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知取気亭主人の四方山話
 

『先人の教え』

 

2024年3月27日

昨年の夏ごろから鍼治療に通っている。特に体のどこかが痛くてどうしようもないという訳でもないが、目が霞んだり、肩が痛かったり、便秘気味だったり、ちょくちょく油切れのような症状を起こす。その度にあれやこれやと自己流の手当てをするのだが、治ったと思っても暫くするとまたぶり返す。そんな事を繰り返していた時、半年ほど前から通い始めていた妻から、悩みの種だった足裏に出来た魚の目の芯を米粒ほど小さなお灸で簡単に焼き取ってくれた、と何となく抱いていた鍼灸院のイメージと違う話を聴いた。それを聴いて、「そんな凄腕なら俺も行ってみようかな」と思ったのがきっかけだ。しかも、妻が私のことを相談すると、『満70歳以上だったら金沢市の助成が貰えるから、それを貰ってから来てください』との親切な助言もくれたという。言われた通り市役所の窓口に行くと、簡単な手続きで「はり・きゅう・マッサージ助成券」が貰えた。有難い。

同い年の友人にその話をすると大層羨ましがられたが、金沢市の支援に感謝しながら、それを持って通い始めた。先生は治療を始める前に、必ず患者本人が気になるところを訊いてくる。本人の気になるところから治していきましょう、という方針らしい。そして、その原因やそれを防ぐ日常生活での姿勢、そして暖かい所から寒い所に出る時の体を慣らす方法など、先人の教えを交えながら知己に富んだ話をし、生活指導もしてくれる。自分が師事した先生に教えて貰ったと、いつも師匠を立てていて口もすこぶる滑らかだ。

最後の券を使い切った先週末もいろいろと教えてくれた。その中に、「切羽詰まる」という慣用句の語源を説明しながら、「何事もやり過ぎは体に良くない」と諭してくれたのだ。鍼が刺さったままその説明を聞いていたのだが、「切羽詰まる」と聞いて、ふと渦中の真っただ中にいる水原一平氏のことが脳裏に浮かんできた。ところが、先生の蘊蓄を聞いていくと、どうも自分が抱いていたニュアンスと違う。『切った羽は…』との由来の説明は、いつもと違い今回ばかりはどうも腑に落ちない。それでも「やり過ぎは良くない!」だけを記憶に留め、“腑に落ちた風な”返事をして治療院を後にした。

家に帰り、早速「切羽詰まる」を調べてみた。すると、ネット上には、成る程と思わせる説明が結構ある。その多くは、日本刀の鍔(つば)を固定する金物に由来する、という説明だ。そして、「切羽とは、日本刀の鍔を挟み、ガタつかない様に鍔を安定させる役割を持つ楕円形の薄い金物で、これが詰まると“鞘から抜けなくなる”」と説明している。我が家の小刀を確認したところ、確かにそれらしき物はある。しかし、その位置や形状からして、それが詰まって抜けなくなるということは、俄かには想像できない。

そこでもう少し調べてみた。すると、居合道に励んでいる方のWeb日記『千日の鍛、万日の錬』(https://ameblo.jp/iai-road/entry-12524902937.html)に、ストンと腑に落ちる意見があった。その意見では、「切羽詰まる」は、“鞘から刀身を抜くという行為”から見たのではなく、切羽に両側から固定された“鍔の身になって”言った言葉ではないか、というのだ。成る程、と思う。つまり鍔にとっては、切羽が正しく詰められた状態だと、遊びが無くなり身動きできなくなる。この様な状態を指して「切羽詰まる」という様になったのではないか、という意見だ。我が家の小刀を眺めても、この説明なら腑に落ちる。

しかしそれはそれとして、何故この言葉で水原一平氏の事が浮かんだのか、自分自身でも良く分からない。これまで伝えられた彼の評判はすこぶる良かった。日本の教科書に載る予定だった、とも言われている。大谷翔平選手の大リーグでの規格外の活躍も、通訳以外のあれやこれやをサポートしてくれる水原氏の存在抜きには語れない、と思っていた。また、大谷選手自身もそう思っていたに違いないし、全幅の信頼を寄せていたと思う。水原氏も、大谷選手から信頼されていることを信じていたと思う。そんな厚い信頼を裏切り、人も羨む立場を棒に振ってまで、球団を解雇されるようなことを何でしてしまったのだろう。解雇のニュースを聞いてからというものずっと、そのことの答えが見つからないでいた。特に、巨額のカネの動きを聞くに付け、何がそこまでさせたのか、と不思議に思っていた。

鍼治療を受けていた最中も、脳内ではそんなことを考えていたに違いない。そんな時、「切羽詰まる」が耳に入って来たのだ。それを聞いた瞬間、「そう言えば、水原氏も借金の返済を迫られ切羽詰まっていたのだろうな」と、探していた答えでもないのに、不思議なことに納得できてしまったのだ。自分で言うのもなんだが、不思議な脳である。

事が詳らかにされていない今、水原氏は勿論、渦中の一人でもある大谷選手にも手厳しい意見が寄せられているという。これまでの華々しい活躍や巨額の契約金など、羨望の眼差しで見られていただけに、ここぞとばかりの辛辣な意見もあるらしい。それは、或る意味しかたがない事だと思う。しかし大谷選手には、今回のこの大スキャンダルを教訓に、これからも長く活躍し続けて欲しい。ただ、先人の教えにあるように、「好事魔多し」である。「先人の教え」は、先人たちの経験則でもある。順調に事が運んでいる時(好事)こそ邪魔が入りやすいことを肝に銘じ、これからの選手生活を送ってほしいものである。


【文責:知取気亭主人】


沈丁花
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