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知取気亭主人の四方山話
 

『ジャーナリスト』

 

2023年10月11日

ジャーナリスト(journalist)、凄く響きの良い言葉だ。この言葉を聞くと、何となくだが、ペン一本で権力に立ち向かっていく正義感の強い人、そして「力は無いけど庶民の強い味方」という凄く良いイメージを持ってしまう。また、社名入りの腕章を巻いてさえいれば、一般人では接触できないような要人にも会えて事件の現場にも行ける特権を与えられた人、というへそ曲がり的な見方も出来る。いずれにしても、そうしたイメージもあってか、高校や大学の同窓生には、この職業に憧れ、実際目指していた知り合いも結構いた。僕自身は憧れてはいなかったが、子供の頃にテレビで放映されていた『事件記者』という人気番組があって、悪事や真実を暴いていくその姿に、正義の味方を重ねて観ていた記憶はある。ジャーナリストを目指していた彼らは、ひょっとしたら、その番組中の記者の姿に魅了されていたのかもしれない。

ただ、手元にある『広辞苑第四版』(新島出編 岩波書店 1991)を紐解くと、ジャーナリストとは「新聞・出版・放送などの編集者・記者・寄稿者などの総称」と説明されていて、新聞記者ばかりが対象でないことが分かる。要するに、政治や社会、或いは国際関係など、国民生活に係わる情報を取り扱い、広く発信していく人たちのことを指している、と理解すれば良さそうである。そう考えると、都合の良い所だけを切り取り偏った考え方で情報発信したり、恣意的に間違った情報を流したりすると、「いとも簡単に大衆を操作することができる」、という恐ろしい事ができる立場にもあることも理解できる。

実際、太平洋戦争の時に「大本営発表」なる報道があって、本当は甚大な被害を被った戦いだったのに、全く逆の「敵に甚大な被害を与えた大勝利だった」と報じられていたことが多々あった事は、今でも日本の新聞やラジオの汚点として語り継がれている。この様にジャーナリズムがプロパガンダに利用される状況は、日本や過去の話ばかりでなく、残念なことに21世紀になった今でもよく耳にする。ウクライナに侵攻したロシアを始め北朝鮮や中国などに代表される様に、そうした国々では強い情報統制が敷かれていて、時の権力者にとって都合の悪い情報は瞬く間に闇に葬られてしまう。恐ろしい事だ。

そうした影響力の大きさを考えると、当然、ジャーナリストとしての倫理観が問われることになる。実際、ネットで調べてみると、『weblio辞書』(https://www.weblio.jp/)では、「国際ジャーナリスト連盟」(International Federation of Journalists)が第二次大戦後の1954年に採択した「ジャーナリストの義務に関するボルドー宣言」なるものがあって、〇真実の尊重、〇論評の自由、〇正確性、〇情報源の秘匿などを守るべき義務として挙げると共に、“政府その他の圧力を排除し”職業人としての規制のみ受け入れることを求めている、と説明されている。正に、この説明の通りだと思う。プロパガンダに利用されないためには、上記の守るべき義務に加え、“政府その他の圧力に屈しない強い倫理観”が求められるのは当然のことである。

翻って、今世間を騒がしているジャニーズ問題に関する、日本の報道各社のこれまでの対応は、どうだったのだろう。「国際ジャーナリスト連盟」が約70年も前に採択したというボルドー宣言に照らして、恥ずかしくない報道をしてきた、と胸を張って言えるのだろうか。残念ながら、全く真逆だと言わざるを得ない。故ジャニー喜多川氏による性加害を報じた一部週刊誌を除けば、日本のジャーナリストたちは、先の大戦での深い反省から決して愚行は繰り返さないと誓った筈なのに、再び大きな汚点を残してしまった。しかも、この問題が表に出た切っ掛けは、当事国日本の報道機関ではなく、英国BBCのドキュメンタリー番組だったというから、何とも情けない。

ただ、そんな中でも圧力に屈したくないジャーナリストもいた筈だ、と思いたい。けれど、組織の中で握り潰されていったのだろう。特にテレビは、視聴率というお化けの様な呪縛があって、収入源であるスポンサー獲得の為にそれから逃れられないでいる。その呪縛によって、本来ならば報道すべき破廉恥な犯罪なのに、会社として“見ざる聞かざる言わざる”を決め込んだのだろう。報道を生業とする組織としての倫理観も、ジャーナリストとしての矜持もどこかに捨て去ってしまった様な、お粗末な話である。これでは、第1050話『改造』の中で揶揄されているとした「経済二流、政治三流」に加え、「報道四流」と言ってやりたくなる。

今も、ジャニーズ問題の記者会見の席上で「NGリスト」なるものがあった、ということが盛んに報じられている。しかし、こうした報道を“茶番”と断じてしまうのは、言い過ぎだろうか。20年以上も前に週刊文春が故ジャニー喜多川氏によるタレントへのセクハラについて報道し、最高裁まで争ったこの裁判で、2004年にジャニーズ側の上告を棄却し判決が確定している。各ジャーナリストも報道各社も、この時点に立ち返って、どう対処すべきだったのか猛省すべきだ。それができなければ、「報道四流」の揶揄は甘んじて受けるべきだろう。


【文責:知取気亭主人】


ヒガンバナ
ヒガンバナ(根に毒がある、ただ水に晒せば食べられる)
(ペンも使い方によっては毒になる)

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