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2026年3月11日
よく耳にする「絶滅危惧種」。一般的には、地球上に生息する生物の中で絶滅の危機に瀕している種を指す。『ELEMINIST』(https://eleminist.com/article/2935)によれば、現在確認されている野生生物は、世界に213万9242種以上、そのうちの2%強に当たる4万7187種以上が絶滅危惧種に分類されているという。当然ながら既に姿を消してしまった生物種もあって、それらは絶滅種と定義されている。日本に於いては、ニホンオオカミやニホンカワウソが代表的な例だ。
そうした絶滅危惧種に関して、リスト化した「絶滅のおそれのある種のレッドリスト」(以下、「レッドリスト」)が、よく知られている。スイスに本部を置く「国際自然保護連合(IUCN)」によってまとめられているもので、次の9つのカテゴリーに分類されている。深刻なものから順に、@「絶滅」、A「野生絶滅」、B「深刻な危機」、C「危機」、D「危急」、E「準絶滅危惧」、F「低懸念」、G「データ不足」、H「未評価」となっている。なお、各カテゴリーそれぞれの定義は、先の『ELEMINIST』をご覧になっていただきたい。
日本では、環境省がIUCNの基準に準じた形でリスト化しており、呼び方など多少異なるものの、やはり9つのカテゴリーに分類している(https://eleminist.com/article/2936)。その区分けによれば、今年能登(羽咋市)で本州初の放鳥予定となっているトキは、4番目に深刻な「絶滅危惧種IA類」(ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)に分類されている。また、金沢市近郊や能登地区でも営巣・子育するようになったコウノトリも、同じカテゴリーだ。こうした絶滅の危機に瀕した生物のニュースに接すると、涙ぐましい努力の向こう側に見える人間のエゴが浮き彫りになってくる。
この「レッドリスト」、これまでは野生生物ばかりに焦点が当てられていたきらいがある。しかし、3月2日付けの北陸中日新聞朝刊(以下、新聞)を読んで、絶滅する可能性があるのは生物ばかりではないことを知った。なお、生物以外は「消滅」と表現すべきだと考えるので、以下は消滅を使用する。その上で、絶滅と消滅は同義語と捉えていただきたい。
読んだのは、新聞の21面に掲載されていた、筑波大学宮川創准教授の「消滅危機言語」を守る取り組みだ。「消滅危機言語」とは、古代エジプト語など、岩やパピルスなどにいろいろな形で残されているものの、話す人がいなくなってしまったり、話せる人が少なくなってしまったりしている言語を指している。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の発表によると(2009年2月)、日本のアイヌ語や沖縄語をはじめとして、世界で約6000ある言語のうち約2500が消滅の危機にあるという。
『NATIONAL GEOGRAPHIC』のホームページによれば、消滅が危ぶまれる程度には4つのカテゴリーがあって(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120627/314021/)、最も危険な「極めて深刻」、それに次ぐのが「重大な危険」、そして「危険」、「脆弱」と続く。先に挙げたアイヌ語は最も危険性が高い「極めて深刻」に、沖縄県の八重山語と与那国語が次の「重大な危険」に指定されている。文明の発展と反比例するかのような言語の消滅。脈々と受け継がれてきた文化さえもが言語と共に消滅していくようで、そこに人間の驕りを感じてしまうのはへそ曲がり故なのだろうか。
驕りを感じているのが、もう一つある。消滅危機集落についてだ。ご存じの通り、この四方山話が公開される3月11日は、「東日本大震災」発災から15年目という節目の日に当たる。この15年間に熊本や能登などで大きな地震があったこともあり、未曾有の大災害だったのにも拘らず、被災地以外の人々にとっての関心が薄らいできている感は否めない。ところがその一方で、15年も経ったのに、福島県のホームページによれば、いまだに7市町村(南相馬市、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)の一部は帰還困難区域に設定されたままになっている(https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11050a/)。帰還困難区域設定の理由については改めて述べるまでもないが、帰りたくても帰れない旧住民は「人間の驕りが生んだ災害だ」と言いたくもなるだろうな、と勝手に想像している。
しかし、この先何年経ったら、帰還困難区域は解除されるのだろう。長引けば長引くほど、避難先での生活が長くなり、年もいく。住みたくても住めないのだから、よく言われる「限界集落」よりも深刻な問題だ。そこで、限界集落と言われる過疎地域も含め、国土交通省が音頭を取って、消滅危機集落のレッドリストを作成・公表し、全国民の共通課題として取り上げる、というのを考えてみた。カテゴリーは、次の5段階とした。見える化されれば、為政者もその対策を優先課題として位置づけざるを得ないのではないかと思う。如何だろう。
- A消滅(既に住民がいない)
- B危険(住みたくても住めない)
- C極めて深刻(近い将来消滅する可能性がある)
- D深刻(人口減少が止まらない)
- E持続可能(この先暫く、消滅する可能性はない)
人間も生物だ。その人間に係る生命も、そして集落も、国や地域によっては危機に瀕している。今の緊迫した世界情勢を見るにつけ、人間のエゴや驕りによって我々人間自体が消滅危惧種になりませんように、と祈るばかりである。
【文責:知取気亭主人】
水仙
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