2023年12月27日
今年ももう直ぐ終わろうとしている。一年の感覚的な長さは年齢分の一だと聞くが、その通りだなあと思う。歳を重ねる毎に一年が短くなり、最近では何にもしないうちにあっと言う間に過ぎる、そんな感覚でいる。もっとも、何をしたのか、何をしでかしたのか、その多くを直ぐに忘れてしまうからかもしれない。それは、歳を重ねて自然に身に付いた特技の様なもので、若い人には申し訳ないが、年寄りの特権でもある。ただ、そうは言っても忘れられない体験もある。10月の末に10日間ほど入院し、改めて健康であることの有り難さを実感した事だ。何はともあれ、この一年を通して長期離脱することもなく今年締めの四方山話を迎えられたことに、感謝である。
さて、そんな一年をざっと振り返ってみたい。2022年2月に突然のロシア軍の侵略によって始まったウクライナとの戦争は、一向に終わりが見えないまま、戦地では2回目の冬を迎えている。来年の春には3年目に突入することになるのに、解決の糸口さえ見えて来ない。正に泥沼化だ。また、中東ではガザ地区におけるイスラエルとハマスが激しい戦闘を繰り広げていて、戦禍に翻弄される女子供や病人などの様子が連日伝えられている。こうした悲惨な報道に接すると、人間とはなんと愚かでむごい生き物なのか、とつくづく思う。エゴの塊だ。
一方、国内に目を向けても、特殊詐欺グループが暗躍したり、それに関連して“闇バイト”なるものがクローズアップされたり、ジャニーズの性被害が社会問題化したりと、戦争や戦闘ほどではないにしても犯罪が後を絶たないでいる。師走に入ると、永田町界隈が俄かに騒々しくなり、政治スキャンダルが大炎上の様相を呈している。いつの時代にも、楽して金を稼ごうという手合いや小賢しい事をしでかす人間は居なくならないものである。
そこにいくと、スポーツは良い。ルールがハッキリしているだけに、それなりに公正な判定が担保されていて、結果を素直に受け入れられる素地がある。加えて、応援する選手やチームが活躍すれば、我が事の様に嬉しくなり、幸福感を味わえる。そういう意味では、今年は幾度となく我々日本人が幸せな時間を味わえた年だった。WBCワールドベースボールクラシックで侍ジャパンが世界一に輝き、男子のバレーボールとバスケットボールチームがともにパリオリンピックの出場権を自力で獲得したり、サッカーの男子代表が8連勝を飾ってFIFAランク17位に躍進したりと、日本中を大いに沸かせてくれた。そして、何と言っても大谷翔平選手の大活躍と夢の様な契約金額の話題は、言葉で言い尽くせないほど強烈で、その熱はまだ冷めやらないでいる。有難い事である。
そうした悲喜こもごもの話題の中から、特に強く印象に残った出来事を、例年同様拙い狂歌で振り返ってみたい。
憧れを 止めて始める ショータイム 主演翔平 憧れの的
大谷の 野球小僧の 小気味よさ 富も名誉も 勝利に劣る
今年は、野球界にとって明るい話題が多い年だった。特に、シーズン前に行われたWBCでの優勝は、日本の野球界全体を元気にさせたような気がする。栗山英樹監督の下、大谷選手とダルビッシュ選手の大リーガー2人も参加し、見事世界一を奪還した。どの試合も白熱した好ゲームだったが、特にアメリカとの決勝戦は見ごたえがあった。その試合直前に大谷翔平選手が言った、『…今日だけは憧れるのを止めましょう…』の掛け声は、印象深い秀逸な表現で未だに話題に上る。その掛け声通り、見事アメリカを破り優勝を手にした訳だが、その後の彼の大活躍は知っての通りだ。日本人選手として初めて大リーグのホームラン王に輝き、見事2度目のMVPにも輝いた。投手としても10勝を挙げた。野球の本場アメリカで、規格外の活躍を見せている。その後、日本の全小学校に3つずつグローブを配ったり、17番の背番号を譲ってくれたドジャース選手の奥さんにポルシェをプレゼントしたりと、やることなすこと規格外だ。約1000億円という契約金も規格外だ。いつまでも持ち続ける野球小僧としての、勝利への純粋で熱い思い、彼が憧れの的になるのは、至極当然のことだ。
温暖化 熊も睡眠 障害か 冬眠できず うろつきまわる
人よりも 熊が可哀そう クレーマー カヤの外から しつこい抗議
今年は、各地で熊による人身被害が多発している。今年は過去最悪のペースだったという。本来ならば既に冬眠に入っている時期なのに、石川県小松市でも今月の19日に目撃情報が寄せられていて、冬眠しない熊も出てきている。温暖化の影響もあるらしい。もう一つ、熊の冬眠のあり様も関係しているらしい。冬眠と言っても、熊のそれはダラダラ寝のようなもので、食料さえ手に入るならば冬眠せずに活動してもおかしくないのだという。テレビで牛のエサを横取りする熊の映像を観たが、人の近くで容易く食料が手に入れられることを覚えれば、冬眠せずにうろつきまわる熊がますます増えるのかもしれない。
