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知取気亭主人の四方山話
 

『指標』

 

2024年9月11日

世の中には様々な指標が溢れている。まず思い浮かぶのは、我々庶民の肌感覚を数値によって何とか見える化しようとしている経済指標だ。その経済指標の代表的なものを上げるとすれば、ドイツに抜かれ第4位にまで落ちたと話題になった国内総生産(GDP)や失業率・有効求人倍率、そして今年に入って値上げラッシュに翻弄され、直近では新米の高騰に象徴される消費者物価指数などだ。或いは我々の肌感覚とは少しずれているとも思える、景気の良し悪しを推し量る景気動向指数なんて言葉も、テレビや新聞で良く報道されている。他方経済指標ではないが、日本の重要課題として言われ続けている少子高齢化を象徴する指標として、出生率や平均寿命、健康寿命なども良く目にする。

こうした様々な指標は、これまでのデータと比べて今がどのような状態にあるのかを判断する際の基準と呼べる値で、環境の変化であったり、その影響をどの程度受けているのかだったりを見定めるために使われている。この様に過去のデータから得られた指標に照らし合わせるのは、今の状況を手っ取り早く判断するのに極めて有効な手段である。加えて、直近のデータが指標と大きくずれた場合には、迅速に対策を講じる判断を下すことも可能だ。指標は、我々の身近なところにも広く利用されていて、大いに役立っている。最も身近なものとしては、多くの国民が恩恵を被っている、定期健康診断がある。これは実にありがたい制度である。

定期健康診断が済むと、やがて結果表が送られてくる。あの表の中に記載されているそれぞれの検査項目についての基準値が、我々が拠り所とする“健康指標”の一つである。身長と体重から肥満度を示すBMI然り、メタボ診断に使われる腹回り寸法然り、各種血液検査の値(総蛋白だとかγ-GTPだとか)然りである。しかし、折角毎年自分の健康度合いがチェックできるのに、“一瞥してゴミ箱へポイ”では勿体ない。値が改善して健康体になっただとか、逆に悪化しただとか、指標や昨年のデータに照らし合わせて、自らの検査結果がどう変化したのか、値の変遷に注目すべきだ。そして、基準値を大きく逸脱している場合には、掛かりつけ医に診察してもらい、今後の対応を指導してもらうべきである。要するに、転ばぬ先の杖である。そうすることによって、大事に至らずに済むことも多々ある。特に若い人は、自分の体力を過信しないことだ。一病息災だと思って、医者と巧く付き合うことをお勧めする。これ、過信経験者の実感である。

8月24日の退院から初めて、大動脈弁の置換手術を執刀してくれた主治医の外来診療に行ってきた。9月5日のことだ。その時持参した、A5サイズのノートがある。『わたしの 血圧手帳』と書かれているノートで、毎朝食事前に量る体重と、朝食前と就寝前に測っている血圧と脈拍を記録してある。退院時に指導されたからで、『もういいよ!』と言われるまで記録を取り続ける必要があって、その後も出来れば記録し続けるのを勧める、と言われている。高血圧患者にとっては、どれも大事な指標らしい。そうした日々のデータと、今回実施した血液検査の結果などとを照らし合わせ、術後の回復度合いを推し量ることになっている。

血液検査の結果を見ていた先生、早速『若干腎臓の働きが落ちてますね!』と指摘してきた。続けて訊かれたのが、『体重が増えていませんか?』と、『喉が渇いた感じがしてませんか?』だ。そこで、持参したくだんのノートを見せた。退院後そんなに体重が増えていないのを確認すると、『水分摂取量が少ないかも知れませんね』と言う。確かに言われてみると、入院中は意識して1日2ℓ近く飲んでいたのに、家に帰ってからは500mlのペットボトル1本飲むか飲まないかにまで減っている。その結果が、データとして如実に表れている様だ。そして、若干だが手も浮腫みっぽい。体は何とも正直だ。その対策として言われたのが、『毎日1〜1.5ℓ程度の水を飲むように』というものだ。飲んでいる薬の副作用も心配だが、早速その日からせっせと水を飲んでいる。お蔭で、少しずつだが手の浮腫みも減って来ている。

次に指摘されたのが、術後飲み続けている、血液をサラサラにする薬「ワーファリン」の効き具合が少し落ちている、という点だ。血液検査の中に血液のサラサラ度を調べる検査があって、PT-INRで表されているのだが、この値が入院時より少し低下しているというのだ。血液は人工弁の様な異物に触れると血栓を作りやすい性質があるらしく、血栓によって人工弁が動かなくなったり、血栓がちぎれて脳に飛んで行って脳梗塞などを引き起こしたりする恐れがあるのだという。したがって、「ワーファリン」によってサラサラ状態を保つことは、極めて重要な術後治療のひとつらしい。

ところが、良く口にする食材の中に「ワーファリン」の働きを阻害するビタミンK(以下、K)を多く含む物があって、大好きな「納豆」は何と摂取厳禁とされている。また、「クロレラ」と「青汁」も摂取厳禁とされていて、奥さんが調べたところによると緑色の野菜や海藻類などにもKが多いらしい。また、他にもKを含む食材がたくさんある。したがって家庭料理は、病院食に比べてどうしてもKが増えてしまう。その影響がPT-INRの低下という形になって表れた、というのが先生の見立てだ。その対策として先生が下したのは、「ワーファリン」の量を増やすというものだ。約7%と極僅かな増量だが、果たして効果のほどは如何に?2週間後の2度目となる外来診療が楽しみだ。


【文責:知取気亭主人】


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