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知取気亭主人の四方山話
 

『身につまされる』

 

2023年10月18日

先週月曜日(9日)の夕方、前話の四方山話を書くためパソコンに向かっていたら、突然携帯電話が鳴った。二日前に電話があったばかりの、中学時代の友人Y君からだ。「何かあったのかな?」と急いで出ると、小中高で僕と同じ学校に通ったM君が亡くなっていた、という悲しい知らせだ。Y君自身が直接得た情報ではないらしいのだが、交通事故だったらしい。相手があるのか自損事故なのか、今のところそれも分からないと言う。しょっちゅうつるんでいた遊び仲間という間柄ではなかったが、スポーツが得意だった小中の頃の彼を良く知っているだけに、亡くなったと聞くとやはりショックだ。あれやこれやとM君にまつわる思い出話をして懐かしんだが、同級生が亡くなるという情報がポツリポツリと増えて来ているだけに、二人して『お互い元気でいようぜ!』と声を掛け合って電話を切った。

電話を切ったところで、誰かに知らせてやった方が良いかな、と考えて直ぐに顔が浮かんだのが、鹿児島から浜松に移り住んだばかりの友人K君だ。高校でM君と同じ文系コースだったことを思い出し、ひょっとしたら親しくしていたかもしれないと、直ぐに電話を入れてみた。すると、同じクラスになったことはないらしく、何となく顔を思い出せる程度でよく覚えていないという。そして、1年ほど前から彼自身の身の回りに大きな出来事が有って弱気になっているせいか、『この歳になって同級生が亡くなったという話を聞くと、何だか身につまされるね』と寂しげに言う。

確かに、彼が電話の度によく口にする、“来年には後期高齢者の仲間入りをする身”としては、“明日は我が身”と僕自身にも言い聞かせていて、彼の気持ちは良く理解できる。ただ、我々高齢の男子にとって最近もっと“身につまされる事件”があったことを思い出し、そっちに話を振った。それは、静岡県富士宮市の病院で9月27日に起こった、入院患者2人が殺され、犯人と思われる1人が死亡した衝撃的な事件だ。K君の奥さんが約1年前に突然脳梗塞で倒れ、以来難しい手術や治療が続き、今現在も療養中だけに、「きっと他人事ではないだろう」と思えたからだ。

全国ニュースで報じられていたから皆さんご承知のことと思うが、富士宮市の病院で起こった事件とは、富士脳障害研究所付属病院で、面会に訪れた夫(73)が、入院中だった妻(72)と長女(40)を刃物で刺殺した後、自殺を図ったとみられる事件だ。『YAHOO! JAPANニュース』(※1)によれば、妻と娘は同病院に脳卒中で入院していて、二人とも寝たきりで意思疎通ができる状態ではなかったという。重い後遺症が残っていたのだろう。しかも、娘の方は、成人した頃から入院していたと報じられていて、報じられている年齢が40歳とあるから入院期間は20年近くにもなることになる。事件までの夫婦の苦悩と苦労を思うと、何とも心が痛む。そうした苦悩や苦労が体を蝕んで来たのだろうか、戦友と呼ぶべき妻も半年前に同じ病で倒れてしまったという。(※1:https://news.yahoo.co.jp/articles/e3be004c3b97422bb24e09959c365ad338212081)

こうした報道から見えてくるのは、やっと成人してくれたと安堵した途端にその愛娘が脳卒中で倒れ、以来70代前半までの20年近くも看病を続けてきた老夫婦の姿だ。僕の勝手な想像だが、愛娘の入院生活も、恐らく時間が経つにつれ受け入れられる様になり、或る意味平穏な生活の一部となっていったのではないだろうか。ところが、その平穏になっていた日々の生活を一変させてしまう、最悪の事態が発生してしまう。苦楽を共にし、支え合い、励まし合っていたであろう妻が、娘と同じ病で倒れてしまったのだ。しかも、二人とも寝たきりとなって、意思疎通もままならないという残酷な現実を突きつけられてしまう。ひとり残された夫の絶望感はいかばかりだっただろう。想像するに余りある。

男子の平均寿命と言われる81歳余まで、夫の残された時間は僅か8年。しかも、体力は年々衰え、それまで出来ていたことも徐々に出来なくなってくる。また、自分が死んだら残された二人はどうなるのだろうという強い不安や、自身の健康への不安も増えて来ていたのであろう。同じ年代として、そうした不安を抱いていたであろうことは想像に難くない。同じ状況になったら、僕自身も絶望感を抱くと思う。人生の終焉が読めるような年齢になるということは、そういうことなのだ。だから、身につまされる。

そんな話をすると、K君も沈痛な声で、『そうだよな!』と答える。彼自身の境遇に重ねると、尚更“他人ごとではない”となるのだろう。そう感じるのは、K君ばかりではない。老いを感じ始めた老人の多くは、老人絡みの事件や事故のニュースに接すると、否応なしに身につまされる。勿論僕もそのうちの一人だ。

しかし、いつまでもそんな事を言って、後ろを向いてばかりはいられない。益々気が滅入ってしまう。何とか、時々でもいいから気持ちを楽にしたい。そうなる為には、身につまされるのは仕方ないこととして、「でもなる様にしかならない」と腹をくくり、老後生活をとことん楽しむのが一番なのではないだろうか。また、そうありたいものである。


【文責:知取気亭主人】


旬を過ぎたミニトマトの花(実っても、赤くなりそうもない)
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