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知取気亭主人の四方山話
 

『単なる思い込み?』

 

2025年4月23日

最近、再確認したことがある。言葉のプロでも意外な間違いをすることがある、ということだ。先日NHKのアナウンサーがある言葉を誤読して、こんなところにも仲間がいた、と秘かにニヤついている。「面白い!」と思ったので咄嗟に書き留めて置いた。先月3月11日のNHKテレビでのことだ。夜のニュースの後半にスポーツコーナーがある。その中で『つらくも…』という表現が使われたのだ。聞いた瞬間「スポーツで使うなら、“からくも”じゃないのかな?」と首を傾げたところ、思った通り直ぐに訂正のコメントが入った。『先ほど“つらくも”と言ったのは“からくも”の間違いでした』と。漢字では「辛くも」と書く言葉だろう。確かに、どちらにも読めないことはないから、前後の文脈から判断するしかない。とは言うものの、間違いを犯すほど難しい言葉ではないような気がする。

なんて偉そうなことを言っているが、この様に他人のミスは気付きやすい。ところが、自分が犯すのはなかなか気付けない。気付けないからこそミスを犯す。はたから見ていると「何でそんな事…」と思う様な事を仕出かしてしまう。根っからの“おっちょこちょい”なのか、小生も結構ミスをすることが多い。特に最近、電子機器が増えて来て、不慣れによるミス、と言うか不慣れによる思い込みで冷や汗をかくことが続いている。はたから見ている若い人は、「何であんな簡単なことが…」と思っているのではないかと思う。

ひと月ほど前、会社の近くにあるカレー屋さんに行った。券売機で食券を買い、それを店員に見せて注文するシステムだ。券売機は、丁度目の高さ辺りにメニューが並んでいる。メニューが並んでいる窓の右下に、料金投入口と皿が取り付けられている。あれこれ迷った末に注文メニューを決め、硬貨を皿に載せて投入した。ところが、である。上手く入っていかない。アレッおかしいな、と思いながらよくよく見ると、硬貨投入口だと思ったのは札用のもので、皿だと思ったのは札を乗せる台だったのだ。

しかし、気が付くのがちょっと遅かった。硬貨は、本来札が吸い込まれていく隙間に挟まったまま、妙にギザギザを輝かせている。『取れるものなら取ってみな!』とでも言いたげだ。「このままでは後からくるお客さんが食券を買えない」、そんな思いが頭をよぎる。指と免許証を使い何とか掻き出したのだが、最後の一枚がどうしても取れない。仕方なく店員に事情を説明して助けを求めた。すると、フライ返しを持って厨房から出て来てくれた。手早く奮闘してくれるのだが、やっぱり居座ったまま動かない。2、3度やってダメだと知ると、次の対応も早かった。券売機を管理する職員を呼びに行ってくれたのだ。

待つ間、お客さんの中から『俺もやった、投入口を間違えたんだ』との声が聞こえてきた。仲間がいてくれたと思うと、何となくホッとする。そうこうするうちに、管理する職員が駆けつけてくれた。一度だけ小生と同じ様に正面からチャレンジしたのだが、やっぱり埒が明かない。すると、「これでどうだ!」とばかりに、開錠して券売機の正面カバーを開けた。そこには、頑なに戻るのを拒んでいた硬貨が、「俎板(まないた)の鯉」の如く、何事も無かったかのように鎮座している。それを見た時の安堵感と言ったらない。丁寧にお礼を言って、やっとお目当ての注文をすることができた。

ヤレヤレと椅子に座り、考えてみた。すると、券売機ではないが、これまでにも精算機で2度往生したことを思い出した。1度目は、もう4、5年前の事だ。たまにしかいかないマーケットで買い物をし、その清算をする時だ。それまでは、店員が精算までやってくれるレジを使っていたのだが、その時はもう既に、客が自分で操作する精算機が全てのレジに導入されていて、現金であれカード支払いであれ、“店員任せ”は出来ない状態だった。それでも、これ位の機械の操作など大したことはない、と高を括っていた。ところが、いざやってみると、肝心要のクレジットカードの挿入口が解らない。操作パネルの下をこの辺りだろうと探すのだが、一向に見当たらない。領収証やカード明細書が出てくる口があるばかりだ。しびれを切らして、店員に助けを求めた。すると、確かにありました。操作パネルと同じ高さの、精算機本体の右側に、付け足しの様に取り付けられている。もっと目線を上げれば気が付いたのだろうが、思い込みとは恐ろしいものである。

2度目は昨年、病院の精算機でのことだ。先の経験があったことから、もう慣れたものだと、長蛇の列にも臆せず並んだ。自分の番が来て、いよいよクレジットカードを入れるところまできた。ところが、やはり挿入口が見当たらない。先のマーケットに倣い、「ここだろう!」と操作パネルの右側側面を見ても、ない。操作パネルの下、精算機正面にも見当たらない。最後の手段とばかりに、一度精算機から目をそらし全体を眺めるようにし、改めて上から下へ舐めるように見て行った。すると、最下段のテーブルの上に別あしらえと思われるカードリーダーを見つけた。1mほどの高さのところに取り付けられているのを見つけたのだ。分かってしまえば「なーんだ!」となるのだが、なかなか見つけにくいところにある。負け惜しみではないが、思い込みが原因なのだろう。

とは言うものの、これだけ精算機など目の前の機械操作がおぼつかなくなっているということは、単なる思い込みだけが原因なのだろうか。余り認めたくはないが、視野が狭くなってきていることもあるのではないかと思う。寄る年波に抗ってはいるのだが…。


【文責:知取気亭主人】


『散る桜残る桜も散る桜』なんて歌があったなぁ
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