて約8割が認知症を患っていることになる。また、男女別では男性が1万314人、女性が8395人となっていて、男性の方が2割ほど多く、どうやら男性の方が認知症発祥のリスクは高い、ということになりそうである。

ただ、認知症起因の行方不明者は、届け出を受理した当日に77.5%が、1週間以内になると実に99.6%が発見されているという。恐らく、同居している家族がいたり、お世話をしてくれる人がいたり、気にしてくれている隣人がいたりして、居なくなった事に早く気が付いてくれるのだと思う。必然的に、捜索初動も早くなる。また、認知症を患っている人の場合、傍から見ると違和感を覚える行動や服装が多く、それに気付いた第三者が保護してくれる場合も多いのだろう。お年寄りは縁が濃いことを裏付けている。

認知症発症リスクの高い高齢者は、これから増えるばかりである。我々団塊の世代が全員後期高齢者となる2024年を揶揄して、他の国家的課題と同様に「2024年問題」と言われて久しいが、認知症の行方不明者も増加の一途を辿るであろうことは、容易に想像がつく。ただ、ここに来て、認知症を患っている人たちについて明るい兆しも出てきた。日米の医薬品メーカーが開発した、認知症の6〜7割を占めると言われるアルツハイマー症の治療薬が、7月に米国で認可される見込みだというのだ。勿論“効果があれば”の話だが、認知症起因の行方不明者が激減する可能性も出てきた。一日も早い日本での承認を期待したい。

しかしその一方で、行方不明者の4割を占める10代と20代(合わせて3万1807人)を筆頭に、認知症起因以外の行方不明者が実に6.6万人もいて、その解決策は模索状態なのだろう、聞いたことがない。むしろ、この事の方が気になる。しかも、若い世代がダントツに多い、というのも衝撃的だ。老い先短い僕らと違って、先の長い若者には、夢も希望も、また大志もある筈なのに、行方不明者となってしまう若者がこんなにも多い。他人との係わりが希薄なのだと思う。これが、我が国の、自慢できない実態である。

しかし、7万にも迫ろうという行方不明者の原因は、一体どこにあるのだろう。中には、現状から忌避するために、自分の意思で敢えて行方不明になった人もいるだろう。いわゆる、家出だ。特に、9歳以下の子供に限ってみると、ここ数年1000人ほどが届けられているそうだが、その多くは迷子と家出だという。その多くは、認知症起因と同様に比較的早く発見されるそうだが、中には誘拐にあったり、事件や事故に巻き込まれたりした報道に、多くの国民が胸を痛めることもある。

もう少し大きくなって、20代や30代になると、DVやストーカー被害から逃れるために、移転先を届けられず、やむを得ず行方不明になっている場合も出てくるだろう。また、年代を問わず、不運にも事件や事故に巻き込まれてしまった人もいるだろう。こうした7万にも迫ろうという行方不明者のどれくらいの人が、無事発見されたのだろう。後で引用した日本経済新聞記事にあるように、大半の人は生存して発見されているらしい。ところがその一方で、同記事の様に「身元不明の死者が近年増え続けている」という報道もあって、「行方不明者の末路か!」と思えてしまい、胸が締め付けられる。

この「身元不明の死者が…」の報道は最近知ったのだが、先に触れた(2019年2月3日掲載)日本経済新聞の「身元不明、全国2万体と向き合う捜査員たち ドキュメント日本」によると(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40841980T00C19A2CC1000/)、凡そ4年前の時点だが、身元不明の遺体は全国で2万体に上り年々その数は積み上がっている、とある。また、同記事には、「2017年に届けが出された行方不明者の総数は8万4850人」とあって、冒頭で記した2022年とほとんど同じ数だ。その中で、「過去に届け出されていた人も含めて」となるが、2017年中に行方が分かった人は8万1946人に上るというから、意外と多い。ただ、差し引くと、2017年に出された人だけだとしても3000人以上が残っていることになり、実際にはもっと多く、毎年数千人規模で、行方不明のまま積み上がっていく計算になる。恐ろしい事だ。年々身元不明遺体が増えていくのも頷ける。

こうした、行方不明も、身元不明も、“希薄になった縁”が元にある、と思っている。しかし、人と人との係わり、俗に言う「縁」は、いつの間にこんなに希薄になってしまったのだろう。昔の日本はもっと濃かった筈なのに。時には煩わしさを感じる事もあるかもしれないが、“人との縁”は大切にしたいものである。


【文責:知取気亭主人】


グリーンカーテンのゴーヤ
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