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知取気亭主人の四方山話
 

『世に盗人の種は尽きまじ、とは言うけれど…』

 

2024年10月9日

その昔、盗賊の頭目石川五右衛門は、「石川や 浜の真砂(まさご)は 尽きるとも 世に盗人(ぬすっと)の 種は尽きまじ」という辞世の句を詠んだとされる。例え浜辺に広がる砂浜の砂が無くなったとしても、この世の中に泥棒がいなくなることはないだろう、という至極分かり易い意味だ。言っていることは褒められたものではないが、「確かにその通り、上手いことを言うものだ」と感心する。五右衛門が暗躍したのは安土桃山時代で、京都の三条河原で釜茹での刑に処さられたのは1594年の事だという。それからもう400年以上も経った。五右衛門が句に詠んだ様に、確かに、今も盗人は全く尽きていない。それどころか、陰湿な盗人はかえって増えているのではないかとさえ思えてしまう。

五右衛門は徒党を組み悪事を繰り返してはいたが、相手は権力者のみの義賊だったとの言い伝えもあり、「五右衛門が○○様のお屋敷から金貨・銀貨をごっそりと盗み取った」などの情報は、庶民のうっぷんを見事に晴らしていたのではないだろうか。真偽のほどは知る由もないが、そうした言い伝えからすると、庶民からは金品を盗み取っていなかったと想像できる。尤も、400年以上も前の庶民が金品を蓄えていたとは考えにくく、効率良く稼ぐには権力者を襲うのが手っ取り早かっただけなのかもしれない。ただいずれにしても、庶民の味方ではないにしても敵でもなかった、と言える。

ところが、現代の盗人は全く見境がない。金にさえなればか弱い庶民でさえ襲う。しかも被害者のことなど全く眼中にない。要は、「相手のことなど知ったこっちゃない、楽して金が懐に入ればいい」との非情な考え方だ。しかも、金品が多くやり取りされる都会において白昼堂々と店を襲い金品を奪う強盗団(多くは闇バイトの連中らしい)ばかりでなく、田園が広がるのどかな田舎などでも眉をひそめる様な窃盗が相次いで報じられている。いつからそんなに荒んだ国になってしまったのだろう。

平成の時代に入った頃から、インターネットの普及とも相まって、庶民を狙う盗人達の暗躍するニュースが、頻繁に流れる様になって来た。携帯電話の普及も、犯行に関する内密の連絡を取り合うのには都合が良いのだろう。そうしたIT機器の普及に伴って、犯行は以前に増して大胆になり、「エッ、そんな物まで盗るの!」と驚く様な窃盗が増えてきた。そして、庶民の敵と言える盗人が目立って増えてきた。何ともやりきれない。

今から17年も前に書いた第192話『そんな物まで盗るなよ!』(2007.2.28)では、鋼材を積んだトレーラーが車ごと盗まれた事件や、公園の入り口によく見られるステンレス製の車止め、金属製の建設資材(足場など)、資材置き場で保管されている電線、火の見櫓に吊り下げられている半鐘、墓石に設置されたステンレス製の線香皿など、換金できそうなありとあらゆる金属製品が盗難に遭っている現状を嘆いた。ATMを大胆かつ強引に破壊し現金を強奪する強盗にも触れている。今は対策が功を奏しているのか、そうしたニュースは聞かれなくなったが、当時はよくニュースになったものだった。

今逆に度々ニュースになるのは、高値で取引される電線ならば、太陽光発電設備の現場から、大胆にも切り取って行く輩が暗躍している事だ。太陽光発電設備は、人気のない所に設置されていることが多いだけに、盗みやすいのだろう。「これも時代の流れだなあ!」と思っていたら、大胆にも、我々の極身近な電線を切り取って行く盗人がいて驚いている。10月1日、漁協の組合員が、何と電柱に張られている現役バリバリの電線が盗まれているのを発見したというのだ。漫画の様なホントの話である。千葉県鴨川市の鴨川漁港で、約1600m分の電線が盗まれたらしい。お蔭で、給油装置や公衆トイレが停電している、という笑えない話も伝えられている。その知恵も技術ももっと違うことに生かせよ、と言いたくなる。

そうした金属類だけではなく、近年では農作物も各地で被害に遭っている。中でも、サクランボやモモ、ブドウなどの果物は、収穫時期になると、ごっそりと盗まれたという腹立たしいニュースが毎年報じられている。被害に遭った栽培農家は、悔しくてはらわたが煮えくり返っているに違いない。1年間丹精込め育て、やっと換金できる商品になり、さてこれからという時に横取りされてしまうのだ。当事者でない小生でさえ怒りを覚える。

果物ばかりでなく、コメも被害に遭っている。刈り取った後の袋に入ったコメばかりではない。収穫前のコメをイネごと刈り取ってしまい、たんぼから奇麗サッパリ盗んでしまうという乱暴なコメ泥棒が、暫く前(15年程前か?)から出没しているという。本当に腹立たしい。石川県でも、納屋に侵入して30㎏入りのコメ袋7袋を盗んだとして、50代の男が逮捕された。「コメの値段が高くなって、金を使いたくなかった」というのが犯行理由らしい。何とも情けない理由である。

でも、盗人の犯行理由は、誰であれ情けないものだと思う。どんな事情があるにせよ、決して褒められたものではない。そう言えば、3日付の北陸中日新聞に、金沢市でごみの回収用ネット盗難の記事が載っていた。逮捕されたのは60代の男で、自宅から45枚ものごみネットと折り畳み式のごみネットかご1個が押収されたという。「自分の物にしたかった」というのが犯行理由だと報じられているが…。


【文責:知取気亭主人】


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