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2025年11月19日
今から70年程前、生まれて初めて給食を食べた。その時の喜びは、半世紀以上たった今でも鮮明に覚えている。当時の友達にはあまり評判の良くなかった脱脂粉乳も、それまでヤギの乳、しかもたまにしか飲んだことがなかった小生にとっては、格別美味しいものに思えた。アルマイト食器一杯の脱脂粉乳とコッペパン一つ、そしておかずが一品、今から考えれば極めて質素な給食だった。それでも、日本食伝統の一汁一菜、しかも時におかずは漬物だけという食事しか経験のなかった身にとって、脱脂粉乳が飲め、コッペパンが食べられるだけで、給食の時間はものすごく楽しいものだった。食べられないで残す友達から、余ったコッペパンを貰う楽しみもあった。
時は昭和30年代前半(1955年から1960年ぐらいにかけて)、周りにはまだ太平洋戦争の傷跡が残っている所もあって、我が家も含め、貧しい家庭が多かった時代でもある。そして、どの子も育ち盛りの胃袋を抱えていた。そんな時に経験した給食だ。本人にとっても、親にとっても、どれだけ助かったことか。やがて日本は高度成長時代へと入っていくわけだが、給食で育った生徒達がその成長の一端を支えていくことになる。それを思うと、飽食の時代を迎え、食品ロスが叫ばれている今の時代にあっても、給食の持つ意義は、今も昔も変わらないのだろうと思う。
その給食、特に小学校の給食について、「政府は、来年(2026年)4月から無償化をする方向で検討に入った」と報じられている。11月14日付の北陸中日新聞朝刊(以下、新聞)によれば、公立校のみを対象にし、保護者の所得制限なしで検討に入った、とある。貧富の格差が拡大し、給食費を払うのもままならない家庭もあると聞くから、無償化は良い政策だと思う。でも、財源はどう捻出するのだろう。『そんなことは政府の責任で考えろ』と言ってしまえばそれまでだが、それではあまりに無責任だろうということで、何か良い方策はないか知恵を絞ってみた。
そこでまず、どれほどの予算が必要か、概算ではじいてみた。新聞によれば、支援金額を決める際の基準としたのが「2023年実態調査での平均月額4700円」だというから、この平均月額を基に概算の必要予算額を計算してみる。
- @ 年間の給食月数:春、夏、冬の長休みを合計2ヵ月とすると、およそ10ヵ月
- A 生徒一人当たりの年間給食費:4700×10=47000 円
- B 生徒一万人当たりの年間給食費:47000円×1万人=47000万円=4.7億円
- C 日本全体の小学生人数:国立教育政策研究所のデータを基に公立は590万人と推定
(https://edpportal.nier.go.jp/edp-bi/graph001)
- D 年間必要予算:4.7億円×590=277.3億円 ≒280億円
以上の計算からすると、年間約280億円の予算があれば、ほぼ全国の公立小学校の給食無償化を実現できることになる。590万人の子供たちの胃袋を一食だけだがほぼ一年間満たすと考えれば、意外と少ない金額で済む。とは言え、この予算をどこから捻りだすかが、課題となってくる。そこで思いついたのが、「止める、いや止めない」、「流れを透明化すればいい」など、相も変わらずの議論を続けている、企業・団体からの政治献金だ。どうなるにせよ、せっかく出してくれると言うなら、これを何とか利用できないものだろうか。そこで、企業・団体からの政治献金がどれほどあるのか調べてみた。
本年6月30日付の朝日新聞のネット記事によれば、公表されている2023年の政治資金収支報告書をもとに調べた結果、企業・団体から主要5政党への献金が約83億円もあったという(https://www.asahi.com/articles/AST6W23ZDT6WUTIL02CM.html)。驚きの額だが、公立小学校に通う全ての生徒の胃袋を満たすには足りない。ただ、3分の1近くにはなる。
日本経済新聞の『なぜ企業は自民党に献金するのか 献金上位10社に聞いた』と題するネット記事(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC05AQ10V00C25A3000000/)を読むと、献金の目的の殆どは「社会貢献」と書かれている。だとすれば、給食無償化への支援は、完全にこの目的と合致する。もっと良いことに、今のままだと政治献金は多くの庶民にとって負のイメージしか抱かれないのに、給食無償化支援は誰が見ても慈善事業であり、間違いなく企業や団体のイメージアップに繋がる。企業・団体名と支援した額を公表すれば尚更だ。業績アップに繋がることだって考えられる。そうしたあれやこれやのメリットを考えると、もう少し頑張って、何とか100億ぐらい集められるのではないだろうか。
どちらかと言えば世の中は世知辛い、とは承知している。とは言え、「政党への献金ではなく将来の日本を担う子供たちへの支援ですよ」と訴えれば、賛同する企業はあまた出てくるのではないか、と淡い期待を抱いている。3分の1などとは言わず、満額の280億円ぐらい何とかできるだろうと思えてしまうのだが、如何だろう。その手始めとして、政治献金で社会貢献するとしている企業に範を示してもらうのだ。さすれば後に続く企業・団体は引きも切らないのではないか、と胸算用をしているのだが、甘いかな。各政党は、自分達の懐に入るわけではないが、「我々の政策に賛同してくれる企業・団体がこんなにも一杯ある」と、堂々と胸を張れる。国民も、企業・団体が給食無償化への支援をしてくれるのなら、自分達の貴重な税金は他の政策に向けることができる、大賛成してくれるだろう。「これぞ近江商人が言うところの“三方良し”の秘策だ」と自画自賛しているのだが、やっぱり絵に描いた餅かな?
【文責:知取気亭主人】
お向かいで飾ってくれる菊
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