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知取気亭主人の四方山話
 

『弥縫策』

 

2025年8月13日

8月6日、白内障手術の為の事前検査に行ってきた。昨年夏に受けた弁膜症の手術以来、病院には定期的に検診に行っているのだが、8月に入っては初めてだ。これまでの受診だと、継続して受診していれば、月が替わって初めて行く時だけ健康保険証(以下、保険証)を提示すればよかったが、マイナンバーカードが保険証の役割も果たすようになってからは、継続受診していても、受付時の手間はかえって増した様に感じている。マイナンバーカードを財布から取り出しにくいこともあるのだが、カードリーダーによる認証作業もひと手間必要で、面倒くさがりの性分もあって、何とかならないものかと思っている。加えて、診察券は別途毎回必要で、年と共に指先の動きが鈍くなって来ている身としては、セキュリティー上到底無理だと分かっていても、何とか診察券1枚で完結しないかな、と秘かに願っている。しかし、その秘かな願いは叶えられそうもない。『保険証はマイナンバーカードに統一され、これまでの紙の保険証は無くなります』とのアドバルーンは大々的に上がったものの、病院に持っていくカードは一向に減りそうもないのだ。

その保険証に関連して、先月の中頃、県からある封書が届いた。中には、『後期高齢者医療資格確認書』(以下、『資格確認書』)なる紙のカードが入っていた。カードの発行元は「石川県後期高齢者医療広域連合」とある。発行元は違うようだが、後期高齢者ではない(高齢者ではあるが)妻にも、似た様なカードが届いている。同封されていた説明文を読むと、既に保険証と紐付けしている人はマイナンバーカードを「マイナ保険証」として使うことが出来るし、紐付けしていない人は勿論だが紐付けした人でも、同封した『資格確認書』を保険証の代わりとして利用することができるという。何のことはない、保険証が有効であったこれまでとほとんど変わらぬ手続きで受診できるのだ。

この『資格確認書』の発行に代表される様に、「マイナ保険証」導入に関して政府のやっていることは、どうもチグハグだ。成長の早い子供の「マイナ保険証」を有効利用するには、顔認証ではなく暗証番号を覚えておくことが必須だし、作り替えを頻繁に行う必要がある。したがって、子供が多い家庭は苦労すると思う。また、我々のような高齢者が、加齢によって今より皴が増えたり、禿げたり、極端に太ったり痩せたりしたら、恐らく顔認証は難しくなるだろうし、更には「暗証番号なんて覚えられない」となりかねない。そんな不安や疑問がある中でのスタートだけに、大きなアドバルーンを高々と上げては見たものの、どうしてもチグハグな対応が目立つ。8月9日付の北陸中日新聞朝刊(以下、新聞)は、そうした政府の対応を、「相次ぐ弥縫策(びほうさく)だ」として非難している。

弥縫策、初めて聞く言葉だ、調べてみると、「その場しのぎの対策」とか「間に合わせの対策」などの意味があるらしい。「弥」も「縫」も、どちらの漢字も裁縫に関連する意味があると言い、「弥」は「ほころびを繕(つくろ)う」という意味が、「縫」には「縫い合わせる」という意味があるらしい。二つ合わさって、「物事を取り繕う」という意味になるらしい。

そうした意味だとすると、「マイナ保険証」に関して取られた今回の対策は、新聞が指摘する様に、確かに弥縫策だと思う。ただ、それだけではない。その「マイナ保険証」関連の対策以外にも、日本政府が打ち出す政策や対策の中には、弥縫策だと非難されても仕方がないものが結構目に付く。少し前で言えば、新型コロナウイルス騒動の際の“布製マスクの配布”しかり、“ワクチン確保騒動”しかりだ。パンデミックに対する課題の洗い出しやその対策がおろそかにされていたことで、図らずも露呈してしまった、と言える。国家の危機に対する想像力の欠如が根本にあるのではないだろうか。

また最近で言えば、“令和の米騒動”と揶揄される、米不足と米価高騰への対策も、明らかな弥縫策だ。コメ余りだと言って安易に減反政策を続けて来たこと、もう直ぐ新米が出るからと言って備蓄米を放出しなかったこと、その後一転して放出したことなど、腹立ち紛れに挙げればきりがない。あれだけ食料自給率の低下が危惧され続けているのに、国民の主食たる米を戦略物資に育て上げる基本戦略が描けなかったのは、弥縫策でも運よく何とかやってこれたから、かもしれない。

もっと最近で言えば、政府与党が検討している、物価高対策の一環として全国民を対象とした2万円の現金給付、これも野党からは批判の声が上がっている。弥縫策だと直接言及されている訳ではないが、旗色は悪いように思うし、小生の様な意地悪爺さんから見たら、弥縫策の典型ではないかと思えてしまう。

ただ、突然のパンデミックへの対応や新たなマイナ保険証制度への取り組みなど、新たなことに取り組もうとすれば、思ってもみなかった事態が発生することは十分にあり得ることだ。それでも、出来得る限り想像力を働かせ、思いもかけない事態を極力少なくする、それが肝要だと思う。その為には、事前の準備を怠らず尚且つ幅広く意見を聞く、そうした柔軟な姿勢が必要だと思うのだが…。


【文責:知取気亭主人】


百日紅
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