2023年7月26日
我が家の孫たちにとっても夏休み初日となった7月21日、福岡県宮若市を流れる犬鳴川で、小学6年生の女児3人が流され死亡するという痛ましい事故が発生した。夏休みに入ると水の事故が増えるのは毎年の事だが、今回のように子供が亡くなったというニュースを聞くと、何とも居たたまれない。同じような年ごろの孫を持つ身としては、かける言葉も見当たらない。
6年生と言えば、少し手を離れ少しずつ独り立ちの段階に入っていく年ごろで、「やっとこれから…」という矢先だったのに、とさぞかし口惜しいだろうと思う。親にとってはこれまでと違う楽しみが増えていく時期だし、また本人にとっても、色々な事にチャレンジできる青春の入り口に差し掛かったところだ。3人ともに11歳。これから夢も希望も、そして楽しみも一杯という年代なのに…。それを思うと、本当に切ない。
22日の北陸中日新聞朝刊によれば、悲劇があったのは、一級河川遠賀川の支流犬鳴川に、更にその支流の山口川が合流する地点だ。遠賀川を管理する国土交通省遠賀川河川事務所の情報として、事故があった付近の川幅は約10m、水深は平均1.3mで、当日は通常の水位だったという。新聞記事に掲載されている現場付近の写真を見る限りにおいても、そんなに大きな川ではない。ただ、付近には深みもあったらしい。しかも、水着ではなく、普段着で遊んでいて流されたというから、泳ぎにくかったのだろうと思う。
冒頭にも書いた様に、こうした水の事故は、夏休みに入るとどうしても増える。子供ばかりで遊ぶ機会が増える上に、日本の夏は水で体を冷やしたくなるほど蒸し暑いからだ。その水の事故の中でも、子供に限ると河川におけるものが最多だという。遊ぶのに適しているかどうかは別にして、また蓋をされていたり水辺に下りたりすることが不可能な川の多い大都会は別にして、太古の昔から人は水の得やすい所に住んで来たことからも分かる様に、人にとって川というのは至って身近な存在である。その上、小学校や中学校では、環境を学んだり、水生生物の学習をしたり、或いは河川環境の改善や保護活動をしたりする対象として地域の身近な河川を選ぶことが多く、馴染み深い。
そう考えると、夏休みに入り、解き放たれた子供たちが遊び場として身近な川に涼を求めに行くのは、凄く良く分かる。僕も全くその通りだったからだ。ただ、半世紀以上も前と今とでは、大きく違うところがある。僕の経験と、また今の時代との違いも踏まえ、どうしたら川遊びでの痛ましい事故を減らせるか、僕なりに考えてみた。本来、川遊びは楽しい筈のものだ。また、子供の頃の遊びを通じて、川の楽しさや豊かさ、水の有難さや怖さを学ぶ貴重な場でもあり、防災に通じる知識を得られる場でもある。したがって、危ないからと言って川での遊びを全く禁止してしまうというのは、何とも勿体ない気がしているのだ。
僕が子どもの頃は、夏休みになれば、川遊びをするのが当たり前だった。ただ、今と大きく違うのは、僕が子どもの頃は同級生だけで遊ぶというのが少なくて、小1〜小6ぐらいがごちゃ混ぜになって遊ぶことが多かったことだ。“ほったらかし”という言い方もできるが、遊んでいる時に大人は殆ど居なかった。しかし、遊び仲間の年長者は、あれやこれやと世話を焼き、年少者に万が一の事がない様にしてくれたものだ。それは代々伝えられていて、お蔭で、危険な場所など殆どの子どもは知っていた。だからだろう、(運が良かっただけなのかもしれないが)何事もなく今日に至っている。
また、しょっちゅう川遊びをしていたことで、命を守る知識が自然と身に付いたのも大きいと思う。山深い川の水は冷たいこと、唇が紫になったら上ること、渕と呼ばれる深みがあること、流れに逆らって泳ぐことはできないこと、膝以上の深さでは歩くのが困難であること、更には遊んでいる場所は大丈夫でも上流の山に黒い雲がかかるといずれ水かさが増すことなど、多くの危険予知力を得た。実体験を積んでいればこそだ。こうした危険予知力は、大人になってからの防災行動にも大いに役に立つ。逆にそうした実体験が乏しいまま大人になると、「気がついたら水かさが増して、中州に取り残された」などということになりかねない。川遊びが大好きだった僕からすると、今の子どもたちは川遊びの経験が決定的に少ないと思う。極端な意見かもしれないが、それが川での水の事故が多い一番の理由ではないだろうか。
では、どうしたら川遊びの経験を増やしてやれるのだろう。それには、大人たちの視点を変える必要がある、と考えている。「危ないから禁止する」という短絡的な視点ではなく、「どうやったら楽しく安全に遊べるか」の視点が必要なのだと思う。大人でも水に入りたくなるこの暑い夏、そんな中で、大人を頼らずとも行ける近くの川は、子供達にとって格好の遊び場となることは至極当然の事だ。だとしたら、“ダメ”ではなく、“この約束を守ったら遊んで良いよ”としてやることが、安全にも安心にも繋がるのだと思う。それには、大人が子供と一緒に川遊びを楽しみ地域の河川に関心を示すこと、そして川について良く知ることが最低限必要だ。そうすれば、危険な場所なども分かるし、川についてのイロハを子供に教えることも出来る。要は、大人が子どもと一緒に遊ぶことだと思う。如何だろう。
下の2枚の写真は、我が家の近くを流れる浅野川である。確か、子供達が通っていた小学校では、子供が流された事故があって、川遊び禁止になっていたと記憶している。今でも御覧の通り、遊んでいる子供は殆ど見掛けない。アユ釣りの釣り人がいるくらいだから魚がいない訳ではない。でも、魚とりを楽しむ子供の姿は見たことがない。大人がいれば小学生でも安心して遊べる水深なのに、そして格好の遊び場&体験学習の場だと思うのだが…。
【文責:知取気亭主人】
P-1(浅野川:若松橋上流側)
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P-2(浅野川:若松橋下流側) |
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