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2025年3月12日
先月末、岩手県大船渡市で大規模な山林火災が発生した。消火活動が追い付かず、燃え広がるばかりのその様子は、連日テレビニュースで報じられていた。2月の降水量が極僅かしかなく(盛岡気象台の発表では月間雨量2.5mmと過去最少を記録)、乾燥しきった山林は次から次へと燃え広がり、その様子を流すニュース映像は、山林火災の恐ろしさを嫌と言うほど伝えていた。出火後1週間経った3月6日の北陸中日新聞朝刊(以下、新聞)によれば、焼失面積は市の面積全体の9%に当たる約2900ヘクタールに及んでいるという。また、この大規模山林火災では、山林ばかりでなく住宅などの建物にも火の手が及び、住宅を含む数多くの建物にも被害があった。ただ、3月5日の未明から待ちに待った雨が降り、何とか延焼の拡大は食い止められた模様で、徐々に避難指示の解除が行われ始め、9日の夕方のニュースで、やっと「鎮火宣言が出された」と報じられていた。続いて10日、出されていた避難指示はすべて解除された。やれやれだ。
それにしても、山林火災は恐ろしい。その消火活動の様子も度々報じられていたが、街中での火災と違い山林火災での消火活動がいかに困難を要するか、小生も含め多くの人が再認識させられたことと思う。その困難さゆえに、結果的に建物にも被害が及んでしまった。102棟の住宅を含め210棟の建物が延焼被害を受け、燃え落ちた建物の中には、14年前の「3.11東日本大震災」(以後、3.11大震災)で被災し、新たに建て直したのに再び被災してしまった方の住宅もある、と報じられている。テレビのインタビューに答えて、『何でこんな目に合わなければいけないのか…』と、誰に恨むでもなく呟いていた方がいたが、そう言いたくもなるだろうなと思う。むごい仕打ちだ。しかも、14年経った同じ様な時期に再び災難に遭うなんて…。
14年前の2011年3月11日、「3.11大震災」は発生した。あの時、全てを飲み込んでいく津波の破壊力の凄さに、惨たらしさに、日本ばかりでなく世界中の人々が驚愕し、恐れをなした。そして、東京電力福島第一原発事故が発生した。人々は、“原発事故の恐ろしさ”と “暴走した原発のコントロールの難しさ”を思い知らされた。福島第一原発周辺の人々には避難指示が出され、周辺の多くの町は、一時無人の町と化した。避難指示解除は最長11年にも及んだ。こうした惨状をメディアも刻々と伝え、脱原発の機運は急速に高まった。被災国の日本ばかりでなく、ドイツをはじめとする原発先進国にもその機運は浸透していった。
発災から10年ぐらいは、この機運は持続していたように思う。ところが、2020年に初めて報告された新型コロナウイルスによるパンデミックによって世界中が新型ウイルス対策に翻弄されたり、2022年2月にはロシアによる突然のウクライナ侵攻があったりと、10年ほど経ったあたりから、世界は妙にきな臭くなり、俄かに、エネルギー問題が国家の最重要課題として躍り出てしまった。また、人々の「3.11大震災」に対する記憶も、10年も経つとかなり風化してしまったに違いない。加えて、AIなどの登場により、電力需要は減るどころか益々旺盛になってきている。そうした諸々の状況もあって、脱原発の機運は少しずつ冷めてゆき、脱原発に向けて大きく舵を切るかに思えた日本国内の電力政策は、舵を切らないまま進んでいく様相を呈している。
3月9日付の新聞の第1面に、当該紙を含む全国25地方紙が共同で行った「今後の原発政策のあり方について」のアンケート調査の記事が載っていた。アンケート調査は、「3.11大震災」の10年を機に始められたという。したがって、2021年から数えて今年で5回目となる。回答は最も少ない2022年で2636件、最も多かったのが最初の2021年の6248件、そして今年が4473件、とある。これで日本国民の総意を表しているか、となると確たることは言えないが、そこそこその傾向は表しているのではないかと思っている。
それによると、「すぐ廃炉すべき」や「脱原発を急ぐべき」の脱原発派は、2021年60.5%、2022年46.6%、2023年35.7%、2024年(能登半島地震直後?)44.1%、2025年34.9%と、50%はおろか最早40%を切るまで減ってしまっている。2022年以降は、「分からない」の回答がほぼ8%弱と一定しているから、脱原発派が減った分、原発推進派が増えたことになる。「3.11大震災」から14年が経ち、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の類なのか、それともあまりの電気料金の高騰に「背に腹は代えられぬ」と考え方を変えたのか、いずれにしても多くの国民は原発を容認する方向に傾いてきているらしい。近年の異常気象対策を考える時、原発は脱炭素の有効手段である、との見方も推進に傾く要因なのだろう。
ただ、残されたままになっているデブリの取り出しの見通しも立たないし、除染で集められた大量の汚染土の保管・放射能汚染処理・再利用など、地元には未解決の問題が山積していて、「喉元過ぎれば…」などとのんきなことを言っておれない、との想いの方が多いのではないだろうか。恐らく先のアンケートも、原発が立地している地域の住民とそうでない地域の住民と分けてアンケートを実施したら、全く違う結果になっていたのではないかと思う。また、個人の所得から納税する復興特別所得税(通常の所得税額に2.1%を掛けた金額)が2037年まで施行期間となってることを考えても、喉元過ぎるにはまだ早い。「3.11大震災」と大船渡市の山林火災の両方で被災した方の『やっとこれからという時に…』と絞り出していた声が、頭から離れない。
【文責:知取気亭主人】
ヒメリュウキンカ
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