2024年11月6日
今年の夏は長い間猛暑が続き、秋は勿論、冬も来ないのではないかと思っていた。ところが、11月の声を聞いた途端に冬の足音が大きくなって来た。暦の上では今週の木曜日(11月7日)が「立冬」だから当然と言えば当然だが、冬は忘れずやって来る。気象庁発表の「北陸地方の寒・暖候期予報」(https://tenki.jp/long/six_month/10500/)によると、12月〜2月の気温は〈平年より低い〜平年並み〉の可能性が高く、降水量は〈平年並み〜平年より多い〉とされ、北陸地方の住民にとって気になる降雪量は〈平年並み〜平年より多い〉の確率が高いと予報されている。「日本海の海水温が高止まりしている」と言われているから、水蒸気の供給量が多く、冬季の降水量や降雪量が増えるのは致し方ないことだ。しかし、元旦に発災した能登半島地震や、追い打ちをかけた9月の豪雨災害で受けた深い傷がまだ癒えぬのに、その上にさらに追い打ちをかける雪害も発生してしまうのか、心配で仕方がない。どうか大雪にならない様にと、祈るばかりである。
ところで、本格的な冬が到来する前に、雪国ではやっておくことがある。雪が滅多にしか降らない地域ではあまりお目に掛かれない、雪への準備である。暖冬と予報されていても、この準備は決して怠れない。除雪の準備を筆頭に、怠ると、ひどい場合には生活が成り立たなくなる場合があるからだ。そして準備から実際の活動までのそうした費用も、雪に縁遠い地域には必要のない、雪国だけに課せられた余分なものである。いずれにしても本格的な冬を前に雪への準備をする、この11月はそんな月なのだ。そして、年々体力が衰えてきている我が身にとってはあまり気乗りのしない、その準備期間が今年もやって来た。
金沢に住んでいると、毎年11月の声を聞くと大きく報道されるニュースがある。国の特別名勝に指定されている「兼六園」の樹木に、北陸の湿った重たい雪から樹木を守るため「雪つり」の縄を張る作業が始まった、というニュースだ。今では作業そのものが観光資源として捉えられていて、この頃の風物詩となっている。11月から12月中旬まで、園内の800カ所に実施されるというから結構な長丁場だ。このニュースを聞くと、我が家のツツジもそろそろ囲わねば、とせかされることになる。
「雪つり」のニュースとほぼ同時に報じられるのが、雪国ならではの、道路の除雪準備である。そのひとつが、石川県が設置する「道路除雪対策本部」のニュースだ。除雪を担当してくれる人たちや業者の結団式と、除雪車の出陣式も行われる。そして今一つは、地下水を利用した、道路に敷設された融雪装置の点検作業が始まった、というニュースである。これは、本格運用を前に“散水装置の目詰まり”のチェックと“その修理”を行うものだ。網の目の様に走る道路網を全て人海戦術で除雪するのは不可能なことで、こうした融雪装置は、人手不足を補うために今では必要不可欠なものになっている。車社会にどっぷりと浸かった生活をしている現代では、あの手この手のこうした道路の除雪は、費用は掛かるが、雪国の経済活動や市民生活を守るために無くてはならない作業のひとつだ。
無くてはならない作業はまだあって、車の冬支度も極めて重要だ。タイヤ交換である。今はスタッドレスと一般的に言われている冬用タイヤ、昔風に言えばスノータイヤに履き替えなければ、雪国の冬道は走れない。新品だからと言って普通タイヤで誤魔化そうとすると、痛い目に合う。やっぱり、スタッドレスにはかなわない。これから12月上旬ぐらいまで、オートバックスなどタイヤを扱うお店では、社用車や個人車両のタイヤ交換で大忙しとなる。
そして準備ではないが、命を落とす危険を伴い、最も厄介な除雪作業がある。最近の金沢では殆ど見られなくなった、屋根雪下ろしである。「56豪雪」と呼ばれる昭和56年(1981年)の豪雪の際には、あまりの雪の多さに仕事も出来ず、会社の仲間の家の屋根雪を下ろして回ったこともあった。しかし、それ以降も大雪に見舞われたことは何回かあったが、ここ金沢で屋根雪を下ろしているのを見たことはない。ただ、雪深い山間部では大雪の度に作業が行われ、中には不運にも屋根から落ちて亡くなった、という悲報が報じられることもある。そうした事故を危惧してなのだろう、先月市役所から『屋根雪下ろし確認票』なるものが送られてきた。生活弱者に対する、行政がしてくれる雪への準備の一環である。
何事かと思ったのだが、同封されていた「屋根雪下ろし対象世帯の確認について(お願い)」と題する書類を読んで納得した。そこには、「金沢市では、障害のある方がいる世帯の中で主にひとり暮らしや高齢者等の世帯を対象に、(中略)“屋根雪下ろし”を実施しています」と書かれている。実は今回受けた弁膜症の手術で、障害者(1級)となってしまったのだ。その登録申請をしたことから、初めてそんな書類が送られてきた、という訳ある。近くに息子家族が住んでいるから対象外にはなるのだが、こんな事まで気を使わせてしまったと申し訳なく思うと同時に、有難い制度があるものだと感心する。
いずれにしても、冬が近づくと、雪国はその準備で何かと気ぜわしくなる。と同時に、準備をしながら、これまで経験した難儀な作業が頭をよぎる。能登の為にも、この老体の為にも、暖冬になってくれないかなぁ!
【文責:知取気亭主人】
柿(今年はカメムシの被害が酷いらしい…)
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