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2025年9月10日
先々週と先週、予告なしに二週も続けて筆休みとさせてもらった。その理由は、先月末に片方ずつ2回手術を受け、ほぼ一週間入院していたからだ。歳を取ると多くの人が罹る白内障と、厄介な緑内障の手術である。これまで受けた前立腺や弁膜症の時と違い、今回は文章を書く際にお世話になって来た肝心要の眼だけに、入院中も退院直後もパソコン画面を見入ることができず、休肝日ならぬ休眼日として、勝手ながらお休みとした。まだ視力は安定しておらず(安定するのに術後一カ月ほど掛かるらしい)、術後の回復した視力に合ったメガネがまだ作れないでいる。だが、あまり休み過ぎると気力の方が萎えてしまうのが怖い。そこで、休み休みだったらもういいだろうと自己判断し、今回から再開することとした。入院の様子は次回改めて書くとして、再開最初の今回は、入院直前に駆け込みで読んだ(見た?)或る写真集を紹介したいと思う。
今年は、早くからメディアで喧伝されている様に、戦後80年という節目の年だ。そして、ギラギラと太陽が照り付けるこの夏は、先の大戦で犠牲になった人たちへの鎮魂の季節でもある。主だったものを挙げれば、@6月23日は沖縄の組織的戦闘が事実上終わった日とされる「沖縄慰霊の日」、A8月6日は広島に人類史上初めて原爆が投下された「広島平和記念日」、Bその3日後の8月9日は原爆が長崎に投下された「長崎原爆の日」、そしてC8月15日は太平洋戦争が終わった日として、日本各地で戦没者を追悼する催しが行われる。また、今月の9月2日は、アメリカの戦艦ミズーリ号の艦上で日本の無条件降伏文書の調印式が行われた日である。
この様に夏になると毎年鎮魂の思いを新たにするのだが、戦後80年もの長い年月が経ち、悲しいかな、太平洋戦争を知る世代は減り続けている。昭和24年(1949年)生まれの小生も、戦前・戦中の様子は全く知らない。子供の頃に時々目にした、物乞いする傷痍軍人や僅かに残っていたバラック小屋に、戦争の悲惨さを垣間見た記憶があるだけだ。この場で紹介するのは、そうした戦争の悲惨さを体験していない我々戦後世代に、戦前・戦中や終戦間際の様子をリアルに伝えてくれる写真集だ。庭田杏珠氏と渡邉英徳氏の共著、『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社 2020)である。タイトルにある様に、白黒写真をカラー化した写真集だ。「カラー化の手法は、AIと写真の当時を知る人との対話から得られた情報で修正していった」と説明されていて、まるっきりAI任せではないとある。だから凄くリアルなのだと思う。
白黒と違い、後付けとは言えカラー化の効果は見事だ。今のカメラで撮ったのではないかと思える程自然な風合いのカラー化写真は、この目で見たのではないかと錯覚するほど臨場感がある。人物の写真など、“正に生きている”ということを感じさせるし、その場に一緒にいる錯覚さえ覚える。カラー化の効果がこれほどあるとは思わなかった。
掲載写真には、自分以外の家族が全員亡くなったという方の、家族の在りし日の日常が生き生きと蘇る写真も掲載されているし、焼け野原になった広島市街を見つめるカップルの写真なども載っている。二人は、何を想い、何を語らっていたのだろう。絶望的な心境なのか、それとも明日への希望なのだろうか。また、終戦直後にマーシャル諸島で撮影されたとされる、肋骨が浮き上がるほどやせ細った日本兵たちの写真は、南方戦線の過酷さが嫌と言うほど伝わってくる。特攻に飛び立つ前の若者たちも掲載されているが、彼らの笑顔に胸が締め付けられる。
そうした写真も含め、この本には多くの写真が収められている。その一枚一枚に、関わった人たちの一瞬の人生が見事に切り取られている。胸が締め付けられる写真もあれば、ホッとさせられる写真もある。この本に収められたそうした貴重な写真を見て、感じる事が、我々戦後世代に課せられた先達からの宿題なのかもしれない。とにかく、是非一度手に取ってみて欲しい。そして、一家に一冊、代々読み続ける保存版として残しておいて欲しい一冊である。
【文責:知取気亭主人】
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「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」
【著者】 庭田 杏珠 著 渡邉 英徳 著
【出版社】 光文社
【発行年月】 2020/7/14
【ISBN】 9784334044817
【頁】 472ページ
【定価】 1,650円(税込)
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