もう一つ、熊に関する想定外の問題が持ち上がった年でもあった。地元住民の命や生活を守るために熊を駆除したことに対し、激しい抗議の声が寄せられてたというのだ。駆除したハンターや行政に対して、抗議が殺到したという。中には長時間に亘って電話で抗議を続ける人もいるという。孫達が熊と遭遇して被害に遭うのではないかと心配している身としては、何とも理不尽な抗議に思えるのだが…。
AIが 作る文章 AIが 真偽のほどを チェックするなり
上出来の 文章を書き ニュース読み いずれ上司は 生成AI
今年のユーキャン新語・流行語大賞のトップテンの一つに、「生成AI」が選ばれた。その代表的なソフトウェアである「ChatGPT」は、革新的な技術とサービスで、まるで生身の人間がするように、会話が出来たり文章を作成できたりして、世間をアッと言わせている。試しに、会社の仲間が小生の四方山話『パンク』(第1042話)を基に事故報告書を書かせてみたのだが、思わず笑ってしまう程見事な出来栄えだった。推測で書かれている部分もあり満点とはいかないが、事故報告書としては全てを網羅していた。また、NHKなどが時々放送で使っているAIによるニュースの読み上げは、当初に比べると随分進化していて、今ではほぼ違和感なく聴くことができる。凄い技術が登場してきたものである。
ただ、手放しで喜んでばかりいられない。便利なツールが簡単に利用できるようになる分だけ、利用する人間の倫理観や道徳観が求められるからだ。何が真実で何が虚偽なのか、それを見極める目も養わなければならない。そうしなければ、上司の殆どは生成AI、なんて日が現実のものになるかもしれない。
AIに 代えてやりたい ダメ議員 裏金要らず 居眠りもせず
岸田さん 集めるモノも 変わりおり 傷持ち閣僚 増税メガネ
岸田政権が大揺れに揺れ、支持率は危機的な低さとなっている。原因は、自民党の安倍派と二階派に焦点が当たっている、裏金問題だ。こうした“政治とカネ”の問題は、「またか!」と呆れてしまうほど常態化している。この問題を無くすために、「政党交付金」として、総人口に一人当たり250円を乗じた額を国の予算の中から拠出するようになったのに、この有様だ。選挙はそんなに金が掛かるのだろうか。もしそうだとすれば、いっそのことAIに任せてしまった方が、国民にとっては幸せなのではないだろうか。そんな風にさえ思えてくる。
また、そうした金にまつわるスキャンダルもあって、岸田総理が任命した大臣や副大臣などの更迭や退任が相次いでいる。今回の裏金問題でも、松野官房長官など4人の閣僚が交代した。これまで2度の内閣改造でも、改造直後にスキャンダルまみれになり、退任を余儀なくされた先生方のなんと多い事か。『脛に傷を持つ先生しかいないのか!』とヤジを飛ばしてやりたくなる。ヤジと言えば、岸田総理の街頭演説中に飛ばされた『増税メガネ!』がトレンド入りし、国会でも野党の追及の際使われたが、先生方の裏金問題が明るみに出れば出る程、その声は記憶に残る。
以上、今年一年を振り返り、特に印象強かった四つの出来事を切り取ってみました。振り返ってみると、新型コロナが5類に移行してやっと日常を取り戻した感はありますが、世界的にみると、新たな年を迎えようとしている今もキナ臭さが蔓延していて、平穏というにはほど遠い気がしています。国内でも耳を疑う様な陰湿な事件や悲惨な事故が多発していて、心を痛めることが多々ありました。そうした折々の出来事にも触れながら、お蔭さまで、この四方山話も無事今年の締めを迎えることができました。偏に拙い文章にお付き合い下さる皆様のご声援・ご愛読の賜物、と深く感謝しております。本当にありがとうございました。
後四日で2024年となりますが、新しい年を迎えるに当たり、来年こそウクライナ戦線とガザ地区での戦闘が、平和裏に解決されることを、そして世界からキナ臭さが一掃されることを、心より祈念致しております。併せて、皆様にとって迎える年が素晴らしい一年になりますように、そしていさぼう会員皆様のご多幸とご健勝を祈念して、四方山話2023年の締めと致します。
【文責:知取気亭主人】
シクラメン
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