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知取気亭主人の四方山話
 

『そこに正義はあるんか?』

 

2025年6月25日

我々夫婦が、珍しく面白がっているテレビコマーシャルがある。元タカラジェンヌの大地真央さんが鮨屋の大将女将を演じているあのコマーシャル、と言えばピンとくる人も多いだろう。どれほどのパターンがあるのか知らないけれど、笑えるものからくだんの鮨屋の様なシリアスなものまで、これまで数多くのパターンのコマーシャルが流されている。そのどれもが洒脱で面白い。その一連のコマーシャルの根底に流れ、大地真央さんが語り掛けることの多かったセリフが、社名をもじった『そこに愛はあるんか?』だ。中には取って付けた様なシリーズも無きにしも非ずだが、コマーシャルと言うよりは洒落たショートコントだと思って、楽しませてもらっている。

その『そこに愛はあるんか?』というセリフ、ちょっと言い方を変えるだけで結構使えるのではないか、と前々から思っていた。使い勝手の良いフレーズだと勝手に思っていたのだ。最近も、「どうにかならんのかな」と思える事案が彼の地アメリカ絡みで巻き起こっていて、思わず『そこに正義はあるんか?』と問いかけたくなってしまった。今回はその内の2件を話題として取り上げるが、どちらも皆さんよくご存じの事案だ。そしてどちらも、“やられたらやり返す”という負の連鎖を生む可能性が極めて高い事案である。

ひとつは、大リーグ(MLB)での出来事だ。大谷選手が所属するドジャースとパドレスとの4連戦が、両軍ともにデッドボール(以後、死球)が飛び交う、実に荒れた試合になってしまった。中でも4連戦最後の試合では、死球をきっかけに両軍監督が退場処分を受ける、“警告試合”となっていた。日本のスポーツニュースやネットニュースでも頻繁に報じられているから、皆さんご存じだと思うが、この指揮官不在となった試合で大谷選手が9回に4連戦2回目となる死球を受け、当てた元阪神のスアレス投手は危険投球とみなされ退場となってしまった。故意の死球と疑われたらしい。

こんな時、MLBのニュース映像でよく見られるのが、当てられたバッターがピッチャーに向かって突進し、両軍入り乱れて殴り合う乱闘シーンだ。それまでの死球合戦ともとれる荒れた試合が伏線としてあったから、この時も、両軍ベンチは一触即発の状態だったに違いない。ところが死球を当てられた当の本人大谷選手は、映像を観る限り至って冷静で、ベンチに向かって、「自分は何ともない」と見て取れる仕草をしたり、グラウンドに飛び出そうとしていた選手に「出て来なくていい」と言わんばかりに手で制していたりした。なんとも紳士的な振る舞いをしたのだ。その後、相手チームのパドレスベンチに歩み寄り、怒りの様子も見せずに何やら会話をしていた。 “やられたらやり返す”というこれまでの大リーガーと真逆の大谷選手のそうした紳士的な振る舞いは、アメリカでも称賛されているらしい。そうした大谷選手の振る舞いのお蔭だろう、一触即発の状態だったにもかかわらず大乱闘に至らずに済んだ。日本人として誇らしい限りだが、大谷選手は常に無意識のうちに、「そこに正義はあるんか?」と自問自答しているのではないだろうか。そんな大谷選手の爪の垢でも飲んで欲しいのが、二つ目の当事者トランプ大統領である。

大統領に就任以来、何かと世界を騒がせ翻弄してきたトランプ大統領、遂に他国を攻撃するという蛮行を仕出かしてしまった。21日(日本時間22日)、自身のSNSで、米軍がイランの核施設3カ所を攻撃したと発表したのだ。13日にイスラエルがイランへの空爆を始めて以降、トランプ大統領の動向を固唾を飲んで見守っていた世界の為政者たちは、「まさか本当に攻撃するとは…」と言葉を失っているに違いない。イラン側の対応次第では、世界に深刻な影響を及ぼす恐れがあるからだ。

核兵器開発の疑惑があるにせよ、突然ロシアからの侵略を受けたウクライナと同様に、突然イスラエルからの攻撃を受けた被害国はイランである。そのイランに当事者でもないアメリカが、救いの手を差し伸べるどころか、弱った国体に追い打ちをかける様に有無を言わさず攻撃を仕掛けたのだから、理不尽極まりない。この状況を見ている世界の国々に『そこに正義はあるんか?』と問えば、常識ある国々は、『無い!』と即断するに違いない。

大谷選手がそうしたように、何故トランプ大統領は仲裁役を買って出なかったのだろう。ノーベル平和賞を狙っているのであればそれくらいは汗をかかなければいけないだろうし、そのチャンスはいくらでもあった筈だ。国力の違いを見せつけ、「この辺で止めてやるから交渉のテーブルに着け、さもなくばもっと痛めるぞ」、と脅しをかけている様に見える。いくらイスラエルと仲が良いと言っても、人の道を外れてはいけない。そんな道理が通る御仁ではないと分かっていても、ついつい愚痴りたくなってしまう。

6月23日は沖縄慰霊の日だというのに、平和の願いは霞み始め、俄かにキナ臭くなってしまった。噂されている様にホルムズ海峡が閉鎖されれば、我が国を始め多くの国に甚大な影響が及ぶ。戦争拡大は何としてでも防がなければならないのに、その手立てが見えない。「そこに正義はあるんか?」、そんな問いかけが空虚に聞こえてしまうのが、とても怖い。

ただ、これをほぼ書き終えた24日、「イスラエルとイランが完全な停戦で合意」との驚きのニュースが報じられている。トランプ大統領のSNS投稿によるものだ。それが事実だとすれば、取り敢えず殺し合いが行われずに済む、とホッとしている。とは言え、イランの人達に刻まれた憎しみは、当分消えそうもないことだけは確実だ。まだまだ予断は許さない。


【文責:知取気亭主人】


アジサイ
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