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知取気亭主人の四方山話
 

『彼岸花』

 

2025年10月1日

秋の彼岸(9月20日〜26日)も終わり、ようやくうだる様な灼熱地獄から解放された。連日、日本のどこかで「熱中症警戒アラート」が発表され続けた。この“命の危険を感じるほどの暑さ”は一体いつまで続くのだろうと思っていたが、「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、ここに来てやっと少し遠ざかってくれた様だ。これで、一年の3分の1以上も続いた、昼間のあの“むせ返る様な暑さ”と“寝苦しかった熱帯夜”とも、ようやくおさらばできる。ここ金沢でも、朝晩めっきり過ごし易くなって来た。まだまだ平年に比べれば気温は高いものの、日が沈み始めると俄かに虫の声が大きくなって来ていて、気分的にも夏の終わりを感じられる様になった。そして、夜露もしっかりと降りる様になった。半世紀以上も前の子供の頃に比べると、日中も夜中も気温はまだまだ高いが、それでもやっと心地よい風が吹く様になって来た。有難いことだ。

それにしても、先人達は、自然を鋭く、そしてつぶさによく観察していたものだ。ほとほと感心する。冒頭の「暑さ寒さも彼岸まで」など、本当に言い得て妙だと思う。また、同じ様に秋の彼岸の頃の格言だと思われる「暑さ忘れれば陰忘れる」なんて言い方も、その通りだと思う。「暑い時には日陰の有り難さを痛感していたのに、暑さを感じなくなるとその有り難さを忘れてしまう」という実体験にかけて、「受けた恩を忘れるのは早いものである」という意味で使われる。成る程、上手いことを言うものである。自然とヒトの心模様をよく観察していればこそだ。そんな、観察眼の鋭さや、人や国々によってのそれぞれ感じ方の多様性を、名付けられたその名前から気付かせてくれる植物がある。まさに、今を盛りにと咲いている「彼岸花」だ。

つい先日、とあるニュース番組のお天気コーナーで、「彼岸花」の異名に関するクイズが出された。残念ながら二択のうちの不正解の方は忘れてしまったが、正解が「雷花(カミナリバナ)」だったのを覚えている。説明をうわの空で聞いていて、「そうか、空に向かって開く、真っ赤なあの花の様子は確かに稲妻に似ているな」と勝手に納得したのだが、どうやら違う説もあるらしい。と言うよりも、ネットを調べると小生が納得した説には辿りつけず、どうやら独りよがりの珍説だったらしい。「雷花」と名付けた人は小生と同じ様に感じていたのに違いない、と一人悦に入っていたのだが…。それはともかくとして、興味のある方は、小生の珍説に惑わされることなく、調べてみていただきたい。また、「雷花」命名の謂れをご存知の方は、是非一報ください。よろしくお願いします。

なんて厚かましいお願いをしたが、この「彼岸花」、一説によると、“別名”というか“異名”が、驚くなかれ千を超えるのだという。小生など、つい先日手に入れたばかりの前述した「雷花」と、子供の頃ラジオから聞こえてきた「♪赤い花なら 曼殊沙華 オランダ屋敷に 雨が降る…♪」(長崎物語)の唄をきっかけに覚えた「曼殊沙華(マンジュシャゲ)」、そして本家本元の「彼岸花」の三つしか知らない。

必ずと言って良いほど秋の彼岸の墓参りシーズンに合わせて咲くその律義さ。そして、花の少ない時期に葉も付けずスーッと伸びた茎に真っ赤な花を一輪だけ付け、一斉に天に向かって咲き誇るその強烈な姿や色。そうしたことを考え合わせると、広く行き渡っている「彼岸花」と、お釈迦様関連から名付けられたと聞いたことのある「曼殊沙華」以外無いだろう、と勝手に思っていた。ところがどっこい、である。

人によって、またお国によって、物事の捉え方や感じ方が変わるのは承知しているつもりだったが、千差万別とは言え、ひとつの花の見方がこうも変わるとは、何とも不思議な花である。『和の暮らし』というサイトにこの「彼岸花」のことが詳しく述べられていて、それによれば(https://linderabella.hatenadiary.com/entry/engi/flower/Higanbana)、学名を「Lycoris radiata」(リコリス ラジアータ)と言うらしい。そして花言葉は「独立」「情熱」、とある。“墓にまつわる花”としてどちらかと言えば忌み嫌って来た感のある日本と比べ、随分と違う捉え方をしているものである。尚且つ、お釈迦様関連と書いた「曼殊沙華」も、同サイトによれば、「経典『法華経』を説いたのを祝って天から降ってきた花の1つとされる」、と説明されている。つまり、お祝いの花、目出度い花なのだ。面白い話である。

ただ、日本ではどちらかと言えばマイナスイメージの異名が多いようだが、食料が乏しかった昔、飢饉の時には毒のあるこの彼岸花の球根を食べていたというから、救いの花でもあったのだと思う。だとすれば、「救い花」とか「お助け花」とか、あるいはもっと有り難い名前で呼んでいる地方はないものなのだろうか。上記のサイトにはそうした別名は見当たらなかったが、ありそうな気がする。そう思いませんか、皆さん!


【文責:知取気亭主人】


彼岸花(異名が千以上とは…)
彼岸花(異名が千以上とは…)

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