2024年2月14日
今回も、まず被害の状況からです。人と家に関する被害の概要は次表の通りですが、まだ住家被害増加が顕著で、前回に比べ石川県で約10,000棟、新潟県で約2,000棟、富山県でも約2,000棟も増えています。被害の全体像が見え始めた為なのか、繰り返される余震で耐えきれなくなり新たに損壊した為なのかは分かりませんが、発災からひと月以上も経っているのにその増え方は尋常ではありません。そんなところからも、現地の悲惨さが窺えます。
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死者(人) |
行方不明者(人) |
負傷者(人) |
住家被害(棟) |
備考 |
石川県 |
241(15) |
確認中 |
1,182 |
60,236 |
2月9日14時現在※1 |
新潟県 |
0 |
0 |
49 |
15,902 |
2月9日13時現在※2 |
富山県 |
0 |
0 |
47 |
8,044 |
2月6日9時現在※3 |
福井県 |
0 |
0 |
6 |
45 |
1月3日13時現在※4 |
なお、死者のカッコ内数値(15)は、災害関連死と見られる人数です。また、安否不明者は、9日の時点では1週間前より3人減って11人と発表されています。
亡くなられた方々に哀悼の意を捧げご遺族の皆様にお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
(※1:https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/documents/higaihou_85_0209_1400.pdf)
(※2:https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/390861.pdf)
(※3:https://www.pref.toyama.jp/documents/38062/higai31.pdf)
(※4:https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kikitaisaku/ishikawanotojisin_d/fil/kaigi2.pdf)
さて、私事で恐縮だが、1949年生まれの小生は、もう直ぐ後期高齢者の仲間入りをする。暫く前から「団塊の世代が全て後期高齢者の仲間入りをする2024年問題」と囁かれてきたが、その問題の年に愈々突入したのだ。それにしても、まさかこんな歳まで元気でいられるとは思ってもみなかった。家族にも仲間にも恵まれ、有難い話である。ただそうは言っても、「長生きできた!」と喜んでばかりはいられない。このまま我々が80歳、90歳と齢を重ねれば重ねるほど日本の国力は衰えていく、と思えるからだ。
2月12日付の北陸中日新聞朝刊(以下、新聞)に、『北陸4割超 働き手半減』と題する記事が、一面に載っていた。国立社会保障・人口問題研究所( https://www.ipss.go.jp/)が、昨年末に発表した『日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)』(以下、発表資料)の概要を、今回の「能登半島地震」で痛手を被った石川県の働き手(生産年齢:15〜64歳)の人口減に焦点を当て、報じたものだ。2020年(小生71歳の年)を100とした時の、30年後の2050年(小生101歳)の指標(減少率:%)を推計している。
その発表資料を参考に、都道府県別の指標を上位5都県と真逆の下位5県についてまとめてみた(表-1)。上位も下位にも、ほぼ予想通りの都県が並ぶ。若者(働き手)の首都圏集中は、首都機能の移転など、余程インパクトのある事をしない限りまだまだ続くのが見て取れる。こうした事はもう随分前から指摘され続けているのに、これまで大きな進展もない。一体何年になるのだろう。その間に、地方は疲弊する一方だ。今回の能登半島地震は、そうした疲弊していく過疎地域に追い打ちをかけた痛ましい災害だ、とも言える。
表-1 15〜64歳の、2020年を100とした時の2050年の推定指標
上位5都県(数値の単位は%) |
下位5県(数値の単位は%) |
1 |
東京都 |
93.7 |
43 |
長崎県 |
56.2 |
2 |
沖縄県 |
82.0 |
44 |
高知県 |
55.5 |
3 |
千葉県 |
81.4 |
45 |
岩手県 |
53.9 |
4 |
神奈川県 |
81.0 |
46 |
青森県 |
48.3 |
5 |
埼玉県 |
80.6 |
47 |
秋田県 |
47.7 |
因みに、今回の地震で被害を受けた北陸4県の指標は、それぞれ新潟県59.6%、富山県64.9%、石川県70.2%。福井県65.4%となっていて、秋田県などの下位5県よりはまだ良い方だ。ところが新聞によれば、市町単位で見ると石川県内でも地域差があって、能登半島を中心に石川県内(11市8町)の5市4町で半減し(50%以下)、中でも奥能登の2市2町では、何と4割未満まで減少すると予想されている。地震前にも拘わらず、である。最も大きく減少するのは能登町の29.8%、驚くなかれ7割強も減ってしまう予想だ。しかも、今回の震災は、間違いなくこの傾向に拍車を掛けることになる。
UターンやIターンで能登に移り住む若い人たちも、少なからずいた。しかし、そうした意欲ある若者でも、新聞に『この地震でこのまま住み続けるか悩んでいる』と悩みを吐露している人もいた。それはそうだと思う。能登で生まれ育った人でさえ、『戻りたいのはやまやまだけど…』、と口にする被災者もいるのだ。そうした被災者の苦しい胸の内を聞くと、致し方ない事だと思う。心が折れるほどの厳しい現実を突きつけられているからだ。
ただ、他人事ではない。能登のような過疎地は全国至る所にあって、そうした所が被災するのはどこでも起こりうる。そして、過疎地は益々過疎化が進み、大都市や大都市近郊への人口集中は一層顕著になる。結果、災害リスクはどんどん高まっていく。発表資料から見えてくる小生100歳の未来予想図は、そんな暗い絵しか浮かんでこないのだが…。
【文責:知取気亭主人】
蕾が膨らんで来た(シンビジウム)
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