|
2025年5月14日
世界が注目していた、キリスト教カトリック教会の新しい後継者が決まった。全世界に約14億人とも言われる信者を抱える、巨大宗教組織のトップである。日本語訳だと、「教皇」と呼ばれる。前教皇の死去に伴い、5月7日から次の教皇を決める選挙(コンクラーベ)が行われた。すんなりとは決まらなかったようで、8日午後に行われた4回目の投票でやっと決まった、と報じられている。信者たちにとっては、待ちに待った“白い煙”だったに違いない。14億人ものトップを決める投票に参加できたのはたったの133人の枢機卿だけで、しかもこの枢機卿たちは新しい教皇が選ばれるまで外との接触が一切禁じられているというから、正に密室の中での選挙だったということになる。
ただ、そうしたヤキモキした選挙の過程はともかくとして、新しい教皇が決まり、信者たちはさぞかしホッとしていることだろう。第267代のローマ教皇に選ばれたのは、初のアメリカ出身者だという。そして、あまり耳に馴染みのない教皇レオ14世、と名乗るらしい。それにしても、第267代にもなるとは、何とも凄い歴史だ。西暦と共にあるのだろうから、2千年余も途絶えることなく脈々としてその組織が受け継がれてきたことは、宗教の凄味を感じてしまう。どなたが言ったか忘れたが、世界で最も長く続く組織は宗教だという。その方が100年、200年と長く存続する組織にするにはどうしたらよいかを考えてみたところ、範を宗教に見つけ、同じ服装をして、同じ呪文や経文などを唱え、同じ偶像や聖地を敬うことが秘訣だ、との解釈に行きついたらしい。
確かに、世界三大宗教と言われるキリスト教、イスラム教、仏教は、いずれもその三つの要素が備わっている。そして、一番古い仏教で2500年程、最も新しいイスラム教でさえ凡そ1400年余りも続いている。後継者不足に悩む組織にとっては、そうした宗教の継続性は羨ましい限りだ。尤も、宗教といっても一括りにすることはできない。組織力の弱い日本の仏教界、特に地方の名も無き寺院にとっては、極めて深刻な問題となっている。中には後継者不足などを理由に宗教法人の身売りも報じられており、小生など、確たる根拠がある訳ではないが、買い取られた法人は法の盲点を突いて犯罪に利用されているのではないか、と疑っている。宗教法人の売買を仲介する会社もあるらしく、最早社会問題化している、と言っても過言ではない。
そのように、どんな組織に於いても、少子高齢化が急速に進む今の日本に於いては、後継者不足は頭の痛い問題である。中でも中小の組織にとっては極めて深刻で、後継者が見つからず止む無く廃業、なんてケースは引きも切らない。後継者が見つからない多くのケースは、子供であれ他人であれ、受け継ぐ世代にとって、その生業が「よーし受け継いでやろう」という気にさせるほどの魅力がない、ということなのだろう。特に、個人経営している場合は、例え子供がいたとしても、「親が苦労してきた姿を見ていたらとても継ぐ気になれない」とか、逆に親の立場からしても、「こんな苦労は子供にはさせられない」などの想いが先に立ってしまうケースが多いに違いない。そうなると、残念ながら廃業ということになる。特に農業においてその傾向は際立っている、と感じている。中でも、大規模経営が難しい中山間地域での農業は、魅力に欠ける最たる生業に思われる。
静岡の山間で茶農家を営む従兄によれば、中山間地区だけに、お茶やキウイなど、殆どの農産物を無農薬で栽培できているが、近年は、これまで気にかけてきた害虫や天候ばかりでなく、イノシシ、シカ、カモシカ、ウサギなど、増えすぎた害獣にも往生している、と嘆く。しかも、丹精込めて育てた農産物をこれら害獣が荒しても、鳥獣保護法がネックになって滅多やたらに駆除できない、と電話の向こうで怒り口調で言う。そして、『家の前の道路をシカやカモシカが集団で闊歩していても、どうしようもできないのは堪らん悔しいぜ』、と憤懣やるかたない様子だ。加えて、繰り返し、鳥獣保護法は山間地域の農家にとって、まったくもって理不尽だ、と熱弁を振るう。『こんなに苦労するんじゃ、子供に後を継いでくれとはとても言えんし、後継ぎとして手をあげるのもいない』と、後継者問題にまで及んできた。代々受け継がれてきただけに自分の代で終わらせてしまうのは寂しいんだろうな、と思う。でも、次の一言でさすが従弟、と感心してしまった。
『我々農家は後継者不足で苦労するのに、政治家が後継者で苦労したなんて話は聞いたことがない』、『余程、魅力や“うまみ”のある職業なんだな』、と鋭い指摘をする。確かに、今の国会議員の中にも二世、三世議員が多い。親の地盤を引き継いで立候補したという話はよく聞くが、そうした要請を断って立候補しなかった子供がいた、という話は聞こえてこない。親や周りの強い要請に応え、引き継いでいるのだろう。だとすると、政治家というのは余程魅力があるのに違いない。どこにそんな魅力があるのだろうか。もしあるのであれば、そうした自らの経験を基に、後継者不足に悩む組織の課題を政治解決する、そんな先頭に立ってほしいものである。
【文責:知取気亭主人】
ツツジ
|
|