2024年6月19日
先週、市役所から封書が届いた。表書きのところに「納税通知書在中」と書いてある。国民の義務だと分かっていても、税金を納めるための書類だと分かった途端に、「一体いくらなんだ?」とまず金額が気になってしまう。そして、“納める”のではなく“取られる”という意識が芽生えてしまう。小市民の悲しい性である。早速封を開けて、『令和6年度 市民税・県民税・森林環境税について(おしらせ)』と書かれた紙を読むと、令和6年度以降年は県市民税の他に年額1,000円の「森林環境税」を納付しなければいけない、と書いてある。新たな税金が設けられたのだ。しかも、市役所市民税課からの封書なのに、この新たな税金は国税だと記されている。
「森林環境税」なる税金が令和6年度から設けられることは、以前から報じられていた。しかし同時に、「3.11東日本大震災」の復興財源として時限立法で徴収されていた「県市民税の均等割りの部分にそれぞれ500円ずつ上乗せする措置」が令和5年度で切れることから、「折角納め慣れた税金をこのまま無くすのは何とも勿体ない、違う名前にして同じ金額を徴収して有効利用しよう」との思惑があるとも指摘されていた。恐らく間違いないところだろう。納税麻痺とまでは言わないまでも、年1,000円、月に均すと83円とチョット、500mlのペットボトルの水にも満たない金額だ。2014年(平成26年)度から2023年(令和5年)度まで、10年間も納めてきたら違和感なく納め続けてしまうだろうな、と思う。
ただ、月に均すと83円とチョットだと言っても、全国から徴収されるとなると相当な額になる。徴収の対象は住民税非課税の人を除く納税者およそ6200万人で、単純計算すると年間約620億円もの税収が見込まれることになるらしい(※1)。凄い金額だ。塵も積もれば、である。これだけの税金が、本当に森林の環境保全に使われるのか、国民はしっかりと目を光らせておく必要がある。何せ、今やその制度の存続さえ危ぶまれている厚生年金に関して、かつてのイケイケどんどんの時代に、我々が納めた厚生年金保険料を財源に「厚生年金会館」なる複合型宿泊施設を設置・運営していた前科があるのだ。また、政治資金の裏金問題で明らかになった国民とかけ離れたあの金銭感覚のままだと、正直どんなふうに都合よく使われてしまうのか甚だ不安である。
「森林環境税」そのものに大きな異論はない。温室効果ガスの排出削減や土砂災害の防止、あるいは水資源の涵養など、森林の環境を保全することは持続可能な社会に必要不可欠な施策だと思っている。国民が平たく負担するのも道理だと思っている。だからこそ、徴収された税金が謳い文句の通りの使われ方をしているのか、チェックする必要があるのだ。ところが、家内がテレビでやっていたと言って、趣旨と違うのではないかと思われる様な使い方をする自治体があると、口をとがらせる。良く聞くと、配分の方法に問題がありそうだ。
NHKのWEBサイトに、『一律の1000円徴収 “森林環境税” なぜ?』(※1)のコンテンツがある(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240606/k10014469941000.html)。それによると、市区町村によって県市民税と一緒に集められた「森林環境税」は、都道府県を経由して国に納められる。そして、国から「森林環境贈与税」(詳しくは林野庁のホームページ参照:https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/kankyouzei/kankyouzei_jouyozei.html)と名前を変えて都道府県と市区町村など各自治体に分配し直す、平たく言えば交付することになる。ところが、この公布の際に考慮される要素、そこに大きな問題があるのだ。
上記のNHKサイトによれば、考慮される要素は、@私有林人工林面積:55%、A林業就業者:20%、B人口:25%だという。つまり、大都会で人口が多ければ、森林がなくても「森林環境贈与税」は交付されることになる。私有林など無いに等しいであろう東京23区などにも、交付されることになってしまう。無いのに、一体何に使われるのだろう。心配する通り、妻が口をとがらせる的外れな事業に、「これは有り難い」とばかりに使われることになる。森林の維持管理に苦労することなく、人口が多いという理由だけで巨額の交付金を受けることができるのだ。これって、やっぱりおかしいと思う。
私有林だけに限らず、国有林や県有林を含めた森林、この面積が広い都道府県は、圧倒的に地方に多い。人口の流出が激しく、過疎に悩む地域が殆どだ。森林の保全・管理は勿論、林業の担い手不足も、頭の痛い問題だ。かつては、林業は地方にとって数少ない地場産業の一つであった筈である。そうした地方の地場産業を守り育成していくこと、それこそが日本の持続可能な社会を堅持していく上で、最も重要な一つだと思う。
そうした観点からすると、考慮される要素の「B人口」は、無くすべきだ。代わりに、「B県有林の面積」にすべきだと思うが、如何だろう。こうすることによって、財政の厳しい地方も少しは潤うことができる。そして都会に住む人達は、上流域の森林を保全・管理、そして整備することによって、美味しい飲み水を得たり、農地へ供給できる用水に分配されたり、工業用水として利用されたり、そして洪水を軽減してもらったりと、大きな恩恵を被ることを知るべきだ。地方は、これまでずっと若者を都会に出し、働き手の供給源となって来た。「森林環境税」という名前であるならば、せめてこの税金ぐらい、全国民で地方を支える意志だ、と言ってやりたい。そう思いませんか?
【文責:知取気亭主人】
ゴーヤ
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