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知取気亭主人の四方山話
 

『アルバイト』

 

2024年11月27日

今年も、残すところ僅かひと月余りとなって来た。定番の言い方ではあるが、一年経つのは本当に早い。この時期になると、話題に上るのが、新語・流行語大賞である。現代用語辞典である『現代用語の基礎知識』を出版している自由国民社が、毎年その年に話題になった言葉や流行した言い回しなどを「ユーキャン新語・流行語大賞」として発表しているもので、先日2024年版のノミネート語30が発表になった。このノミネートで初めて知った言葉もあって、“歳を取ったな感”と“世間から取り残された感”が無きにしも非ずだが、いやがうえにも世間知らずを認識させられるその30語を一覧表にしてみた(表-1)。

 表-1 2024年新語・流行語大賞ノミネート30語

アサイーボウル アザラシ幼稚園 インバウンド丼 裏金問題
界隈 カスハラ コンビニ富士山 侍タイムスリッパー
初老ジャパン 新紙幣 新NISA ソフト老害
トクリュウ 南海トラフ地震臨時情報 猫ミーム はいよろこんで
8番出口 はて? BeReal 被団協
50-50 ふてほど Bling-Bang-Bang-Born ブレイキング
ホワイト案件 マイナ保険証一本化 名言が残せなかった もうええでしょう
やばい、かっこよすぎる俺 令和の米騒動

こうして見ると、訊かれて説明できるのは、僅か10語ぐらいしかない。最新のニュースは新聞やテレビで積極的に見聞きしているつもりなのに、世の中の変化・進化のスピードについて行けてないな、と実感している。中には、「界隈」や「はて?」など、昔から普通に使われてきた言葉なのになんでこれが新語・流行語なの、と不思議に思うものさえある。また、孫息子がノリノリで歌って踊る曲名もあったりして、ここにノミネートされるぐらい流行っているんだ、と改めて鈍くなった感性を嘆いている。それにしても結構幅広い分野からノミネートされているものである。

大谷選手関連の「50-50」だったり、パリパラリンピックの車椅子テニスで金メダルを獲得した小田選手が発した「やばい、かっこよすぎる俺」など、スポーツ分野からもノミネートされていて、こうした言葉を見聞きするだけで当時の大興奮したシーンが蘇ってくる。言葉が持つ力って凄いものだ。かと思えば、「トクリュウ」や「ホワイト案件」など、今日本中を震撼させている「闇バイト」絡みの言葉もノミネートされている。こうしてみると、知らない言葉が多数あるのは己に対して少々癪に障るところではあるが、今年の世相を反映しているのだろうな、とは思う。

しかし、「トクリュウ」や「ホワイト案件」などは明らかな犯罪絡みの言葉であり、時には強盗殺人さえ犯す犯罪組織が絡んでいるのに、それなりに世間から注目されている賞にノミネートされるのは、違和感と不快感を禁じ得ない。特に「ホワイト案件」は、犯罪組織が闇バイトを募集する時に使う言葉で、“正に悪事に使用されている言葉”と理解していて、確かに全国ニュースには度々登場しているが、だからと言って“社会に流行らせたでしょう”的に称える賞にノミネートさせるのは如何なものかと思う。その言葉が悪事に使用されたかどうかなど、恐らく主催者側は意識していないのだろう。しかし、実際この言葉を使って実行犯が集められ、犯罪が行われているとしたら、そこは考慮すべきだ。大谷選手や小田選手の活躍と同じ土俵で競うべきではない。“どうしても”と言うのであれば、注意喚起の意味も込めて、悪事に使われた言葉として別枠で賞を設けては如何だろう。いずれにしても、犯罪絡みの言葉を一種のお祭りごとの賞レースに参加させるのは賛成できない。

それはそれとして、「ホワイト案件」に関連して気になっている事がある。これだけ世間で騒がれているのに、何故「闇バイト」に手を出してしまうのだろう。「ホワイト案件」と書かれていること自体が普通ではないし、異常なのに。ましてや犯罪絡みでない限り簡単な作業で高額なアルバイト料を稼げる筈がないのに、誘いに乗ってしまう。何故なのだろう?根底に、“楽して金を稼ぎたい”という強い思いがあるのではないか。

昭和43年(1968年)、小生が大学生になって初めてやったアルバイトは、倉庫の掃除で、日当は800円だった。土方仕事も大体同じ額だった。バス初乗り運賃の40倍だった。1日働いて得た800円で、数日間食いつなげた。当時は日本全体が「額に汗して働くのが美徳」とされていた時代で、アルバイトであってもがむしゃらに働いた記憶がある。家からの仕送りが無く、奨学金とアルバイトで全てを賄っていたから尚更だった。無論、親の世代も皆身を粉にして働いていた。社会全体から、「金を稼ぐのに楽な方法は無い」を、身をもって教えられた世代である。そうした経験からすると、「闇バイト」に応じてしまう若者の心理が分からない。基本的に楽して稼げる方法なんて無いのに…。

人手不足が叫ばれている業界は多々あるから、アルバイト先が無い訳ではない。但し、楽して稼げる業種は殆ど無い。ワイドショーでは「帰りに土産も持たせるよ」と謳う農家のアルバイトも紹介されていたが、昔と同じ様に「額に汗して働く」、これが最も堅実で、身も心も健康に保つ秘訣だと思う。若者よ、額に汗して働こう!そして、絶対に「ホワイト案件」などという言葉に惑わされるな!手を出すな!


【文責:知取気亭主人】


紅葉
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