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知取気亭主人の四方山話
 

『もはや亜熱帯』

 

2025年7月30日

27日の日曜日、毎年恒例となっている町会の草刈りがあった。小学生がラジオ体操をする小さな公園や僅かばかりの緑地、そして歩道を対象にした、ほぼ手鎌で済む程度の草刈りである。いつもの様に朝の涼しいうちに片づけてしまおうということで朝6時半からの作業開始だったのだが、今年の暑さは尋常ではなく、朝から暑い。熱帯夜だった気温は、朝方になっても下がることもなく、カンカン照りもあって一直線に上昇している。余り感度のよろしくない我が身の温度センサー頼みではあるが、6時半の時点で、恐らく既に30℃近くあったに違いない。お蔭で、たった一時間余り草取りしただけなのに、長袖の作業着は汗でぐっしょりだ。

そんなことを多くの住民が予見していたのか、『今年は参加者が少ない』と町会役員の一人がこぼしていたが、実際参加してみるとこの暑さではさもありなんだ。しかも、古い団地だけに高齢化が進んでいて、それも参加人数が減る原因の一つになっている。病気がちであることもさることながら、高齢者は熱中症に弱いからだ。命の危険がある暑さと良く言われるようになったが、高齢者にとっては全くその通りだ。

それでも何とか草刈りを終え、この尋常でない暑さにウンザリとしながら家に向かって歩いていると、違うコースを帰って来たご近所さんと出会った。小生より少し先輩のそのご近所さんは、軽く会釈をして開口一番、『温帯から亜熱帯になってしまったみたいだね!』と嘆く。『本当、その通りだね!』と小生。冗談抜きにしてその通りだと思う。何しろ北海道の北見市や帯広市などで40℃近くも記録したというのだから、亜熱帯どころか熱帯と言ってもいいぐらいだ。

テレビでは、天気予報のコーナーばかりでなく、一般ニュースのコーナーでもこの異常な暑さを連日伝えている。映し出される日本地図の殆どは、赤色と濃赤色、或いは赤紫に、べったりと塗られている。それを見るだけで暑さが伝わり、「今日もか!」とげんなりとしてしまう。一雨来れば気温も下がるのだが、それもない。これを書いている29日は、今シーズンこれまでで最多の37都府県に熱中症警戒アラートが発表されているという。日本の約8割にも、である。草刈りどころか散歩さえも控えるよう注意喚起されているのだ。

これだけ異常な暑さが続くと、伝統的な暑さ対策だけでは、その効果のほどはさほど期待できない。「打ち水」や「夕涼み」、「風鈴」など、これまで夏の風情ある風景として馴染んで来た日本語も、もはや死語になってしまった感さえある。それもこれも、ご近所さんが言う様に、日本が亜熱帯化してしまったからだと思う。

手元に昭和53(1978)年発刊の『帝国書院編集部編 新詳高等地図 初訂版』(帝国書院 1978)に、世界を13の気候に色分けした「世界の気候区と海流」という資料が掲載されている。それによると、(発刊以前のデータではあるが)当時の日本は、ほぼ東京以南が「温暖湿潤気候」、東京以北が「亜寒帯多雨気候」に区分けされている。ただ、恥ずかしながら、どちらも学んだ記憶がない。逆に、記憶の片隅にはあるのに、友人も言っていた「亜熱帯」という区分けはない。「温帯」や「寒帯」などの区分けも見当たらない。我々が学んだのは、一昔前の区分けだったのかもしれない。

それはともかくとして、当該地図帳の巻末に面白いデータを見つけた。主要都市の月の平均気温(1941年〜1970年の平均)だ。この中で、小生が住む金沢と先日(24日)38.8℃の驚きの高温を記録した帯広市、そして「熱帯雨林気候」に区分けされているシンガポールに着目してみた。それら3都市のデータに日本の2都市については今年の気象庁観測データを加え、下表を作成した。

都 市 観測年・期間 5月(℃) 6月(℃) 7月(℃) 8月(℃)
帯広市 1941年〜1970年の平均 10.7 14.3 18.5 20.0
2025年 (※) 13.2 19.6 24.5)
金沢市 1941年〜1970年の平均 16.5 20.4 24.8 26.2
2025年 (※) 18.2 23.7 29.3)
シンガポール 1941年〜1970年の平均 27.8 28.0 27.4 27.3

※:気象庁発表のデータで、数値の後の「)」は観測継続中を、「―」は未観測を表す。

この表を見ると、今から84年〜55年前に比べると、今年の5月、6月、7月(7月はまだ観測中ではあるが)は、金沢市でそれぞれ1.7℃、3.3℃、4.5℃も高く、帯広市に至っては2.5℃、5.3℃、6℃も高くなっている。また、金沢は6月あたりからシンガポールの気温に近くなり、まだ観測途中ではあるが7月に至っては逆転してしまっている。恐らく8月も逆転してしまうのではないかと思う。今年の夏は帯広でさえシンガポールに迫っている。正に亜熱帯化、それどころか熱帯化が急速に進んでいる実態が見て取れる。それに加えて、尋常ならざる湿度。我々が高温多湿に耐えられる体に進化しない限り、住める環境ではなくなってしまうのかもしれない。恐ろしいことだ。


【文責:知取気亭主人】


ジャスミン
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