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知取気亭主人の四方山話
 

『素敵な魔力』

 

2024年3月20日

3月20日は、春分の日である。仏教の教えでは、“春の彼岸のお中日”に当たる。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われてきた、その彼岸である。その慣用句を裏付けるかのように、先週の後半あたりから、雪国のここ金沢でも気温が上がって来た。降り続いていた冷たい雨も上がり、久しぶりにお日様が顔を出してくれた。お日様の熱量は凄い。金、土の両日(15、16日)は、待ち望んでいた日差しがしっかり注ぎ、防寒着なしでも過ごすことができた。元旦に発生した「令和6年度能登半島地震」の激震以来、追い打ちをかけるような悪天候が続き身も心も寒々としていただけに、暖かい日差しの中、身軽ないでたちで動きも気分も軽い。週明けから再び気温は下がるらしいが、それでも気分が滅入るほどの冷たく重い空気ではなさそうだ。待ち遠しかった春は、着実にやって来ている。

目に入る景色も少しずつ色付き始め、その春の先鋒を務めるかのように、お隣の庭先で咲き始めた沈丁花の花が、良い香りを漂わせ始めた。沈丁花は、芽吹きなら蕗の薹、花ならスイセン、香なら沈丁花と、小生が秘かに決め込んでいる早春定番の使者の一つで、離れていても香りで春の到来を知らせてくれる優れものだ。その三つを早春定番の使者と決めている理由は、そのどれもが、毎年我が家の庭やご近所でいち早く楽しめるからだ。そこに、今年からフクジュソウが加わった。毎年見事な菊を咲かせ道行く人の目を楽しませてくれている御近所の方が、共同で借りている駐車場の片隅に地植えしてくれたらしい。これで、早春の使者を待つ楽しみがまた一つ増えた。加えて、鉢植えではあるがその方の庭には可憐な雪割草も何鉢かあって、鉢を並べ展示してくれるタイミングさえ合えば、そちらも楽しめる。いずれにしても、こうした早春の芽吹きや色とりどりの草花は、毎年長い冬の終わりを告げてくれるとともに、今年に限っては重苦しい震災の記憶を一瞬でも忘れさせてくれる、有難い春の使者達である。

使者と言えば、16日の土曜日、何カ月ぶりかで、我が家に可愛らしい元気印の使者達が訪れてくれた。全員で7人いる孫の中の乳幼児達が集い、爺婆に笑いと元気を届けてくれたのだ。冬の間中、低く垂れこめた雪雲や雨雲に覆われ見るからに寒々とした天候が続いていたこともあって、元旦の発災以来、何となく背中が丸まっていた老夫婦二人の周りに、それはそれは明るく賑やかな笑いを振りまいてくれた。何気ない仕草や可愛らしい言動で周りをぱあっと明るくしてくれるその様子は、例えが悪いかもしれないが、まるで枯れ木に花を咲かせるあの花咲か爺さんだ。何とも素敵な魔力を持っている。

可愛らしい元気印の使者達とは、愛らしいその仕草を見ているだけでホッコリさせてくれる、昨年の4月に生まれつかまり立ちをし始めた孫と、言葉をたくさん覚えチョッピリ大人ぶりたい年中さんの保育園児2人、そしてその3人よりも少しお姉さんで、少女の階段を上り始めたけれどまだ可愛い盛りの小学1年の女児、の4人である。どの子も可愛い盛りで、ずーっと見ていても飽きない。

家内の話だと、「子供は相手の年齢が近いほど早く馴染んで仲良く遊ぶ」と事ある毎に言っていたが、上の3人は2歳しか離れていないせいか、「成る程ね!」とストンと腑に落ちるほど仲良く遊んでいる。尤もそれは道理で、我々夫婦の4人の子供達は、今回家族がインフルエンザに罹って集合できなかった長男一家も含め、親同士仲が良く、孫達も以前からちょくちょく一緒に遊んでいたからだ。それもあってだろう、3人は顔を見るなり『2階で遊ぼ!』と誘い合い、階段を元気良く上って行った。上がるや否や、ドッタンバッタン大きな音を響かせて、賑やかに遊び始めた。楽しそうな笑い声も聞こえて来る。その音や明るい声を聞いているだけで、強張っていた頬の筋肉は緩み、“元旦以来のあれやこれや”を忘れさせてくれる。そして、少しずつ心が穏やかになっていくのが分かる。素敵な魔力である。

その“素敵な魔力”の正体は何だろう?人間には、同じ人間の乳幼児に対してだけでなく、子犬や子猫など自分よりも小さな動物に対しても、愛おしく思う本能が備わっている様に思う。孫たちを見ていると、ちょくちょくそんなシーンに出会う。自分よりも小さく守ってやらなければならない相手、と認識するのだろう。また、成長するにつれ、親としての本能も芽生え、一層愛情深くなっていく。そうした基本的に備わっている本能をくすぐり惜しみない愛情を注いでもらって自らが生き抜く、それが、乳幼児に備わった生き残っていく為の術としての可愛らしい仕草であって、素敵な魔力の正体なのではないだろうか?

赤ちゃんが笑顔を見せるのは世話をしてくれるお母さんへのお礼、という研究成果を以前どこかで読んだことがあるが、正にそれだ。そんな風に考えると、孫達が持つ素敵な魔力は、子孫繁栄の為に正確にプログラミングされた遺伝子のなせる業、とも言える。そんな風に言ってしまうとなんだか味気も素っ気もないが、爺婆にとっては、笑顔と元気を貰える、宝物の“素敵な魔力”である。


【文責:知取気亭主人】


フクジュソウ
フクジュソウ

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