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知取気亭主人の四方山話
 

『想像力を働かせる』

 

2024年2月28日

26日で発災から既に8週間経ちましたが、住家被害の増加が続いています。石川県では1週間で6千棟近くも増え、7.5万棟を超えました。4県では、10.5万棟を超えました。また、22日の時点で、凡そ2.2万戸でまだ断水が続いているそうです。ようやく仮設住宅も建ち始めましたが、伝えられるのは、寒空の下で片付けもままならない被災地の様子です。

死者(人) 行方不明者(人) 負傷者(人) 住家被害(棟) 備考
石川県 241(15) 確認中 1,186 75,661 2月22日14時現在※1
新潟県 0 0 49 18,474 2月22日13時現在※2
富山県 0 0 47 11,483 2月20日13時現在※3
福井県 0 0 6 45 1月3日13時現在※4

なお、死者のカッコ内数値(15)は、災害関連死と見られる人数です。また、安否不明者は、22日の時点では1週間前と変わらず9人と発表されています。

亡くなられた方々に哀悼の意を捧げご遺族の皆様にお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 (※1:https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/documents/higaihou_96_0222_1400.pdf)
 (※2:https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/392991.pdf)
 (※3:https://www.pref.toyama.jp/documents/38062/higaishien.pdf)
 (※4:https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kikitaisaku/ishikawanotojisin_d/fil/kaigi2.pdf)

それにしても、大規模地震の度に言えることだが、今回も建物被害が多い。奥能登を代表する貴重な文化財にも及んでいる。輪島市門前町にある曹洞宗大本山総持寺祖院は、2007年に発生した能登半島地震でも大きく被災していて、開創700年に当たる2021年に約40億円を掛けて耐震工事や修復を終えたばかりだったのに、再び損壊してしまった。国の登録有形文化財となっている17の歴史的な建造物全てに、深刻な被害が確認されているという。発災直後には、『もう修復は難しいのではないか!』という、諦めにも似た悲痛な声も漏れ聞こえてきた。

また、平家の末裔が約200年前に築いた輪島市町野町の国の重要文化財「上時国家(かみときくにけ)住宅」は、1階が押しつぶされ無残にも倒壊してしまったという。並ぶように建っていた「下時国家」の方は大丈夫だったと報じられていて少し安堵しているが、こうした歴史的に価値のある建造物が損壊してしまうのは、能登半島に暮らす人々が営々と築いて来た歴史や文化が根こそぎ損なわれ、加えて地域の人々の誇りまでも奪ってしまうようで、心が痛む。最近はとんとご無沙汰していたが、半世紀以上前のアルバイト時代から能登半島には足しげく通っていて、どちらの文化財も見慣れていただけに尚更だ。

上記2つの文化財が位置する輪島市を含む能登地域は、2007年の能登半島地震(M6.9)で最大震度6強を経験し、人的被害こそ少なかったものの、建物などに大きな被害が出た。それから13年後の2020年12月頃から能登半島先端付近で群発地震が活発になり、2022年6月にM5.4の地震が発生して珠洲市で最大震度6弱を、それから約1年後の2023年5月(昨年)にはM6.5の強い地震が発生して同じく珠洲市で最大震度6強の激しい揺れを観測した。この様に、能登地域は、今回の「令和6年能登半島地震」の前にも、繰り返し強い揺れに襲われてきた。そして今回の最大震度7強の烈震(以後、本震)である。

その本震以降、2月27日04 時分現在までに震度1以上を観測した地震は、気象庁のデータによれば(https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/2024_01_01_noto/noto_jishinkaisu.pdf)、 1684 回にもなる。その内、液状化による被害が著しい内灘町と同じ震度5弱以上の強い揺れに限ってみると、本震の震源域周辺では、最大震度6弱が2回、5強が8回、5弱が7回も観測されている。本震を入れると計18回も、5弱以上の激しい揺れに襲われていることになる。痛んだ建物にとって悪魔の追い打ちとなりそうな震度3と4を加えると、234回にも及ぶ。これだけ繰り返し痛めつけられれば、損壊家屋が多数出ても不思議はない。

今回のような震災後に良く聞かれるのは、1981年に制定された「建築基準法」(新耐震設計法)だ。これより前に建てられた住宅の倒壊率が高い、という文脈で登場する。しかし、『住宅構造研究所』のホームページによれば(https://www.homelabo.co.jp/select/
history01.html
)、「この建築基準法に則って建てたから地震では壊れない」、ということではないらしい。大工をしている長女の婿殿も言っていたが、“建物は壊れても命は守る”を目標にしているからだという。また、この建築基準法の耐震性能を「等級1」として、その1.25倍の強さを「等級2」、1.5倍の強さを「等級3」とする「住宅性能表示制度」が2000年4月に施行され、ガイドラインができた。しかし、これまで述べてきたような繰り返しの地震に対する強さのガイドラインは定めていないというから驚きだ。

それを裏付けるかのように、耐震工事で修復した総持寺は、再び損壊してしまった。考えてみれば、1981年からもう40年以上も経っている。その間我々は、幾多の震災を経験し、数限りない損壊家屋のニュース映像を観てきた。新たな知見もたまった筈だ。もうそろそろ、「新…」に相応しい基準を設けるべきではなかろうか。折角新築したのに損壊してしまいローンだけが残った、そんな苦しみを負わなければならない被災者を無くす、そこを目標にしてほしい。住宅の被害が小さければ避難者も少ない。地域を離れる人も少なくて済む。税金投入も少なくて済む。国力も削がれなくて済む。想像力を働かせてほしいものである。


【文責:知取気亭主人】


クマザサ(隈取りが鮮やか)
クマザサ(隈取りが鮮やか)

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