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知取気亭主人の四方山話
 

『盗蜜したのはやっぱりスズメ?』

 

2024年4月17日

今年の金沢の桜、例年になく長い期間楽しませてもらっている。浅野川沿いを散歩しながら開花を確認したのは、未だ風も冷たい3月の末だった。その後一気に満開に向かうかと思っていたのだが、寒い日が続き、十日ほどたった先々週の土曜日(6日)に見た時に、やっと八分咲きほどになっていた(F-1,F-2)。ところが、それからさらに一週間後の土日も、まだ満開の花を楽しむことができた。勿論、同じ金沢市内でも、早咲きの桜はもう既に葉桜になっているものもある。しかし、裏山の卯辰山(標高141.2m)に登ると、丁度見頃を迎えていて、頂上付近の公園に植えられている八重の枝垂れ桜は、今が盛りと咲き誇っている。

これだけ長く楽しめているのは、何年ぶりだろう。雨や強風で楽しむことなく散ってしまった年もあったりして、満開の桜を十分堪能した記憶はそれほどない。今年は朝晩が冷え込む結構厳しい寒の戻りがあったからなのだろう。長い期間目の保養をさせてもらっていて、自然の摂理の妙技に感心させられている。桜に限らず、花の開花や結実は、何とも絶妙なバランスで成り立っているものである。

F-1,散歩コース(約2km)の桜並木
F-1,散歩コース(約2km)の桜並木
F-2.遊歩道の真上(八分咲き?)
F-2.遊歩道の真上(八分咲き?)

自然の摂理と言えば、6日の土曜日、散歩をしていて奇妙な発見をした。まだ蕾の枝もあって満開と呼ぶには早すぎる時期なのに、遊歩道や根本の所々に桜の花が落ちている(F-3)。しかも、落ちているのは、花びらではない。目を凝らして見ると、ツバキの花と同じ様に、咲いている格好のまま落ちている。花冠(かかん)と“がく”、そして花托(かたく)も一緒に、まるで切り落とされているのだ(F-4)。
F-3
F-3
F-2.遊歩道の真上(八分咲き?)
F-4

ただ、落ちているのは、桜の木全てではない。散歩コース(約2km)で本数を数えたところ、21本の周辺に確認できた。歩測によると約8m間隔で植わっていて、間に道路や小川があったりするから平均10m間隔とすると、凡そ200本植えられてることになる。そのうちの約1割の木が、何らかの理由で、満開になる前に花を落としている勘定だ。結構な割合だ。でも原因が分からない。その時ふと浮かんだのは、もう随分前に聞いた、「兼六園の桜がウソという鳥による被害を受けた」とのニュースの記憶だ。これぞ正しくウソによる被害だ、と早合点して、木の上に目を凝らしてみる。しかし、飛び去るヒヨドリやスズメらしき姿は確認できるのだが、見たこともない鳥の姿は見えない。実は、ウソという鳥を知らないのだ。

結局、犯人(犯鳥?)は分からずじまいで、家に帰りネットでウソを調べてみることにした。調べて驚いた。確かにウソは桜にとって害鳥だが、ついばむのは蕾だという。つまり開花前に食べてしまうのだ。だから、今回開花している花を落としているということは、ウソは犯鳥ではない、ということだ。では、誰が落としているのだろう。調べていくうちに、驚きの事実を知った。実は、咲いている花の姿のまま落としているのは、盗蜜している鳥だというのだ。「盗蜜」なんて、そんな言葉があることを初めて知った。

メジロやヒヨドリなども、桜の花の蜜を吸いに良く訪れる鳥だという。彼らの嘴は細長く舌も長いので桜の花の蜜を舐めるのに適しているらしい。花からすると、蜜を餌に受粉を手伝ってもらっているから、持ちつ持たれつの関係になっている。ところが、スズメなどの様に嘴が太く短い鳥は、花に口を突っ込んで蜜を吸うことができない。このため編み出したのが、蜜がある花托付近をついばむ方法だという。ついばんで切り取ってしまうのだ。花からするといい迷惑で、受粉の手伝いもせずに蜜だけを盗っていく、つまり盗蜜という訳である。とは言え、スズメの犯行現場を見た訳ではなく、半信半疑の状態だ。

そこで、翌日、犯鳥探しに出かけて行った。すると、とある桜の木に、いましたいました。小さな鳥が群れを成して、花をついばんでは落としている。結構なスピードだ。ただ、明るい空をバックに見上げているため、色や模様がハッキリせず黒っぽく見える。大きさはスズメと同じかやや小さいサイズほどだ。飛び立った姿を追っても、全体が黒っぽいスズメサイズの小さな鳥、としか分からない。そこで、困った時のネット頼みである。

調べてみると、「あきた森づくり活動サポートセンター」のサイトに、『クリプトンの森便りその11』(http://www.forest-akita.jp/data/school-2020/mori-11/mori-11.html)というコンテンツがあって、盗蜜する鳥について写真付きで説明してくれている。それによると、スズメ、シジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラといった鳥が盗蜜するという。大きさを調べてみると、スズメ約14.5cm、シジュウカラ約14.5cm、ヤマガラ約14cm、ヒガラ約11cmだという。ほぼ全てスズメと似た様なサイズだ。ただ、印象としてはスズメより小さく見えたから、サイズ感からするとヒガラの可能性が高い。しかし、蜜の吸い方が違うという。となると、盗蜜したのはやっぱりスズメ?


【文責:知取気亭主人】

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