2024年7月17日
14日の日曜日から、大相撲名古屋場所が始まった。石川県は相撲が盛んで、昔からお相撲さんを数多く輩出している土地柄だ。特に今年に入ると、先場所優勝した大の里の大活躍もあって、遠藤、輝、欧州海など石川県出身力士への応援に以前にも増して力が入るようになった。また、放送は全くされないが、脊椎損傷の大怪我で序ノ口まで落ちてしまった炎鵬も凄く気になっている。いずれにしてもこれら郷土力士への応援に熱が入り、若い頃はそれほどでもなかった大相撲番組も、最近では家内と二人、お互いに『遠藤の取り組みが始まるよ!』などと声を掛け合って、(お気に入り力士の取り組みだけだが)よく見ている。そして、勝ったと言っては盛り上がり、負けたと言ってはお互いに慰め合っている。そんな大相撲に関連して、先週突然気になり始めたことがある。
大相撲は長い歴史があるとされていて(日本相撲協会によると1,500年以上の歴史があるという:※1、https://www.sumo.or.jp/IrohaKnowledge/sumo_history/)、裸同然のあの戦うユニフォーム姿が独特なのは言うに及ばず、戦いに入る前の一連の所作にしても、勝ち名乗りを受ける時の所作にしても、一種独特だ。子供の頃から見慣れてはいるが、意味はよく分からない。西洋から入って来て今盛んに行われている他のスポーツと違って、深い謂われがあるのだろうなと思わせるのに十分な、一般の人には理解しがたい格好だし所作だ。見慣れた我々日本人でも、「何で?」と思うことばかりだから、初めて見物する外国人にとっては、何とも不思議な光景に写っているに違いない。逆にそれが魅力なのかもしれないが…。
また力士以外でも、土俵上で次の取り組み力士の名前を呼び上げる「呼び出し」や勝負を裁く「行司」も、衣装からして一種独特で歴史や伝統を感じさせる。いずれにしても、1,500年の歴史は伊達じゃない、ということなのだろう。そんな中、前述したように突然気になり出したことがある。力士の大銀杏を結う職人のことを何で「床山(とこやま)」と言うようになったか、である。「山」と付くのは元々力士出身の人が多いからだ、と勝手に解釈しているのだが、大相撲以外でも、我々が散髪に行く理髪店も「床屋(とこや)」と言うように、扱うのは頭髪なのに何故か「床(とこ)」が付く。何故だろう?
実は治療を受けている鍼の先生から、「床屋」の由来として、「床に関係する枕など寝具も扱っていたからだ」との説明を受けて『へー!』となったのだが、「ホンマかいな?」と思うところもあって、調べてみた。すると、由来は大きく二つの説に分かれるらしいことが分かった。「全国理容生活衛生同業組合連合会」のホームページ(https://www.riyo.or.jp/)に掲載されている記事『床屋の発祥地は…〜そして床屋という名称の由来〜』によれば、藤原采女亮(うねめのすけ)が下関で髪結いの仕事を始めたのが床屋の始まりとされていて、この時開いた店に「床の間」が設けられていて、「床の間のある店」→「床場」→「床屋」と言われるようになった、と書かれている。時は、亀山天皇の頃(1259〜1274:鎌倉時代)だという。真偽はともかく、何となく説得力がある。
今一つは、江戸時代に生まれたという説だ。当時板を持ち歩いて仮設の店で行う髪結いの店を「髪結床(かみゆいどこ)」と言っていて、「床屋」はその俗称だという。この説も、そう言われれば成る程と思う。そして、「床山」は元々歌舞伎から来ていて、江戸時代に歌舞伎役者の髪を結っていた人のことを指すようになったのだという。山のように客が来るようにとの思いが込められていた、との説明も見受けられる。その床山は力士の髪も結っていたらしく、やがて相撲の世界独自の専門職となって今に至っている、と「舞台・演劇用語」では説明されている(http://www.moon-light.ne.jp/termi-nology/)。
どちらの説も成る程と思うが、ロマンを感じるのは「全国理容生活衛生同業組合連合会」の「床の間のある店」からきているという説の方だ。ただ、大相撲が今の様に興行として行われるようになったのは江戸時代からだというから(※1参照)、“歌舞伎からきている”という説も捨てがたい。いずれにしても、小生の「“山”と付くのは元々力士出身の人が多いからだ」の解釈は、見当違いも甚だしいということになる。申し訳ない。
しかしどの説にせよ、「床(とこ)」の意味には詳しく触れていない。スッキリしない。そこで「床」の意味を調べてみた。すると、これにも諸説あることが分かった。その中から小生一押しの説だけを紹介しておく。昔は一段高くなった場所を「床」と呼んでいた、という説だ。これなら、「床屋」と言い始めたのは江戸時代だとする説も腑に落ちる。何故なら、持ち運ぶ板でも周りから一段高くなる訳で、「髪結床」と「床」が付くのも頷ける。また、多くの住宅にある「床の間」の意味も、これなら分かり易い。
いずれにせよ、日本の伝統文化は、時代が変わってもしっかり継承されているものだ、と感心した次第である。大相撲然りだし、床の間文化もそうだ。やはりその道のプロがしっかりと伝承してくれているからだ。それでは最後に義理の弟から聞いた、その道のプロ(弟の友人の大工さん)の恐ろしい話(?)をご紹介して話の締めとする。ある大工さん、共通の友人である建築士の前で、家を建てている最中に大きな声で『アッ、しまった!』と叫び、続けて『マッ、良いか!』と呟いたという。何に気が付いたのだろう?
【文責:知取気亭主人】
ムラサキクンシラン(アガパンサス)
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