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知取気亭主人の四方山話
 

『ひょんなことで知った、ちょっと好い話』

 

2023年9月13日

9月に入った途端、「今年の8月は世界的に異常気象だった」との文字が新聞に踊り、「どこそこでは〇.〇℃高かった」などと、驚きの数値も示されている。外での作業で今年の猛暑を体感した身としては、「これだけ暑かったらそうだっただろうな!」と、素直にそう思う。ここ金沢でも実際にどれ程高かったのか、気象庁に蓄積・公開されているデータを使い、話題の8月について、平年値と今年(2023年)の観測値を比べてみた。それが、以下に示した「表-1 金沢の8月気象データの比較」だ。

表-1 金沢の8月気象データの比較

合計降水量
(mm)
平均気温(℃) 湿 度
(%)
日平均気温 日最高気温 日最低気温
平年値(※1) 179.3 27.3 31.3 24.1 72
今年の平均値 40 30.5 34.8 27.0 67

※1 平年値:1990〜2020年の30年間の平均値

気象庁の「各種データ・資料」 (https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/ ) より作成

今年の金沢は、平年に比べて日平均気温で3.2℃、日最高気温だと3.5℃も、日最低気温にしても2.9度も高かったことが分かる。暑い筈である。体温に置き換えれば、36.5℃の平熱が40℃近くの高熱になったことになり、体力のある健康な若者にとっても解熱剤などを服用しなければならないほどの、生き死にに係わる大変な問題だったことが明らかだ。ましてや、体力の劣る子供や高齢者にとっては、危険な暑さだったと言って良い。

そして、高温と共に深刻だったのが降水量の少なさだ。8月ひと月の降水量は(表-1では合計降水量と表記)、平年の179.3mmに比べ、今年は僅か40mmと4分の1にも満たない。この四方山話でも朝晩の水遣りのことを何度か口説いたこともあるが、8月に入り石川県最大の水ガメである手取川ダムの貯水位は低下の一途を辿り、9月7日のニュースでは、貯水率が25%となり農業用の節水が呼びかけられている、と報じられている。お隣の富山県や新潟県からも少雨のニュースが聞こえていたが、総じて北陸は少雨の8月だった、と言える。それに伴ってなのだろう、金沢における湿度も、平年値に比べ5ポイント低くなっている(表-1参照)。乾燥地域と比べれば、低くなったとは言えまだまだ高い状況ではあるのだが、北陸も少しずつ乾燥化への道を辿り始めているのだろうか。

こうした猛暑と乾燥は、世界的な傾向だと報じられている。その結果として、世界各地に大規模な森林火災をもたらしている。ギリシャ、スペイン、カナダ、ハワイ・マウイ島など、今年「大規模な森林火災が発生している」とニュースで報じられた地域は、枚挙にいとまがない。南米ペルーにある世界遺産マチュピチュの近くで森林火災が発生し、少なくとも6日間燃え続けたというニュースも、記憶に新しい。また、洋上の小さな島で乾燥とは縁の無いと思われたハワイ・マウイ島での火災も、こんなにも燃え続けるものかと驚かされた。そして、人々が逃げ惑うニュース映像はパニック映画さながらで、大規模火災に対する人間の非力さに少なからず衝撃を受けた。

確かに、森林火災はパニック映画のテーマにもなる位で、その消火作業は手強い。一旦燃え広がってしまうと尚更で、鎮火はなかなか難しい。建物火災と違って人力では手が負えないほど面積が広い事、燃える材料が至る所にあって飛び火しやすい事、見た目では消火できたと思っていても積もった腐葉土や泥炭層がくすぶり続ける事などに加え、今年の様な暑く乾燥した気候が、鎮火を長引かせてしまう原因らしい。くすぶっていた腐葉土や泥炭から再び火の手が上がり、燃え広がる危険性も極めて高いという。ニュース映像で流れる消火活動の様子は、くすぶり続ける火種を根絶する難しさを物語っている。

ただ、人間も手をこまねいて来た訳ではない。より効率の良い消火剤を開発してきた。泡消火剤だ。火種を包み込んでしまうのが効果的らしい。水も少なくて済むという利点もある。ただこの泡消火剤、合成界面活性剤と呼ばれる化学物質が含まれている為、消火後にも土壌に残留し、土壌環境や動植物に悪影響を及ぼすことが懸念されていたという。そんな中、北九州市の消防局と日本の石けんメーカーが、環境に優しい泡消火剤を開発した。天然成分だけを使った「石けん泡消火剤」だ。「合成界面活性剤に比べ環境に悪影響を及ぼさないのが良い」との評価を得て、森林火災や泥炭火災が深刻な東南アジアで注目されているというのだ。消火効果を落とさずに環境にも優しい、という優れモノだ。

くだんの情報は、森林火災を調べていてたまたま環境省のホームページで見つけた、「世界初! 環境にやさしい石けん系消火剤でインドネシアの森林を守る」と題する記事からだが、

https://www.env.go.jp/policy/kihon_keikaku/goodlifeaward/report201905-syabondama.html

世界で頻発する森林火災に日本の技術で貢献できると知って、なんだか嬉しくなってしまった。しかも、SDGsの考え方にピタリとはまる商品だ。と同時に、日常的に使っている合成食器用洗剤でさえ、「流水では5秒以上すすぐように」との注意事項が書かれているのを考えると、自然由来の材料で作られた「石けん泡消火剤」の環境負荷の低さは、もっと話題になっても良いのではないかと思う。因みに、上記サイトには洗顔や台所用などの無添加製品が写真で紹介されているので、環境や健康に関心のある方には一瞥をお勧めする。


【文責:知取気亭主人】


千日紅
千日紅

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