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知取気亭主人の四方山話

『少子化の深刻さ』

2026年5月13日

先々週、市役所からある封書が届いた。いつもだと国民健康保険料の金額を知らせる書類などが入っているのだが、今回はそこに、いつもの見慣れた書類とは別に一枚のパンフレットが同封されていた。「子ども家庭庁」からのものだ。パンフレットの見出しには、『公的保険制度加入者の皆様へ こども・子育て世帯を応援! 子ども・子育て支援金制度が開始します』と書かれている。「少子化対策の一環として子育て支援を手厚くしたいのだが、そのための原資を広く国民に拠出してもらう」、そんな新たな制度の周知パンフレットだ。

新聞等でそうした制度が始まることは知っていたので、「おおこれか!」と手に取ってみた。そこで目についたのが、同じ紙面に書かれているのに、主人公である“子ども”を二つの異なる表現で記していることだ。上記の文章で気が付いた方もいると思うが、意図して「こども」と「子ども」を使い分けている。応援メッセージでは「こども」を使い、制度名には「子ども」を使っている。「こども」の方が新生児など乳児まで含まれるような感覚が無きにしも非ずだが、どうも正確な意図は分からない。関係職員の優しさなのかもしれない。ただ、老い先短い身としては、どちらでもいいことではあるのだが…。

支援金制度の概要は、すでにご存じの事と思う。「全世帯や企業の皆様から支援金を拠出いただき、それによる子育て世帯に対する給付の拡充を通じて、こどもや子育て世帯を社会全体で支援する仕組みです(原文のまま)」とパンフレットには説明されていて、令和8年4月分から拠出することになっている。説明文の通り独身者や高齢者も含む全世代で支える(拠出する)仕組みで、パンフレットでは、加入する医療保険制度や所得に応じて異なるものの、全ての医療保険制度の加入者で平均すると、令和10年度で月450円になると試算されている(令和8年度は250円)。

この金額で本当に子ども・子育て支援に繋がるのであれば、喜んで出す。でも、少子高齢化が叫ばれてもう随分経つのに、これまで打ってきた手では一向に少子化にブレーキが掛かっていない。そうした現状を考えると、今回の支援に対しても大きな疑問を抱いてしまう。ブレーキを掛けられなかった理由は簡単で、我々国民も含めて、少子化に対する危機感が薄かったからではないかと思う。一直線で出生数が下がり続けているこんな状況になってしまった今でも、それは変わらないのかもしれない。その影響はじわじわとではあるが随分前から出始めていて、地域や職種によっては人手不足が叫ばれて久しい。しかし、出生率が上がって人手不足が解消できた、という話は残念ながら殆ど聞こえて来ない。

繰り返しになるが、国民全体として、このまま少子化が進むとこんな厳しい未来が待っている、そんな危機感が薄いのだと思う。かく言う小生もそうだ。ところが、暫く前にある本に出会い、「成る程、確かに少子化が進むとそんな弊害が顕在化し、想像だにしなかった未来がやって来るかもしれないな!」と気付かされた。その本とは、楡周平著『限界国家』(双葉文庫 2025)だ。

本の概要はこうだ。シンクタンクである東洋総合研究所の初代社長で、現在会長職にある前島栄作が、世界最大級のコンサルティング会社、通称LAC(ラック)にある調査を依頼する。少子化問題をこのまま放置すれば、二十年後、三十年後の日本の国はどうなるのか調べてほしい、というものだ。LACのスタッフたちは、自社の職員で官僚OBだった人たちなどにインタビューを行い、これまで気付かなかった少子化問題の深刻さと奥深さを学び、問題意識を持ち始めていく。物語が進む過程で指摘している諸問題は、「へ〜、確かにそうかもしれない!」と感心することばかりだ。

指摘している諸問題とは移民問題、医療問題、メディア問題等々で、そのいずれもが、「確かにそうだな」と納得させられる。しかし、レポートにまとめられないまま、調査だけが進んでいく。そして、ユニコーンを目指すベンチャーの若手経営者も登場して前島と面談するのだが、その面談によって前島に思わぬ化学変化が生じる。成程ね、とこれもストンと腑に落ちる展開だ。いずれにしても、少子化問題の深刻さを多方面からアプローチした、面白い本だ。

本のタイトルになっている「限界国家」という皮肉たっぷりの揶揄も、確かにそうだなと納得の内容だ。国会議員の先生にも是非読んでもらいたい一冊である。


【文責:知取気亭主人】

限界国家
「限界国家」
  • 【著者】 楡 周平 著
  • 【出版社】 双葉社
  • 【発行年月】 2025/8/6
  • 【ISBN】 9784575528619
  • 【頁】 352ページ
  • 【定価】 880円(税込)

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